「塾ジイのBAR」3 ー挑戦への土壌づくり(前編)ー
クレーム対応は、怒っている人を黙らせる仕事ではない。
長年、塾の仕事をしてきた塾ジイは、いつの頃からか、そう思うようになりました。
「どうして、うちの子だけこんな扱いなんですか!」
「先生は、ちゃんと子どもを見てくれているんですか?」
「こんなことでは、受験が心配です!」
お客様相談の仕事をしていると、保護者から厳しい言葉をいただくことがあります。
もちろん、こちらに落ち度がある場合もあります。
そのときは、まず素直に謝らなければなりません。
しかし、長年、こうした声を聞いていると、あることに気づきます。
怒っている親の言葉の奥には、「怒り」だけがあるわけではない。
そこには、
「このままで、うちの子は大丈夫なのだろうか」
「ちゃんと成長してくれるのだろうか」
「受験に失敗したらどうしよう」
という、不安が隠れていることが少なくないのです。
子どものことになると、親は冷静ではいられません。
自分のことなら我慢できる。
少しくらい嫌なことがあっても、「まあ、仕方ないか」で済ませられる。
ところが、我が子のこととなると話は違う。
たった一言の先生の言葉。
模試の成績。
塾でのちょっとした出来事。
そんなものがきっかけになって、不安が一気に膨らんでしまう。
そして、その不安が「怒り」という形になって現れる。
塾ジイは、そんな親御さんをたくさん見てきました。
もちろん、だからといって、何を言ってもいいわけではありません。
理不尽な要求には、毅然と対応する必要があります。
でも、
「困った親だ」と決めつける前に、「この人は何をそんなに心配しているんだろう
」と考えてみる。
それだけで、見えてくるものが変わることがあります。
クレーム対応という仕事をしていると、相手の「言葉」だけを聞いてはいけない
と感じます。
言葉の奥にある「気持ち」を聞かなければならない。
そして、それは塾の先生と保護者の関係だけではありません。
人と人との関係なら、どこにでも当てはまるのではないでしょうか。
怒っている人。
不満を言っている人。
文句を言っている人。
その人は、本当に「怒りたい」のでしょうか。
もしかすると、その奥には、
「分かってほしい」
という気持ちがあるのかもしれません。
子どもを思う親の気持ちは、ときに面倒な形で表れます。
でも、その根っこにあるのは、
「この子に幸せになってほしい」
という、いたって単純な願いなのかもしれません。
塾ジイは、今日もそんなことを、ぼんやり考えています。
さて、次回は、
「『勉強しなさい!』で、本当に子どもは勉強するのか?」
について、塾ジイが少しだけつぶやいてみようと思います。


