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原書房。エミリー・ボイト。
量産される高級観賞魚・アロワナの闇という副題である。
アロワナは絶滅危惧種に指定されているのだが、養殖技術が発達し、養殖のアロワナは市場に流通している。アロワナは人気があり、高額で取引されるというのである。
特に、スーパーレッドという赤色のアロワナが人気で、時に養殖業者が襲撃されて、死者も出ているという。筆者は丹念に養殖業者を取材するが、闇が深いビジネスのため、みな「本当のことは絶対にいわない」という。
筆者は、こうしたアロワナの現状を知り、野生のアロワナを見たいと渇望し、危険地帯で野生のアロワナを探すのであるが、野生のアロワナは乱獲され、ほとんどその姿を見ることができない。
筆者はアロワナを見つけることができるのか。野生のアロワナは、いったいどういうものか。
ただの魚といえば魚のアロワナが高額で取引され、熱に浮かされるような人々を見ていると、確か唐の時代に牡丹が流行し、とてつもない価格で取引されていたという歴史を想い出す。
司馬遼太郎は、物に淫してはならないとして、刀剣やその他の類いを決して購入しないと決めていたが、物ではないが、動物や花に執着するこうした人間性に対して司馬は厳しい目を持っていたと改めて痛感する。
私自身も物欲がない訳ではないので、こうした熱に浮かされた人々の物語を読むにつけ、反省しきりでもあった。
好著である。