在りし日の小次郎
7月30日のことになるのだが、私が事務局長を務めるリース被害京都弁護団が代理人を務めていた事件で、京都地裁で完全勝訴判決が言い渡された。
私は主任ではなかったが、弁護団としての完全勝利で、大変気分がよい。
事案は、「ホームページを作成すれば顧客が増えて必ず儲かって、作成代金などすぐに回収出来る」という勧誘を受けた京都市内の美容院経営の女性がホームページの作成を依頼したところ、セディナという会社との間でCDROMの立替払い契約が締結された形になっていたというものであり、ホームページの開設後、解約を申し入れたがこれに応じなかったため、女性が既に支払った立替払い代金の返還と、未払い金の債務が存在しないことを求めて提訴していたというものである(説明の便宜のため、少し簡略にしてあります)。
京都地方裁判所第2民事部の橋詰均裁判官は、「女性はホームページの作成を依頼する意思しかなく、CDの立替払契約を申し込む意思はなかった」として、契約が錯誤によるものとして、立替払い契約自体が無効という判断をし、既払い金全額の返還を認めて、未払い金の支払義務が存在しないことも認めた。
これは、被害者保護にとって、極めて大きい判断であり、判決である。
立替払い契約は、顧客と販売店、クレジット会社の三社間契約である。顧客と販売店との間で、商品の売買がされる合意がついた後、その代金の支払をクレジット会社に立替払いするよう申し込むのが立替払い契約である。この立替払い契約が成立すると、商品代金は、クレジット会社から販売店に送金されることとなる。
販売店としては、直接顧客と契約を締結して、分割払いにするよりも、メリットがある。それは、①顧客が不払いになるリスクを回避出来る②一括でクレジット会社から支払ってもらえるため、現金が手元に直ぐに入る、という点である。
クレジット会社としては、自らは営業社員は持たずとも、販売店と加盟店契約を結ぶことで、販売店が顧客を探してきてくれて、かつ、クレジットの手数料が入るというメリットがある。リスクとしては、顧客の不払いがあった時の危険はクレジット会社が負わなければならないという点である。
また、このような契約形態は、販売店が悪質・詐欺商法で契約を締結させたとしても、売買契約の無効・取消し原因があっても、原則として立替払い契約の効力に影響はないという判断がされることが多かったがために、クレジット会社側はこれにより多額の利益を得、利用件数は飛躍的に伸び、あまたの消費者被害を巻き起こすことになった。
一方、顧客側からすると、自分が一括でお金が用意出来ない場合に商品を購入できるというメリットはあるものの、売買契約の際に詐欺勧誘をされていたりしても、原則として立替払い契約の効力には影響がないとされる判断がなされる蓋然性が高いため、直接販社と分割払い契約を結ぶ方が有利であり、顧客としてはそれほどのメリットはないといえる。
一般の消費者がこうした契約を締結した場合、売買契約の無効や取り消し原因がある場合には、その効果を立替払契約に主張出来るとする、抗弁の接続という規定がある。元々は対抗出来ないはずであるが、特別に割賦販売法という法律の規定により創設されたとみる立場が有力である。
法改正によって、今は既払いの立替払い金の返還も認められるようになっている。
ところが、この規定は事業者には適用されない、としている。
そのため、消費者で契約が取れなくなった悪質業者が、割賦販売法の適用のない、中小企業に目をつけ、被害を拡大させているというのが昨今の情勢である。
リース契約についても、同様の状況である(リースの場合は、消費者であれば、消費者契約法や、特定商取引法での契約の取消しやクーリングオフが出来るが、事業者の場合、消費者契約法の適用はないし、特定商取引法でも、営業のための契約と認定されれば、クーリングオフは主張出来ない)。
今回の判決は、直接的に立替払契約を錯誤により無効にしたということで、画期的判断なのである。
これがリース契約であっても、錯誤に陥っていることは多々あるので、この判断枠組みは使える。
この判決の考え方が、こうした詐欺的契約を考えるについての、ベーシックなものとなることを期待したい。
なお、リース・クレジットに関する相談は、リース被害京都弁護団が現在もお聞きしていますので、まずは、当事務所にお電話下さい。相談料は初回無料です。
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