在りし日の小次郎
子どもがおられない夫婦の場合、配偶者Aが亡くなった時には、当該配偶者の父母または兄弟が相続人となる。
父母は亡くなっていることが多いので、配偶者Aの兄弟姉妹と、残された配偶者Bとの間で遺産の争いとなってしまう。
亡くなる配偶者Aからすれば、多くの場合残された配偶者Bに財産を残したい、自分の兄弟姉妹と相続の争いなどされたくないと思っていることが多い。
特に、配偶者Aとその兄弟姉妹が、配偶者Aの父母の相続を巡って争ったような場合にはなおさらである。
このような場合には、遺言書を作成されることをお勧めしている。
民法1042条で、兄弟姉妹には遺留分(簡単にいうと、遺言によっても侵害されない相続分)がないとされているからである。
自筆証書遺言だと、自署であるかとか、争いになることもあるため、公正証書遺言の作成をAB共に作ることを勧めている。
これは、多くの弁護士が相談を受ければそのように助言するであろう。
もちろん、公正証書遺言も無効となることもないではないが、極めて稀である。
そうした方がいいと思っている間に、配偶者が亡くなられて、遺産相続で困られたという事例はいくつもある。
遺留分がある相続人がいる場合には、遺言だけでは解決しないことになることが多いが、家庭裁判所の許可を受けて、遺留分の放棄をしてもらった事例もある。たまに、個人で遺留分は放棄するというだけの書類を書いてもらっていることがあるが、残念ながら家裁の許可がないと効力は生じないのである。
中々、冒頭の事例と異なり、遺留分がある場合には、遺言だけで終わらないのが相続事件である。