第5回 全国一斉障害年金法律相談会(日弁連及び各弁護士会 主催)
【問】
令和4年(2022年)4月から、年金の繰下げ受給の上限が75歳に延びます。そこで、退職者から、年金の繰下げ受給について確認したいと相談を受けました。どのような手続きが必要になるのでしょうか。
【答】
老齢基礎年金および厚年法の本則に基づく老齢厚生年金は65歳から支給が始まりますが、その時点で請求せずに、繰り下げて申出できます(厚年法44条の3、国年法28条)。令和4年(2022年)4月からは支給開始年齢は66歳~75歳(現在は70歳)の範囲で選択できます。
1カ月につき年金の支給額が0.7%増額され、75歳に達する月まで10年間請求しなければ、0.7%に10年間の月数である120を乗じて84%増額されます。基礎年金と厚生年金の支給開始時期を別々に選べるので、比較的利便性もあります。
《将来に繰り下げ受給するための65歳時の手続き》
65歳に達する直前に「年金請求書」というハガキが受給権者に届きます(特別支給の老齢厚生年金受給者の場合)。
以下が具体的な繰り下げ選択の意思表示となります。
◎老齢基礎年金のみ繰下げし将来に増額して受給したい場合
⇒「老齢基礎年金のみ繰下げ希望」の項目を〇で囲み「年金請求書」(ハガキ)を返送して提出します。
◎老齢厚生年金のみ繰下げし将来に増額して受給したい場合
⇒「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」の項目を〇で囲み「年金請求書」(ハガキ)を返送して提出します。
◎老齢厚生年金と老齢基礎年金の両方を将来に増額して受給したい場合
⇒ハガキを返送しなければ繰下げを選択したことになります。
※繰下げ受給の注意点
●在職老齢年金で支給停止となっている「老齢厚生年金の額」は増額されません。「老齢基礎年金」に在職老齢年金の支給停止はありませんので増額されます。
●「配偶者加給年金」の権利がある人は「配偶者加給年金」に対して繰り下げの増額はありません。別な言い方をすると繰り下げしている期間は「配偶者加給年金」を捨てていることになります。