出張帰りの悲しい物語

中隆志

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 先日某県で仕事があった。夕方からの仕事であり、19時40分の特急に乗らないとその日のうちに帰れないという強行軍であった。
 先方には、19時10分には終了してもらいたいと申入をして快諾してもらっていたのだが、質問が相次ぎ、仕事が終わったのは19時23分であった。
 仕事の現場から特急が出る最寄り駅までは行きは20分程度かかっていたので、「もうこれは泊まりやな。コンビニで下着を買うか。」と思っていたところ、共同受任している弁護士(この人はどうしてもその日のうちに帰らないといけなかった)が、「ダメ元で向かおう」というので、駅に向かった。
 駅に着いたのは19時33分。
 あと7分である。

 日常生活で、サッカーの時のようなダッシュをしたのはいつぶりであろう。私より10歳以上年上の共同受任していた弁護士が普段から走っている人でよかった。そうでなければ置いていっているところである。
 改札がどこか迷う共同受任弁護士に「こっちです」と声をかけ、特急のホームがどこか迷っている同弁護士に「●番ホームです」と声をかけて、特急のホームに着いたのは19時36分であった。予め帰りの特急券を買っていなければ間に合わなかったであろう。
 しかし、ホームには弁当も売っておらず、あるのはうどんの自販機である。
 うどんの自販機でうどんを買うか悩んだのだが、仮にうどんができあがるまで5分を要すると私のうどんは自販機の中に置いていかれるし、また、うどんに固執すると乗り遅れる危険がある。
 断腸の思いでうどんを断念し、特急に乗り込んだのであった。

 その特急には車内販売はなく、京都までの乗換駅までは約3時間。
 何かあった時のためにナッツバーを鞄に入れてあったのでそれをかじる。
 帰り道で飲もうと思い、ウイスキーをスキットルで入れていたのでそれを飲みつつ3時間特急に揺られた。
 そこからは新幹線であるが、京都までの乗換駅では売店は全て営業を終了していた。
 
 京都までの間に新幹線では車内販売は来ず(京都直前で来た)、探しに行く気力もなく京都駅に着いた。
 23時30分少し前、京都駅構内のセブンイレブンはまだ開いており、そこで売れ残りのおにぎりを2個買うことができた。
 悲しい夕食である。
 自宅に着いたのは日付が変わった頃であった。

 自宅にこじお先生がいなければ、やさぐれていたであろう。
 こういう時もあるのが弁護士である。

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