広いリビングには何畳必要? 新築前に知っておきたい間取りの不思議
新築注文住宅で間取りを考える時、土地が狭い等して日当たりが充分に確保出来ない場合、二階リビング間取りという解決策があります。
なぜ二階リビングの間取りか?
一般的には新築注文住宅で間取りを検討する際、一階部分にリビング、玄関、水回りといった生活の基本部分を配置した間取りが合理的です。
でも、そうした方法では隣家の影になるなどして、一階部分に充分な日照や眺望の確保に支障があるならば、必ずしもその間取り形態に捉われず何らかの策を講じなければならないでしょう。
なにせ、完成したせっかくの新築マイホームが、昼間でも薄暗く、眺望も効かない閉塞感のリビングでは後悔が残ってしまいます。
そうした場合に、一階部分の環境がリビング空間に相応しくないならば、これを上方向の二階に配置すれば有利に働く可能性がありますね
これが狭い土地で二階リビングの間取りを採用する最大のメリットです。
また、新築用の土地探しの場面でも
「この土地物件の条件は理想なんだけど面積が狭くて‥」
と購入を躊躇してしまう様な場面でも、二階リビングの間取りが解決策になるならば、探索土地の検討対象の間口が広がる可能性があります。
それなら二階リビングの間取りで全て解決!
と行きたいところですが、必ずしもそうとは言い切れません。
その理由は二階リビング間取りの暮らし方の特性に有ります。
多くの方は新築検討までの住まい形態は、二階リビング間取りでの暮らしは未経験なのではないでしょうか?
それに対し生活の起点が一階から二階へと移り変わる二階リビングでの暮らしは、階段の昇降具合に代表される様に生活の勝手に独特な部分も持ち合わせています。
そうした生活のリズムの違いに対する察知が不十分なままに間取りをつくり、新築してしまえば、後々使いづらさや思い違いから後悔を残す要因にもなるかもしれません。
二階リビング間取りの暮らしにメリットデメリット双方の面があるのであれば、家づくりに臨む前に、予めその特性を把握出来れば冷静な選択が導けるのではないでしょうか。
また、それらメリットデメリットを十分に考慮した上で間取りづくりに取り組めれば注文住宅で新築するアイディアの幅が大きく広がるかもしれません。
新築後「しまった!」と後悔しない様に、はたまた「二階リビングにして良かった!」と満足を得るにはどうすれば良いのか?
まずは二階リビングのメリットデメリットを知る事から始めてはいかがでしょうか。
・二階リビングはこんな間取り
新築注文住宅での家づくりはアイデア次第で間取りの可能性は多いに広がるとは言うものの、建築する土地の条件を超える事は叶いません。
例えば土地が狭かったり、隣家が間近に大きく迫っている様な環境では、何らかの対策を施さなければせっかくの新築マイホームでの暮らしが快適とは言えない環境に陥る可能性もあるでしょう。
そうした場合の有効な対策の一つが二階リビングの間取りという事は冒頭に述べた通りですが、
「二階リビング」という名称から、通常一階にあるリビング空間が二階に配置された間取りという事は察しがつくと思いますが、二階リビングの概念を共有する為に一案二階リビングの間取り例をご覧いただきましょう。
上の間取り図は土地面積、建物面積それぞれ約28坪、23.5坪の二階リビングの間取り例です。
一般的にみられる一階部分にリビングや水回りといったパブリックスペース、二階部分に主寝室や子供部屋といったプライベートゾーンを配置した間取りと比較し、玄関と階段を除けば上下階逆転した間取り構成となっている事が読み取れると思います。
まずはこの間取り図上で1日の生活シーンを想像してみてください。
・朝起床〜寝室から階段を昇る〜二階のリビングへ向う
・帰宅〜玄関から階段へ向かう〜階段を昇る〜洗面所の水回りへ向かう
一般的な一階にリビング、水回りを配置した新築間取りと比べて動き方の勝手が大分違ってくるはずです。
勿論、ひとくちに二階リビングの間取りと言っても、その構成は必ずしもこのパターンだけでは無く、特に水回りの配置に関しては一階、二階配置パターンに分かれ、これも二階リビング間取りの評価を分ける要因にもなるのですが、これについては後の項で取り上げたいと思います。
いずれにしましても、ある種の従来のイメージからすると、従来の生活リズムとは異なる面を持つ二階リビングの間取りでもありますので、後々の後悔を避ける為にはこうした二階リビング特有の動線を考え、そのメリットデメリットを知っておく必要があるでしょう。
・二階リビング間取りのメリットデメリットとは?
それでは暮らしの中心を二階リビングとする間取りのメリットデメリットには、一体どのようなものが挙げられるのでしょうか?
メリットデメリット双方をそれぞれ整理してみましょう。
<二階リビング間取りのメリット>
まずは二階リビングのメリットから考えてみます。
次のような事項が効果として挙げられるでしょう。
①良好な採光環境
間取りを二階リビングにする事で最も期待したい効果が、良好な採光環境と言えるでしょう。
恐らく二階リビングの間取り案を考える方の多くが日当たり条件を求めたここに主眼を置く事と思われ、これのメリットについては改めて申し上げるまでもないはずです。
②良好な眺望
二階リビングの良好な採光の効果は言うまでもなく窓を通じ外部からもたらされるものですが、室内からも窓を通じ外部に向けられる効果があります。
眺望ですね。
この優位性も二階リビングのメリットとして挙げられます。
地上付近の一階レベルよりも目線の位置が上がる事で、周囲の建物の影響をかわし易くなり、この優位性も二階リビングのメリットとして挙げられます。
また、このメリットを活かせる場面は、必ずしも土地が狭いケースに限定されません。
山や夜景といった素敵なビュースポットが期待できる場合、これを求めて積極的に生活空間を二階に上げてしまうというアイデアも間取りの選択肢を広げてくれるかもしれません。
こうした手法も二階リビングのメリットの一つとして加えられるでしょう。
③プライバシーが保ちやすい
内部、外部の目線が上方に移る事でもうひとつ効果が生まれます。
プライバシーの確保です。
一般的な一階リビングの間取りは、全面道路の往来や宅内への来訪者の動きに伴い視線の交錯が起き易く、立地環境によってはプライバシーが十分に保持できないストレスを感じてしまう事も起こりがちです。
その点主たる居住空間が地上から見て上方にある二階リビングであれば、これの緩和に充分応えてくれる可能性があります。
<二階リビング間取りのデメリット>
次は二階リビングのデメリットについて主に考えられる三つを挙げてみます。
①階段の昇降頻度が増える
二階リビングの間取りとする事で階段の昇降頻度が頻繁になり、それが暮らしにくさになりはしないか?という懸念は、恐らく多くの方が真っ先に思い浮かぶデメリット要素ではないでしょうか。
確かに外出、帰宅時の屋内動線をリビングを起点に考えれば、必ず階段の昇降を経なければならないのは事実です。
新築後の日々の暮らしは勿論、老後の事まで見通すと、煩わしさや生活に支障を及ぼしはしないかという不安はここに起因するはずです。
しかしながら、一口に「階段」といってもその設置方法は一律では無い事にお気付きでしょうか?
一階から二階までの段数、直線か回り階段か、階段幅、といった様に間取りの中の納まり方にはいくつかのパターンが有ります
当然それぞれ使い勝手も全て同じではありません。
ということは、階段の設置方法次第では一概に「デメリット」として断じてしまうばかりでは無く、その程度に差異が有るとも言えるでしょう。
これについては後ほど具体的に触れたいと思います。
②物の搬入が面倒
決して日常的とは言えないまでも、大きな家財の移動や搬出入の機会は時折起きるものです。
「家具の購入」「冷蔵庫の買い替え」「古くなった家財の処分」
そうした時、特に大ぶりな家財であるソファ、ダイニングセット、リビングボード、冷蔵庫といったものが集まるLDKは、一階リビングであれば直接庭に面した窓から搬出入ということも考えられますが、二階リビングではそうはいきません。
こんな時に問題になるのがこれまた階段です。
これも先ほどと同じく階段の設置状況により作業難度の程度が変わってきます。
③リビングから庭に出れない
新築一戸建ての暮らしならではの楽しみ方として、お庭の存在があるのではないでしょうか。
ウッドデッキでのオープンエアのブランチや草花やハーブを育ててのガーデニングはリビングからの眺めも彩ります。
こうした時にリビングとお庭との位置関係は一体感を演出したいものです。
この点で物理的距離を詰められない二階リビングとお庭の位置関係はデメリットという見方になるでしょう。
勿論、これへの解決策としてはバルコニーの設置という代案も考えられます。
但し、庭の代用となる空間を求めようとすれば相応の面積が必要となるでしょう。
その場合、間取り構成上一・二階のバランスの関係からバルコニー用のスペースが確保可能かが問題となる事に加えて、設置コストも課題として挙げられます。
特に土地の広さへの制約から二階リビングを検討する場合には充分な空間確保が間取り企画の過程で困難であったり、充分な防水工事が必須であるバルコニー工事は面積あたりのコストも決して安くはありません。
・後悔しない二階リビングの間取りのコツ
さて、二階リビング間取りのメリットデメリットは整理できましたが、まだこれの可否について結論を出すのは尚早です。
メリットとデメリットが対峙したままの状態で判断を下そうとしてもひたすら悩ましいばかりですが、メリットを活かしながらも、デメリット要素が少しでも解消できる案が準備できるならば冷静な判断も導けますし、後々の後悔回避にもつながるのではないでしょうか。
具体策としては以下の二点がポイントになるでしょう。
- 暮らしの動線の工夫
- 階段の機能性
それぞれ整理いたします。
<暮らしの動線の工夫>
メリットデメリットの整理で動線への懸念材料が挙げられました。
一般的な一階リビングと比較し、二階にリビングを設けることで階段の往来頻度の増加がネガティブ要素になりはしないかという懸念でしたね。
しかしながら冷静に考えてみると、仮に一般的な一階部分にLDK始め玄関及び水回り、二階部分に主寝室や子供室といった個室を配置した間取りであったとしても、階段の往来は相応な頻度で行われ、生活のリズム次第では必ずしも間取りが二階リビングだからといって案外大差無い方もいるのではないでしょうか。
それならば更に階段の往来頻度を増加させない様プランニングに注意を払えば、この懸念を最小限に抑える事も可能かもしれません。
ここで注意すべき間取りパターンがあるのです。
それはリビングと風呂、洗面所といった水回りの設置階を分けた間取りパターンです。
二階リビングに限らず家づくり全般を通して、間取りの使い勝手を評価する場合の着目点としてLDKと水回りの位置関係がよく取り上げられます。
両空間相互の移動がスムーズである間取りが望ましいという考え方です。
その観点で、二階に設置したLDKと同一階では無く、一階部分に水回りを設置したらどうなるでしょう?
・洗濯機の始動
・洗濯物干し
・洗面
・手洗い
・入浴
これら動作毎に階段の昇降が伴うのです。
この課題を懸念する方にとって水回りの配置場所は真っ先に考慮すべき間取りのテーマといえるでしょう。
<階段の機能性>
先にも触れた通り、階段の設置方法は単一では有りません。
まず昇降の容易性からすると、段数は少ない方が有利です。
しかしながら段数を減らす為に一段あたりの高さ(蹴上げ)が高くなりすぎても解決にはなりません。
注意点としては、昨今天井高のゆとりをうたい文句にしている新築住宅も目につきますが、過度にこれを追求しすぎるとその両者が物理的に不利になるという点です。
目安としては一階部分の天井高(厳密に言えば2階床面までの階高)を一般的高さである2m40㎝程度に抑えておいた方が有利に働くでしょう。
また、プランニング上、直線で昇りきる形状よりも曲がり部分を伴った方が間取り構成が容易な事からこうした階段がよく見られますが、曲がり部分のつくりにも注意を払いたいものです。
例えば曲がり部分で180度折り返す様なつくりの階段であれば、その部分を何段に割付するかの検討です。
最大限に分割した6段周りの階段も一般住宅ではよく見られますが、階段中央部付近よりも内側を歩行すると直線部分の奥行き(踏面)よりも階段板歩行面が狭くなってしまい、傾斜も急な印象を受けるかもしれません。
かといって段数を抑えれば、緩やかさが増しますが、その分階段部分に割く面積も増加することになりますので、土地面積の制約から二階リビングの間取りを検討する場面では痛し痒しの選択です。
この場合現物の周り階段の見学、チェックが有効です。
特に日常の昇降は勿論ですが、先に挙げたデメリットにも懸念される「物の搬入」の場面では、この曲がり部分が大きく影響してくるものです。
どの程度が許容範囲か予め体感した上での間取り検討が間違いないと言えるでしょう。
・二階リビング間取りのまとめ
今回は二階リビングの間取りについてスポットを当て、そのメリットとデメリットの整理と後悔しないプランニングのポイントを考察してまいりました。
マイホーム計画を新築注文住宅で進める場合、プランニングは自由かつ様々なアイデアを盛り込める可能性は夢を膨らませてくれると共に、敷地の制約への対応力も期待できます。
反面、オリジナリティー豊かなプランニングになればなるほど、その間取りが完成した後の暮らし方は、時に皆さんのイメージを超えてしまう事もあるでしょう。
特に多くの方が経験値を充分に持ち合わせていないであろう二階リビング間取りの新築企画はこうした事が起こりやすいともいえます。
感覚的なものに流されず、冷静に特徴のメリットデメリットを見極める事が後悔せずに素敵な間取り案をつくりあげる第一歩ではないでしょうか。
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