信長の考える武士

中隆志

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 信長は部下が働けばそれに見合う報償を出したが、部下には厳しい武将であった。
 自らが睡眠時間を削って天下統一にまい進していたので、怠惰な部下は許すことができなかったのであろう。
 精魂込めて働く部下にはいい武将であったろうが、多少ゆったり働きたい武将にとってはつらい主君であったといえる。
 精魂込めて働く武将の典型は秀吉であろう。失うものも何もなかった秀吉は命をかけて働きに働いた。
 信長の考えを先読みし、しかも信長の顔を立てて先に先に気を回して仕事をしていく秀吉は、信長にとっては武士の鑑であったようである。
 中国で大戦果を上げて報告に来た秀吉の頭を撫でて、武士とは筑前守(秀吉)のようであるべしという趣旨のことを一同に話をした逸話がある。

 信長は、怠惰な部下には苛烈で、城を守る女中が信長の不在の時にお参りに出かけたところ、突如信長が戻ってきて女中がいないことに激高し、全員を死罪にした逸話がある。
 また、これは罪はないとされるが、佐久間信盛という歴代の武将についても、同様に働きが悪いということで放逐している。

 信長が小姓を呼び、小姓が入ってきても何も言わず、確か3人目の小姓が床に落ちていたゴミをそっと拾い上げて退出した時に、「武士とはかくあるべきである」と言ったという逸話もある。この小姓は森蘭丸とされている。

 報償は多大にくれるが、常に命がけで気を回さないといけない主君信長のような主君がよいかどうかは、また考えものであろう。

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