福祉施設への入所について考える
ご家族が亡くなって相続が発生致しますと、被相続人(亡くなった方)名義の不動産や預貯金などを解約、名義変更などの手続きをする必要がありますが、亡くなった方に「遺言書」がないことも、まだまだ多いと思われます。
その様な相続手続きにおきまして、「どの様な書類が必要か」、「いつまでに終えなければならないのか」ということは、よくいただくお問い合わせの一つです。
そこで今回は、相続で必要となる書類に関してお伝え致します。
相続で必ず必要となる書類
相続手続きをする時に、必ず必要となるのは「戸籍」と「印鑑登録証明書」です。
戸籍は、被相続人(亡くなった方)の“相続人が誰なのか”ということを確定させる為、印鑑登録証明書は相続人本人であることを証明する為に用いるのですが、これらはほとんどの相続手続きで必要となります。
①戸籍
ア、被相続人(生まれてから亡くなるまでのもの全て)
戸籍は本籍地毎に作成されており、本籍地の市町村で取得することが出来ます。
もし本籍地が不明な場合は、まず住民票の除票を「本籍地記載」で取得して確認します。
また、本籍地は住所地とは異なりますので、引っ越しをされていた場合でも、本籍地を変更する「転籍」をされていない場合は、本籍地はそのままで変わりません。
本籍地が遠方の市町村の場合、次のものを用意することで、郵送により取得することが可能です。
・所定の請求書(各市町村のホームページよりダウンロード出来ます)
・本人確認資料(免許証やマイナンバーなど)のコピー
・請求者と戸籍記載者の関係が分かる資料のコピー
(請求者が自分以外の戸籍を請求する場合に求められます)
・手数料(定額小為替又は現金書留で用意)
・返信用の封筒(切手を貼付するなど、返送料が掛からない様に)
※代理人に依頼する場合は、別途委任状が必要
亡くなった方が、婚姻や引っ越しなどの理由で何度も本籍地を変えている場合、戸籍に記載されている本籍地を順番に辿って、すべての戸籍を取得する必要があります。
また、被相続人の相続人となる方が兄弟姉妹の場合は、両親の出生からの戸籍(兄弟姉妹を確定する為)も併せて必要となります。
イ、相続人(現在の戸籍のみ)
相続人につきましては、亡くなった方との関係性を確認する為に必要となりますので、現在の戸籍だけで構いません。
②印鑑登録証明書
相続人全員について必要となり、お住まいの市町村で取得出来ます。
印鑑登録証明書の期限につきましては、金融機関に提出する場合は発行から3ヶ月(または6ヶ月)以内のものを求められますが、不動産の名義変更(相続登記)に用いる場合は期限の規定はありません。
不動産の名義変更(相続登記)の際に必要となるもの
①遺産分割協議書
亡くなった方の財産を「誰がどの様に引き継ぐことになったのか」という、相続人間の協議内容を記載した書類で、相続人全員の署名・押印(実印)が必要となります。
遺産分割協議書は、所定の様式がどこかに用意してある訳ではなく、新たに作成する必要があります。
インターネットなどに見本は出ておりますが、必要となる内容などは個別で異なりますので、注意が必要です。
なお、不動産の名義が今回亡くなった方の両親など、前の世代の方のままだった場合は、前の世代の相続手続きがまだ終わっていない、つまり「相続人の相続人が生じている」ということになります。
この場合、最初の相続人を確認する為に戸籍を更に取得して、最初の相続人から現在の相続人にどの様に引き継がれたのかを確認し、遺産分割協議書に記載またはその名義変更を先に済ませる必要があります。
②登記簿謄本(登記事項証明書)
不動産の詳細と登記されている所有者が記載されているもので、法務局で取得します。
遺産分割協議書には、こちらに基づいて詳細を正確に記載しなければなりません。
③評価証明書
不動産の固定資産税評価額が記載されたもので、市町村で取得します。
この評価額の0.4%に相当する額が、名義変更時に課税される「登録免許税」の税額となります。
こちらは毎年4月に発行され、亡くなった方の死亡日当時ではなく、相続手続き時における最新のものが必要となります。
例えば、3月に亡くなった方の相続手続きを4月以降に行う場合、3月に評価証明書を取得していても、4月発行の新しい年度のものを求められます。
④被相続人の戸籍附票または住民票の除票
登記簿に記載されている所有者が遺産分割協議書に記載されている被相続人であり、かつ不動産の所有者であることを確認する為に必要となります。
登記簿記載の住所地と戸籍附票等記載の住所地が異なる場合、同一人物であることの確認の為、過去のものに遡るなどの確認資料が必要となる場合もあります。
⑤委任状又は登記申請書
代理人に依頼する場合は委任状、ご自身で法務局に申請する場合は登記申請書が必要となります。
金融機関などの解約、名義変更の際に必要となるもの
多くの金融機関では、それぞれ所定の専用書類がありますので、その書類に相続人全員が署名・押印をすることで、被相続人の預貯金などの解約手続きをすることが可能となります。
ただし、預貯金などを複数の方で引き継いだり、特定の口座に振込依頼したりする場合は、その内容を記した「遺産分割協議書」の提出を併せて求められることがあります。
相続手続きの期限について
相続手続き自体に関しては、現在のところ明確な期限はありません。
ですが、相続税は「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」に、申告・納税をしなければなりませんので、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)を超える財産を相続をされた場合には注意が必要です。
ただ、期限がないと言いましても、不動産の相続がそのまま次の世代に移るという様なことになりますと、遺産分割協議書のところでも触れました通り、「相続人の相続人が生じている」ということになります。
この場合、相続人の数が多かったり、それぞれの方に関係性がなかったりするのが通常ですので、その方々の全員より署名・押印をもらうのは、それだけで大変な労力となりますし、関係性がない相続人の同士の場合、協議自体がどうしても損得勘定だけになりがちです。
中には、あまり面識がない相続人の方から「はんこ代」として多額の金銭を求められた、というケースもあります。
また、相続がそのままになっている家が所有者不明のまま空き家になってしまい、近隣に影響が及ぶまでに荒廃してしまっている、ということも各地で問題となっております。
この問題につきましては、法務省の法制審議会でも議論がなされており、「相続登記の義務化」、「遺産分割の期限を設定」などの中間試案(令和元年12月)が取りまとめられております。
相続手続きはいつまでにすべきか
相続手続きをしばらく放置していても、すぐに問題となることは少ないと思われますが、得になることもありません。
相続がそのままになっている理由は様々だと思いますが、特に問題のなさそうだった相続であっても、年月の経過で相続人の状況や考え方が変わってしまうことで、“協議がすすまなくなってしまった”ということも、実際に起こっております。
もしそれが、以前より被相続人と相続人の一人が居住していた家であったとしても、引き続き居住することに対して、他の相続人から賃料相当額の支払いを求められるなど、深刻な問題に発展してしまうケースもあります。
この為、“いつまでに”というよりも、“出来るだけ早目に”という考え方ですすめられた方が、将来における不要の紛争を防止するという観点からも、よいのではないかと思われます。