障害年金の不支給率、過去最多に日本年金機構が正式に発表、 厚労省が点検と見直しを公表
大人の発達障害(ASD・ADHD)でも障害年金の対象になります。「初診日」の判断や「社会的治癒」がなぜ認められにくいか、障害厚生年金の条件とともにわかりやすく解説します。
大人の発達障害(ASD・ADHD)とは?
発達障害は、生まれつき脳の機能に特徴があり、「できないこと」「苦手なこと」がある障害です。大人になってから生きづらさを感じ、初めて診断される方も多くいます。
ASD(自閉スペクトラム症)の主な特徴
- 人とのコミュニケーションが苦手
- 場の空気が読めない
- 強いこだわりや感覚過敏がある 等
ADHD(注意欠如・多動症)の主な特徴
- 忘れ物やミスが多い
- 落ち着きがなく、衝動的な言動が目立つ
- スケジュール管理が苦手 等
これらの特性が原因で、仕事や日常生活に大きな支障が出ている場合、障害年金の対象になります。
発達障害でも障害年金の請求が可能か?
はい、可能です。発達障害は「精神の障害」として障害年金の対象になります。特に、症状が強くて日常生活や就労に困難がある方は、障害厚生年金や障害基礎年金の請求が検討できます。
障害年金請求で大切な「初診日」とは?
障害年金を請求するとき、まず重要になるのが「初診日」です。これは、「障害の原因となった症状で初めて医師にかかった日」のことを指します。確定診断を受けた日でありません。
例えば、社会人になってから生きづらさを感じてメンタルクリニックを初めて受診した日が、「発達障害」としての初診日になることがあります。社会人になってから生きづらさを感じてメンタルクリニックを初めて受診した日が、「発達障害」としての「初診日」になります。この日が厚生年金加入中であれば、「障害厚生年金」の対象になります。
うつ病などの「発達障害の二次障害」が先に出た場合の初診日は?
発達障害の特性が原因で、先にうつ病や不安障害などを発症し、その症状で初めて病院を受診した場合、原則としてその二次障害の「初診日」が、発達障害(ASD・ADHD)の「初診日」になります。
その後、発達障害と診断された場合でも、「初診日」は発達障害の特性が強く出た時点のものではなく、「最初に病院にかかった日」とされるケースが多いのです。
「社会的治癒」とは?発達障害では認められにくい理由
「社会的治癒」とは、医学用語ではなく障害年金制度の特有の考え方になります。いったん病気の症状がなくなり、長期間ふつうの生活を送れていた場合に、病気が治ったとみなされるという考え方です。そしてその後、再び症状が出て治療を受けたときには、再発日を「初診日」として認められることがあります。
ただし、発達障害のような生まれつきの障害(生来性)の場合、明確な「治癒」という状態がありません。そのため、「社会的治癒」は基本的に認められにくく、最初に受診した日が「初診日」とされることが多いのです。
この点から、「障害厚生年金請求」ではなく、「障害基礎年金請求」「20歳前障害基礎年金請求」になることがありますので、特に注意が必要です。
障害等級の認定基準と発達障害
発達障害で障害年金を受け取るためには、障害の重さが「等級」に該当する必要があります。
- 1級:常に人の助けがないと生活できないほど重度。
- 2級:日常生活に大きな支障がある。一人で外出できない、人とのやりとりが難しいなど。
- 3級(厚生年金のみ):働く上で大きな支障がある。同僚との意思疎通が難しい、特別な配慮が必要 など
発達障害単体で該当するケースもありますが、「うつ病」等を併発しているばあいは、その他のメンタル疾患も審査の際に考慮されます。
発達障害で障害年金を請求する際のポイント
- 初診日の確認をしっかりと行うこと
- 日常生活でどれだけ困っているかを具体的に伝えること
- 診断書や病歴・就労状況等申立書の記載内容が非常に重要
- 専門家に相談する
発達障害での障害年金申請には、初診日の考え方・症状の伝え方・日常生活の状況・就労状況の説明など、大変難しい判断が求められます。
まとめ
大人の発達障害であっても、日常生活や仕事に支障がある場合には、障害年金の対象となる可能性があります。その際に特に重要になるのが「初診日がいつで、どの医療機関であったか」という点です。これは、どの年金制度が適用されるかを左右する重大なポイントだからです。
また、「社会的治癒」という考え方が使われることもありますが、発達障害のように生まれつきの特性である傷病については、社会的治癒が認められることは極めて困難であるとされています。そのため、最初に病院を受診した日が、そのまま初診日と判断されるケースが一般的です。
さらに、障害厚生年金を受け取れるかどうかは、初診日に厚生年金に加入していたかどうかが大きな鍵になります。このように、発達障害で障害年金を請求する場合は、制度上の判断が非常に複雑であるため、不安がある方は、障害年金に詳しい専門家に相談することをおすすめします。



