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コラム

事業者の破産申立代理人

2010年10月15日

コラムカテゴリ:法律関連


事業を営んでいたり、個人でも負債が多かったり資産があると、破産の経緯や資産隠しがないか、あるいは資産をお金に換えて債権者に分配する破産管財人が弁護士から選ばれる。そのためにこうした破産事件では最低でも裁判所に納める予納金が22万円ほど必要だし、書類なども通常のサラリーマンが生活費が足りなくて破産しましたという比較的簡単な破産よりは多くなる。

 こうした事業者の破産の申立をするときに申立代理人として配慮すべきことが多々あるのだが、一部の弁護士は「あとは管財人の仕事」とばかりに高額な費用だけを取って何もしていないこともある。たとえば賃貸物件があると明渡をしなければならないのだが、申立代理人がお金をたくさん取っておいて、「お金がないので家主と管財人が交渉してください」なんて審尋の場でいわれると、「お前ちょっと待たんかい、コラ」となる(心の声で実際にはいいませんが)。これは裁判所も同じで、こういう申立代理人には裁判所もダメだししている。しかし、えてしてこうした申立代理人は、申し立てたことで自分の仕事は終わった、着手金もそこそこ入ったしやれやれと思っていたりする。それは職人としての弁護士としての気概がまったくない姿であるといってもよかろう。

 裁判所は、申立代理人が「だめだ」と思えば、あとは有能な管財人をつけて申立代理人のだめなところをカバーして貰おうとするので、こうしたダメ申立代理人は自分がだめなことも気づかない。悪循環に陥るのである。

 そのほかにも、だめな申立代理人の例をあげてみると、

1、破産者が売掛金債権を有している場合に、売掛先に連絡をしていない。連絡をしていないため、借入のある銀行の口座に売掛金が送金されて、銀行が相殺してしまい、管財人は余計な手間をかけてしまうことになる。こういう場合には、申立代理人の預り金口座を明示して、送金するならここにして下さい、と通知しておくべきである。
 また、通知することで、売掛先から金額が違うとか、既に支払ったとか、手直しがあるとかという連絡(というより文句)が入るので、間違いのある債権は破産の申立書から消せるし、訂正も出来る。また、売掛先がどんなことに不満をもっているかを裁判所に説明も出来るし管財人に引き継ぐこともできる。
 破産で高額な費用をとっているにもかかわらず、こうした「前さばき」を一切してくれていない事務所がけっこうあったりする。

2、事業者で、工事を請け負っていて途中で放り出して破産しているのに、そこに通知していない。むしろ貰えるお金があるからということで管財人から請求してもらえばよいと思っていましたといったりするのだが、管財人が就く頃にはだいたい時間が空いているので、連絡もつかなくなっている状態に注文者はかんかんになっていて、本来であれば支払ってもらえた可能性がある債権についても回収するのに無用の手間がかかる。これも「前さばき」しておくべきである。

3、その他、債権者からの苦情に対して、対応せずに「あとは管財人から説明がある」などといって一切対応していないケースもある。後日管財人に就任すると、やいやい電話がかかってきて、説明に追われるが、私は「本来はそれは申立代理人でも説明できることですよ」ということにしている。

4、腐りやすい商品があるのに、自分のところで売却してしまわずに腐らせてしまい在庫が全部だめになっているケース。臨機応変に売っていれば数百万円になっていたかもわからないのにである。

5、賃貸物件があり、手元に裁判所に予納するお金もそれなりにあるにもかかわらず、申立までかなり時間をかけて、賃料の延滞を増やしているケース。戻ってくるはずであった保証金が延滞賃料で食われているケースもある。これなどは手元にあるお金でさっさと明渡をすれば、保証金が戻ってくるのであるから、ある意味弁護過誤である。

6、事業をやっていた人であるのに、破産に至る経緯が数行で、どうしてこうなったか一切分からないケース。こうした申立代理人は、裁判所もさじを投げているので、管財人がいちから聞き取ることになる。しかし、管財人の報酬よりも申立代理人がとっている着手金が相当高額であることもある。大阪では、弁護士の費用が高すぎるということで、管財人から訴えられるケースもあるときく。

7、申立前に資産が消えていて、本人が隠匿しているにもかかわらず、申立書に一切それが書かれていないケース。破産の前の資金の動きは非常に重要である。

 それ以外にもあるが、若手の皆さんはこうした申立代理人にならないように修練しましょう。

この記事を書いたプロ

中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(中隆志法律事務所)

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