在りし日の小次郎
新潮社。カーソン・マッカラーズ。
村上春樹の翻訳である。
村上春樹にとって、とっておきの一冊ということで、楽しみに読んだ。
アメリカ南部の町。時代は1930年代。戦争の影が忍び寄っている。
町には様々な人が住んでいる。
黒人差別に対する怒り、富裕層に対する怒り、どこにも行くことのできない少女の思いなどが交錯する。
皆、唖(敢えて村上春樹はそう訳している)のシンガーさんに何かを話ししたがり、少女はシンガーさんに憧れている。
そのシンガーさんもまた、あるものを求めている。
物語は進むが、そこには何が残っているだろうか。
登場人物の内面をここまで描いた作品が、当時23歳の筆者によって書かれたというのが驚きである。
少しずつ味わいながら読んだので、時間がかかった一冊であった。