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塾ジイのBAR11 ―「模試を、志望校合格への宝物に」―

久保克己

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テーマ:模擬試験活用法

【模試を受ける前に、親ができること】

カラン……。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは」
「おや、お父さん。今日はどうしましたかな?」
「10月に模試があるだろ?」
「ありますな」
「息子も受けるんだけど、親として何かしてやれることはあるのかなと思ってさ」
「ほう。ええところに気がつきましたな」
「勉強するのは本人だから、あまり口出しするのもどうかなと思って」
「その通りじゃ。じゃが、親にできることはありますぞ」
「ほんと?」
「昨日の話、覚えておりますかな?」
「昨日?」
「模試を受けたら、問題用紙、答案、解答解説、成績表を一つにまとめておく、という話じゃ」
「ああ、それならできそうだ」
「まずは、それを続けてくだされ」
「それだけでいいの?」
「いやいや。そこから、もう一つあるんじゃ」
「何?」
「模試が返ってきたら、成績表を見て、偏差値を確認する」
「うん」
「そしてな、その模試を、偏差値の低かった順に並べておくんじゃ」
「低かった順に?」
「そうじゃ」
「一番低かった模試を一番上にして、その次、その次……とな」
「なるほど」
「これをやっておくと、入試が近づいたときに役に立つんじゃ」
「どう役に立つの?」
「入試直前になったら、まず一番偏差値の低かった模試を取り出す」
「それを復習する?」
「そうじゃ」
「でも、直前期って、新しい問題をどんどんやったほうがいいんじゃないの?」
「そう思いがちじゃな」
「違うの?」
「新しいものに手を広げる前に、今まで自分が間違えたものを見直す。これは、かなり効率がええんじゃ」
「確かに。一度間違えた問題なら、自分の弱点が分かってるもんな」
「その通りじゃ」
「模試には、実際に自分ができなかった問題が入っておる」
「しかも、成績表まである」
「つまり、自分専用の復習教材になるわけじゃ」
「なるほどなあ」
「だから、10月の模試を受けるときから、その先のことまで考えておくんじゃ」
「受けっぱなしにしないってことだな」
「そういうことじゃ」

【親が準備して、子どもに任せる】

「じゃあ、親は模試のファイルを作って、順番を整理しておく」
「それも立派な支援ですぞ」
「でも、本人に『この模試をやり直せ』とか言うのは……」
「そこは、少し考えたほうがええですな」
「やっぱり?」
「受験生は、親から言われると、それだけでプレッシャーになることもある」
「分かるよ」
「そこで大事なのが……」
「何?」
「サイレントサポートじゃ」

【サイレントサポートという支援】

「サイレントサポート?」
「子どもが勉強している時間には、家族もテレビを消して静かに過ごす」
「前に聞いたことがあるな」
「そうじゃ。わしが以前から大切にしている考え方じゃ」
「親が直接勉強をさせるんじゃなくて、勉強しやすい環境をつくる」
「その通りじゃ」
「それなら俺にもできそうだ」
「それでええんじゃ」

【「批判」より「励まし」】

「たださ……」
「なんですかな?」
「模試の成績が悪かったら、やっぱり言いたくなるよ」
「何を?」
「『もっと頑張らないと』とか……」
「お父さん」
「うん?」
「『批判』より『励まし』ですぞ」
「……」
「本人は本人なりに頑張っておるかもしれん」
「そうだな」
「それなのに、『もっと頑張れ』『こんな点数じゃダメだ』と言われたら……」
「しんどいよな」
「じゃろう?」
「じゃあ、何て言えばいい?」
「例えば……」
「『ここから、どこを伸ばそうか』」
「なるほど」
「あるいは、『次はここを一つできるようにしよう』でもええ」
「責めるんじゃなくて、次を見るわけだ」
「そうじゃ」
「親としては心配だから、つい先のことまで考えちゃうんだよ」
「それも分かりますぞ」
「でも、子どもに必要なのは、親の焦りじゃない」
「……」
「安心して次の一歩を踏み出せる環境なんじゃ」
「なるほどな」

【模試を「志望校合格への宝物」に変える】

「10月の模試は、一回の成績で一喜一憂するためのものではない」
「その後の勉強につなげるためのもの」
「そうじゃ」
「そして、そのための準備を親がしておく」
「うむ」
「でも、勉強そのものは本人に任せる」
「それがサイレントサポートじゃ」
「なんだか、親にも役割があるんだな」
「もちろんじゃ」
「じゃあ、10月の模試が返ってきたら、まずファイルに入れて……」
「偏差値の低かった順に並べる」
「そして、入試直前になったら……」
「低かったものから、ひとつずつつぶしていく」
「よし。これは俺がやるよ」
「それなら、息子さんも助かるじゃろう」
「でも、本人にはあんまり言わない」
「それがええ」
「静かに準備して、静かに支える」
「そうじゃ」
「そして、必要なときには……」
「励ます」
「分かったよ」
「それで十分じゃ」
「今日はなんだか、親としてやることが見えてきたよ」
「それはよかった」
「じゃあ、一杯……」
「お父さん」
「ん?」
「飲むのはええが、息子さんが勉強している横で大声でテレビを見るのは……」
「サイレントサポートじゃないな(笑)」
「その通りじゃ(笑)」
カラン……。
塾ジイはグラスを磨きながら、ぽつり。
「模試は、受けたら終わりじゃない。受けた後に残したものが、入試直前の力になるんじゃよ」*最近の記事
↓塾ジイのボイスコラムー模擬試験 泣いた分だけ 春近しー
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久保克己(塾講師)

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