忘却を防ぐには
先日、弊社に通っている小学5年生の生徒のお母様から、こんな質問を受けました。
「子どもは、お宅の教室が大好きで、教室長も先生も大好きだと言います。
塾には喜んで出かけていきますし、授業が終わった後は、『とてもよく分かった』
と言って、帰ってきます。
ここまでは嬉しい話です。
「でも、『とてもよく分かった』という割には、なかなか学校や塾のテストの成績が
上がりません。
子どもに、教室での様子を聞くと、『先生に説明してもらって、分かったと思っても、
次に塾に行くと、前回、解けた問題が出来なくなっている。先生の説明を聞いている
時は、分かっていたし、問題も解けていたのに・・・』と言います。
実は、このようなことは塾だけに限らず、学校でも時々あります。『良くわかった』
と言いながら、テストの点数は今ひとつです。」
つい『あんた、本当は『分かっていないんとちゃう?』と疑いたくなります。
もし、本当に授業で、分かったのに、これだけ覚えていないというのは、ウチの子の
記憶力が異常に悪いということでしょうか?
結論から申し上げますと、『記憶力が異常に悪い』というご心配は
まず不要と思います。
授業では理解できるのに、なかなか記憶に残らない。テストになると全然出来ない。
という話は、小学生に限らず、中学生、高校生にも多い悩みで、年中ご相談を頂きます。
このような書き方をすると誤解されるかもしれませんが
まず「人間は忘れる動物である」と考えておいた方が良いと思います。
心理学者のヘルマン・エビングハウスが唱えた「エビングハウスの忘却曲線」という
理論が有名ですが、普通、人間は何もしないと、下記のように忘却してしまいます。
20分後には、42%を忘却し、58%を覚えていた。
1時間後には、56%を忘却し、44%を覚えていた。
1日後には、74%を忘却し、26%を覚えていた。
1週間後には、77%を忘却し、23%を覚えていた。
1ヶ月後には、79%を忘却し、21%を覚えていた。
この忘却は大人も全く同じようです。
私の職場の人が(元先生です)こんな事を言っていました。
「色々なセミナーや研修に参加して、その場で『わかったつもり』になるんだけど、
1週間すればすっかり忘れてしまうんだな!
自分が教壇に立っていた時は、復習が大事って生徒に指導していたのに情けないなあ」
また別の同僚も、こんな話をしていました。
「自分が読んだ本のことを忘れてしまい、同じ本を3冊買ってしまった。
読んでいる途中で『あれっ?どこかでこのフレーズ読んだな』と気づき、本棚の奥を探す
と、同じ本が2冊並んでいることがあって、さすがに落ち込んだよ」
いかがでしょうか?
忘却が決して、特定の子どもにだけ発生するものではないという事をご理解頂けた思います。
では、どうすれば忘却を少しでも食い止める事が出来るでしょうか。
次回のコラムで具体的にお話したいと思います。