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生前贈与と「相続税対策」

2019年7月24日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:生前贈与

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続対策相続税相続問題

 生前贈与を検討している方より、「生前贈与は、早目にしておいた方がよいのでしょうか。」というお問い合わせをいただいく事があります。
 
 一般的に、生前贈与を検討される理由には、「相続税対策」と「相続対策」の二つがあるかと思われます。
 相続税対策における生前贈与とは、生前贈与をする事でご自身の財産を少なくして、将来の相続税の心配を軽減する事が目的となり、相続対策の場合は、先に引き継ぎ方を決めてしまう事で、ご家族が将来の相続で揉めない様にする目的があります。

 今回は、「相続税対策」としての生前贈与について考えてみたいと思います。

相続税に含まれる財産とは

 相続税とは、亡くなった方の財産を相続した方に課税される税金です。
 その為、生前贈与を行って、亡くなった時点での相続財産を少なくすれば、相続税が課税されにくくなるという事に間違いはありません。

 しかし、相続税が課税される財産には、他にもあります。
①生命保険金などのみなし相続財産
②相続時精算課税の制度を用いた贈与
③3年以内に受けた暦年課税贈与

 ①は、生命保険金や死亡退職金などにつきましては、それを相続財産に加えるというものです。
 こちらは、下記の額までは非課税になります。
 ⇒500万円×法定相続人の数

 また、保険金などの受取人が相続人の場合は、その相続人が保険契約などの効力発生と同時に取得した固有資産とみなされ、相続人同士で協議する財産には含まれない、という点は、相続税の課税財産に含める点と少し混同しやすい部分です。

 ②は、両親や祖父母などが子や孫などに対して贈与を行う場合に、2,500万円まで贈与税を控除してくれるという制度で、申告をする事で行うことが出来ます。
 こちらは、この制度で贈与をした方が亡くなった場合、それをすべて「相続時」に「精算」し、相続財産に合算して「課税」されるという特徴があります。
 
 一方で、何年前の贈与であっても相続財産に合算されるという点、一度この制度を選択すると、同じ方からの贈与はずっとこの制度が適用され、2,500万円を超えた贈与には、以後一律20%で贈与税が課税されるという点には、注意が必要です。
 
 ③は、通常の贈与における課税方式の事です。
 この贈与につきましては、3年前まで遡って相続財産に合算して課税する、という事になります。
 また、この贈与には、受けた方一人あたり年間110万円まで基礎控除額が認められていますので、この範囲内であれば、贈与税は課税されませんし、申告の必要もありません。

 更に、この贈与は、相続人以外に対して行われた贈与は含めない事になっております。
 例えば、孫に対して行われた贈与は、亡くなる前日に行われたものであっても、相続税の課税財産に含まれません。
 これは第三者の方に生前贈与した場合も同様です。

 これは、相続税法第19条第1項が、「相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前三年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産~の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし~」と定めていて、”相続”または”遺贈”により財産を取得したものについて、”相続税の課税財産”とみなしているからです。

 「孫への生前贈与は相続税対策になる」と言われる理由は、この点にあります。

相続時精算課税を用いた生前贈与

 相続時精算課税につきましては、先にお伝えした様な注意点がありますので、一般的にあまりお勧めされていない制度ですが、こちらを用いた方がよい場合もあります。

 例えば、将来の相続において相続税の課税が心配ない(相続税の基礎控除内に収まる)場合におきまして、子や孫へまとまった金銭を贈与する必要がある場合などです。

 通常の贈与とは違い、110万円以上の贈与をしても贈与税が課税されませんし、将来の相続財産に合算する事になっても、基礎控除額内に収まっていれば、相続税で課税される心配もありません。 

 相続税の基礎控除額につきましては、3000万円+(600万円×法定相続人の数)という計算式となりますので、それぞれの方によって控除額は異なります。

通常の生前贈与と相続税の関係

 贈与税が課税されない様に、年間110万円以内で贈与をする、という生前贈与につきましては、相続税対策として一般的にもよく言われるところです。
 それは、相続税よりも贈与税の方が税率が高いから、という理由によるものだと思われます。

 ただ、相続税も贈与税も最低税率は10%で同じという点に加え、通常の贈与は110万円の控除が毎年適用出来ますので、それを考慮して税率を換算をすれば、実質的な税の負担率が10%以下になるケースもあります。
 
 具体的にみていきます。
○相続税
 基礎控除額を200万円超えた財産の場合
 税率 10%
  200万円×10%=20万円
 納税額 20万円 
 
 基礎控除額を300万円超えた財産の場合
 税率 10%
  300万円×10%=30万円 
 納税額 30万円
 
○生前贈与
 贈与を200万円した場合
 基礎控除 110万円
 税率 10%
  200万円-110万円=90万円
  90万円×10%=9万円
 納税額 9万円
 ※税負担率 4.5%

 贈与を300万円した場合
 基礎控除 110万円
 税率 10%
  300万円-110万円=190万円
  190万円×10%=19万円
 納税額 19万円
 ※税負担率 約6.3%
 
 これらを比較致しますと、基礎控除額を超える財産をお持ちの場合、それを将来の相続税で支払うよりも、生前贈与で先に引き継がれた方が、トータル的に税金として納める額は少なくなる、という事になります。

 また、110万円以内の基礎控除額内という点につきましても、将来の相続税で支払われるのであれば、それを超えた贈与を行って、贈与税で支払う方が得になる、という考え方も出来ます。

 もちろん、贈与税の申告や、以前のコラムでもお伝えした「名義預金」にならない様にする為、準備や手続きが必要になりますので、それらもふまえた上での判断になるかと思われます。

生前贈与の時期について

 贈与がお互いの意思表示を必要とする行為である事を考えますと、どちらかの意思表示が出来なくなった場合は行う事が出来ませんし、一定額を毎年贈与するという方法の場合には、ある程度の年数を続ける事になります。

 また、相続開始より3年以内の贈与は相続税の課税対象財産になる、という点も含めて考えますと、将来相続税の課税が心配される方は、早目の検討をされた方がよい、という事になるかと思います。


 次回は、「相続対策」としての生前贈与を考えてみたいと思います。
 よろしくお願い致します。
 
 

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