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コラム

認知症の方がつくった遺言

2019年12月28日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:認知症と遺言

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 遺言書 作成遺言書 書き方

 以前、「認知症になっても遺言はつくれますか」という、お問い合わせをいただいたことがあります。

 その方は70歳代の女性で、80歳代前半のご主人がおられ、最近少し物忘れが増えたような気がするものの、日常生活には全く問題がないという状況です。
 ただ、「認知症になったら、すべてが止められる」と聞いた為、実際に遺言をつくる前に、認知症と診断されてしまったらどうなるのか、と不安になられたということです。

 一般的に、認知症が進行して判断能力が低下しますと、金融機関の口座が凍結されたり、売買や賃貸借などの新たな契約が結べなくなったり致します。
 もし、認知症と診断された方が遺言をつくられたら、その遺言の効力はどうなるのでしょうか。

「認知症」かどうかではなく、「遺言能力」があるかどうか

 遺言につきましては、民法第961条で「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」、第963条で「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と規定しています。
 ただ、「その能力」がどの程度の能力なのか、法律上の明文はありません。

 遺言能力が争われた裁判では、次の様に示されております。
 「~意思表示が、どの程度の精神能力がある者によってされなければならないかは、当然のことながら、画一的に決めることはできず、意思表示の内容によって異ならざるを得ない。~初期認知症の状況の者については、一律に意思能力・遺言能力が否定されるわけではないと考えられる~(H25.4.11京都地裁)」
 「遺言能力は財産管理能力とは異なり、自己の死後に財産を誰に取得させるかという比較的単純な事項を理解できる程度の能力で足りる~(H23.12.12東京地裁)」

 認知症といいましても、その状態や程度は人によって差がありますし、同じ方でも日や時間帯によって、「内容をしっかり認識して会話をしている」と、ご家族の方が感じられる場合もあります。
 その為、一概に“認知症の方がつくった遺言は効力がない”という訳ではありません。

 一般的な理解としては、遺言がどのような効果をもたらすかということを認識し、内容をご自身で考えられるかどうか、ということではないでしょうか。

「遺言能力」の証明は困難です

 そうは言いましても、万一遺言作成当時の遺言能力の有無を巡って争いが生じた場合、それを判断することは容易ではありません。

 遺言を親族などが見られるのは、遺言者さまが亡くなってから、ということが多いかと思われますが、“遺言をつくられた当時に遺言能力があったかどうか”について、それを後から証明する一般的な方法は、公正証書を除いてありません。
 その為、当時の医療機関の診療記録や生前の本人の言動などで証明を試みることになります。

 ただ、遺言能力の有無が問われている時点で、すでに「争続」が発生している状態とも言えますので、それは決して遺言者さまが望まれた状況ではないはずです。

遺言をつくる”目的”を考えてみましょう

 多くの方にとって、遺言をつくる目的は「ご家族が相続で揉めないように」ということだと思います。
 もし、認知症と診断されてから遺言をつくられた場合は、その遺言の効力について、無用な争いを招く原因になりかねません。
 
 遺言は何度でもつくり変えられるものですし、2020年7月10日からは、法務局での自筆証書遺言の保管制度(有料)も始まります。
 
 万一、認知症と診断されても、直ちに遺言がつくれなくなる訳ではありませんが、その心配がないうちにつくっておくということは、ご家族さまが無用の争いをするという事態を避け、ご自身の想いを間違いなく遺すことにもつながります。
 

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