読書日記「百年の孤独」
弁護士をやっていると、紛争のただ中に入っていくため、様々な形で業務妨害をされることもある。まあ妨害されても弁護士は屈しない職業の最たるものであるし、妨害なんかしたら余計に弁護士は燃えるので逆効果となることが多いが、慣れないうちは嫌なものであろう。
京都の地元のやくざ崩れのヤミ金が事務所まで私が不在の間に押しかけてきたこともあるし、精神疾患を抱えた相手方が事務所の待合いいすでじとっと座って中々帰らなかったこともある。
破産事件で、債権者の1人から毎日電話がかかってきて、1ヶ月毎日30分~1時間くらい電話でおつきあいしたこともある(私は気が短いと一般には思われているが、仕事上は割合話を聞く方なのである)。相手方でも話を聞いて説明することである程度納得してくれることもある。中には怒鳴って電話を切る弁護士もいるようであるが、私は可能な限り聞いて説明するようにはしている。あくまで「可能な限り」ではあるが。
DV事件の相手方で危険な男であるというので、ナイフの刃を通さないという防刃チョッキを通信販売で買ったこともあるが、あまりにチョッキが分厚くて、それを着て上にスーツを着るとまるでアメフト選手のような弁護士になってしまうので、あまりにも不自然であり、買ったはいいが一度も着なかったという例もある。
刃物を持ち出したら警察を呼べばいいやと会ってみると別段危険性のある男でもなかったりする(その代わり気持ち悪い男ではあったが)。これは今では笑い話である。
いつまでもチャーミングさを失わないある女性の先生が、「家庭裁判所には、そういった夫に備えて、さすまたが置いてあるのよ~。」といっていた。誰がさすまたを使うのか、はたまた普段裁判所で練習とかしているのか、太った男だとさすまたでは止められないのではないかなどと白熱した議論になったのである。
私は相当ヤミ金事件をやっているのになぜか言われたことがないが、ヤミ金から「殺しちゃうよ~」といわれた弁護士も多々いる。「えらいことになる」とは何回かいわれたが、「えらいこと」の内容を具体的に言葉で教えてくれとせがんだが説明はしてくれなかった。
こうしたややこしい相手方などに対決するためには元気が必要である。健康でないとやっていられないのである。昨年は体調を壊しながらややこしい人たちとも相手をしていたので、余計に治りが悪かったように思う。
もちろんどれだけ一所懸命やっても依頼者から罵られることもある。
こうしたつらいつらい経験を経て弁護士は一人前になるのである。そのうち妨害行為をされても「ああまたか」とあまり苦にならなくなる。いい気はしないが、経験とは恐ろしいものである。