「到達度テスト」はセンター試験と共存すべき(3)
9月20日付の朝日新聞朝刊に、“入試改革「到達度テスト」導入で一致”という見出しで、大学入試改革をめぐる政府の教育再生実行会議が、全国統一の新しい形の試験「到達度テスト(仮称)」を導入することで、ほぼ一致したという記事が載りました。
この「到達度テスト」は“「高校生として身につけるべき基礎的な知識、理解力」を測る内容にする”ということです。
背景には、大学入試において、学力試験を課さないAO入試や推薦入試が広がっており、事実上、相当に学力レベルが低くても一定レベルの大学に合格できてしまう場合が少なからずあるという現状があります。
そこで、AO入試や推薦入試に、「到達度テスト」を活用して、受験生の学力レベルを担保できるのではないか、という考え方が出てきました。
ところで、AO入試や推薦入試は学校成績の評定平均については、参考程度にとどめ、点数化しないのがここ数年の傾向です。これは、レベルの高い高校での評定とレベルの低い高校での評定を同じ基準で測ることは意味が無い(例えば、偏差値60のA高校で英語の評定が3の生徒Pと、偏差値40のB高校で英語の評定が5の生徒Qでは、どちらが学力的に優秀なのか、評定だけでは判断しようがないのに、入試においては、生徒Qの方が評定平均の得点が高くなり、有利になるという不公平が生まれる)ということでしょう。
AO入試や推薦入試において、学力の担保が必要なのであれば、各大学ですでに行っている筆記試験による入試を受験させればいいわけで、ただちに「到達度テスト」が必要になるわけではありません。そもそも、AO入試や推薦入試は、「学力試験だけでは測れないような生徒の可能性や素質、能力を見極めて、多様な生徒を入学させたい」という目的で導入されたわけです。ただ、大学の講義についていけるだけの学力は最低限必須なのは当然です。ですから、学力試験を課さないAO入試や推薦入試において合格した生徒が、大学の講義についていけなくてドロップアウトしてしまう率が高い現状は、勉強しない高校生に問題があるのではなくて、そのような高校生を合格させてしまう大学に大きな責任があり、試験官がしっかり見極めをしないといけなかったと考えられます。
したがって、「到達度テスト」がAO入試や推薦入試において学力の担保につながるという考え方は、あまりに楽観的であり、あくまでも後付けの理由に過ぎないと思います。
~その(2)につづく~