小屋裏に侵入しての調査の重要性

1. はじめに
新築・中古住宅を問わず、基礎のクラックはホームインスペクションにおいて頻繁に問題となる点の一つです。
特に、建築後比較的早期に発生する「ヘアークラック」は、その性質と消費者心理のギャップからトラブルに発展することが少なくありません。
ホームインスペクションの観点から、このヘアークラックの特性、診断のポイント、そして適切な対応策について考察します。
2. ヘアークラックの特性と問題点
ヘアークラックは、コンクリートが硬化・収縮する過程で生じる微細なひび割れであり、その多くは幅0.2mm程度までのものです。建築基準や瑕疵担保責任の観点からは、幅0.3mm未満かつ深さ4mm未満のものは構造上の問題がないとされ、瑕疵保険の対象外となるケースがほとんどです。このため、建設会社も保証の対象外とする傾向にあります。
しかしながら、施主様にとっては、たとえ構造に問題がなくても基礎にクラックがあること自体が心理的な不安要素となります。建設会社側も100%クラックのない基礎を施工することは現実的に困難であるため、この認識のギャップがトラブルの温床となることがあります。
3. ホームインスペクションにおける診断ポイント
ホームインスペクターとして、基礎のクラックに関するご相談を受けた際には、以下の点に留意して診断を行います。
3.1. 現地での詳細な状況確認
クラックが本当に収縮性のヘアークラックであるかを見極めるため、以下の項目を詳細に確認し、写真記録として残します。
クラックの幅と長さ: 専用の測定ゲージなどを用いて正確に計測します。
発生箇所と数: 基礎全体のどの部分に、どれくらいの数のクラックが発生しているかを確認します。
クラックの方向: 不定形なものか、あるいは一定方向への伸展が見られるかなどを観察します。
深さの確認: 表面だけでなく、可能であれば床下からも基礎の反対側を確認し、クラックの貫通の有無などを判断します。
3.2. ヘアークラックであることの判断基準
確認されたクラックがヘアークラックであると想定できる主な兆候は以下の通りです。
幅が非常に小さい(0.2mm以下程度)。
不規則なパターンで発生している。
特定の荷重集中部や構造的に弱くなる部分に限定されず、基礎全体に散発的に見られる。
初期段階で発生し、その後の進行が見られない。
構造的な問題を示唆するクラックは、特定の部位(開口部周辺など)に集中したり、明確な進行が見られたり、クラック幅が明らかに大きかったりする傾向があります。
4. 適切な対応とアドバイス
診断の結果、ヘアークラックであると判断した場合、施主様へは以下の点を説明し、適切なアドバイスを行います。
構造上の安全性に関する説明: クラックが構造上問題ない範囲であること、コンクリートの性質上避けられない現象であることを丁寧に説明し、施主様の不安を解消します。
経過観察の推奨: 現時点での計測値と写真を記録し、数年単位でクラックの幅が広がっていないか、新たなクラックが増えていないかを定期的に確認するよう促します。問題のないヘアークラックは、一度発生するとそれ以上大きく進行したり増えたりすることは稀です。
見た目を改善する仕上げの提案: どうしてもクラックが気になる施主様には、上から塗装やモルタルによる化粧仕上げを施すことで、見た目の安心感を得られることを提案します。この際の費用負担については、施主様と建設会社との協議となるため、インスペクターが直接関与しない旨を明確にします。
専門家への相談推奨: 万が一、クラックが想定以上に大きい場合や、構造的な問題が疑われる兆候が見られる場合は、コンクリートの専門家や構造設計士といった専門家への詳細な調査を推奨し、必要に応じた補修を提案します。
5. トラブル回避のためのコミュニケーションの重要性
ヘアークラックが大きなトラブルに発展するケースの多くは、建設会社側の事前の説明不足や、クラックに関する問い合わせへの不誠実な対応に起因します。引き渡し前にコンクリートの特性としてヘアークラックが発生し得ることを説明し、その許容範囲を明確にしておくこと、そして、問い合わせがあった際には施主様の不安に真摯に耳を傾け、専門家として丁寧かつ誠実に説明を行うことが極めて重要です。適切な情報提供と信頼関係の構築が、無用なトラブルを回避し、円滑な解決へと導く鍵となります。
6.最後にホームインスぺクターは住宅のトラブルを大きくすることはしません、出来るだけ第3者の立場に立ち双方の意見に耳を傾けます、中には問題を大きくして裁判等を好む診断士も居るようですが、私は出来るだ平穏に解決できるように考えています。平穏な解決を望まれる場合、一度お問い合わせください。



