尋問

中隆志

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何年弁護士をやっても尋問は疲れる。
 どれだけ準備をしていても現場で考えなければいけないこともある。反対尋問などは特にそうだが、依頼者や証人も打ち合わせをしていても現場で緊張して中々答えられないこともあるので、そのような場合には現場で答えられるように尋問を瞬時に組み直さないといけない。
 その意味で、あまり尋問事項を固定的にして作成しつくしてしまうと現場での思考が停止する。
 司法試験の論文で、答えを事前に確定してしまっている人が、典型例からちょっとひねられると思考停止するというのと同じといえる。
 司法修習時代に、研修所で尋問をするときは、こう答えたらこっちというように、もの凄い枝分かれしたチャートのようなものを作って尋問すると東京の弁護士が講義をしていたことを覚えているが、今となってはあの弁護士は尋問は下手だっただろうと思う。
 相手方となって、企業法務をたくさんやっている事務所の弁護士は法廷経験が少ないためか尋問がうまいと感じた人は今まで1人もいない。やはり場数というものが必要なのだろう。

 相手の尋問中も、放っておくと誘導尋問をされてしまう可能性があるため、メモをとりつつ異議を述べる機会を探しつつ、とったメモを反対尋問で聞くところを赤のボールペンで書き込んだりしている。あまりにひどい誘導尋問は裁判官が止めてくれることもあるが、やはり相手方代理人が異議を述べるべきである。
 最近は陳述書方式が流行っているので何でも誘導する弁護士がいるが、争点に関わる部分はやはり一問一答式で聞くべきである。これは裁判所の認識もそうであろうかと思われる。

 若い頃は尋問ではベテランの裁判官からも叱られたこともあって、それらも糧となっているが、叱られないにこしたことはない。
 
 そのためには、やはり頭をクリアーにしておく必要がある。
 だいたい今は尋問の前日は酒を出来るだけ飲まないようにしている。酒を飲むと眠りは深くなるようで実は浅くなるので眠りが足りないと頭がクリアーにならない。
 尋問の前にはあまり予定をいれず、頭が疲れないようにしている。
 (それだけ気をつけているのにたいした尋問をしていないではないかとつっこまれるかもしれないが、まあ準備をしないとよけいひどくなるということで…。)

 後は昼からの尋問では食べ過ぎも要注意である。眠くなる。
 特に相手の尋問がだらだらしていると眠くなる。

 尋問は疲れるので、夏ばてなどしていられないし、冬場は風邪を引いているどころではない。
 体力はやはり重要である。

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