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認知症の方とのコミュニケーション

三上隆

三上隆

テーマ:認知症

 私はご縁がありまして、少し前まで特別養護老人ホームにて、入所者様の食事や口腔ケアなどのお手伝いをさせていただいておりました。
 短い時間帯ではありましたが、色々な方とお話しをさせていただける、とても貴重な時間でした。

 特別養護老人ホームに入所されている方々は、ほとんどの方が認知症ですが、人によって性格や考え方などが異なる様に、認知症にも個性の様なものが存在致します。
 例えば、会話でコミュニケーションをとれる方とそうでない方がおられたり、発せられる言葉も人によって違いがあったりもします。
 時には、せっかく言葉で思いを伝えようとして下さっているのに、こちらが上手く汲み取れない様な時もあります。
 
 頭ではそれを理解しているつもりでしたが、実際に入所者の方々にお会いしてみると、どの様にお手伝いをさせていただいたらいいのか、最初は戸惑いを覚えました。
 
 食事や歯磨きといった行為は、人の生活にとって基本的な行為ですし、ほとんどの方は、これまでずっとご自身だけで行ってきたことと思います。
 それをお手伝いをしてもらったこと対して、お礼や感謝の気持ちを表示して下さる方もおられますが、全ての方がいつも介助を望んでおられるとは限りません。
 
 食事の好き嫌いはもちろん、食欲のある日とない日があるでしょうし、歯磨きや義歯(入れ歯)の取り外しなども、日によってご本人のタイミングやお気持ちがあることでしょう。
 施設における団体生活では、「~の時間」というものが設定されているのは、ある意味仕方のないことですが、それがご自身のお気持ちなどと異なる様なことがあるのも、ごく自然なことだと思います。 

コミュニケーションをとることで

 私は、「お手伝いをしよう」とはあまり考えず、自分なりにお一人お一人とコミュニケーションをとって、そのご意思に出来るだけ叶う様、努めてみました。
 
 コミュニケーションをとる為の方法は、“全ての方にこちらからお声掛けをさせてもらい、そのお話しを聞かせていただく”という、シンプルなものでしたが、「出来るだけ時間を気にせず」ということも、心掛けてみました。
 
 そうして、ご一緒する期間が経つにつれますと、少しずつですが、それぞれの方の性格や好みなどが解るようになり、他愛のない会話が出来る方も増えてきて、言葉を文字にするとそのままでは解らない、または言葉に依らないような会話であっても、その時々で内容や表情、頷きなどに違いを感じることが、少しずつ増えてきた様に思いました。

 認知症の影響などで意思表示をすることが難しく、そのご意思が分かりづらい方もおられましたが、続けて話し掛けているうちに、向こうもご自身の想いを何とか伝えようとされてる様に、感じられることもありました。

 そんなコミュニケーションを少しずつ重ねていくうちに、私だけにご自身のお話をして下さったり、私を見つけて微笑んで下さったり、他愛のないことでこちらが笑わせていただいたりと、当初には無かった変化もあって、少しでも「受け入れて下さったのかもしれない」と感じることがありました。

 介護には、理屈では済まない様な難しい現実もあると思いますが、それだからこそ「信頼関係や安心感の様なものがなければ、成り立たないのでは」と思います。
 そして、その信頼関係は「コミュニケーションをとることでしか築いていくことが出来ない」と強く感じました。

振り返ってみて

 終活に関するご相談をお伺いし、後見人などを業務とさせていただいている中で、「何かの学びの機会になれば」と考えていた折、ご縁があって始めたお手伝いは、当初思っていた以上にやりがいと楽しさを感じられる時間となり、あっという間に2年を過ぎるところとなりました。

 私は、「ありがとうの言葉は、病みつきになる」という言葉に共感を覚えているのですが、続けてお会いしていても、ご挨拶するといつも「久しぶりやな、元気にしてたか」と、親しみを込めて話して下さる笑顔、普段はなかなか会話が成り立たない様な方が、「あんたは好きや」と急に仰られた時の優しいお顔など、入所者の方々との短い時間のコミュニケーションは、心からの“ありがとう”を言われた時と同じ様に、とてもあたたかい気持ちになることが出来ました。 

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三上隆
専門家

三上隆(行政書士)

相続まちの相談室/行政書士 三上隆事務所

「人との関わり」や「お話を伺うこと」を大切にしておりますので、終活のお悩みや身寄りのない方の今後のご不安、相続の話し合いの部分に至るまで、‟人”と関わる部分を最後までお手伝い致します。 

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