「鉄」は熱いうちに打て
今後は、学力確認テストでも読解力や記述力が要求されると言われています。
特に、数学においては設問の本文が長く、要領よく要点を抑えていく力が必要となります。
ここで文章の要点を捉えていく、要約というものについて少し考えてみたいと思います。
わかり易いように、中学受験の場合を対象として考えていますが、本質の部分は中学生でも高校生でも同じです。
文章の要約ができるのは、小学5年生ごろからです。
小学4年生までは、錯綜する論旨を論理的に考える力がまだ十分に育っていないので、要約の練習をするには無理があります。
といっても、小学5・6年生ごろの要約は、文章が削れずかなり長くなってしまうのが普通で、ナカナカ体をなしません。
中学生になると、次第に楽に要約できるようになります。
しかし、中学受験のシーンではこの中学生レベルの要約を要求されることが間々あります。
以下は、そのような方が要約する場合の方法です。
まず、とり組む文章を①=すばやく最後まで読みながら、②=線を引いていきます。
①で大事なことは、じっくり読むのではなく、最後まで読むということです。
文章は、全体像がわかって初めて細部がわかります。
細部をきちんと読んで全体がわかるのではありません。
これが文章を読みなれていない人の陥りがちな点です。
よく気をつける必要があります。
特に、入試問題のような種類の文章では、最後の数行を読んで初めて全体がわかるという仕組みになっているものがかなりあります。
逆に最初の数行はだれが読んでもちんぷんかんぷんのようなことが書いてある場合もあります。
読みなれていない人は、この最初の数行でつまずいてしまうことが多いのです。
②の線を引く箇所は、「大事そうなところ」「わかったところ」「おもしろいところ」です。
しかし、ここで大事なことは、「大事そうなところ」を中心に線を引くのではなく、むしろ「わかったところ」「おもしろいところ」を中心に線を引くということです。
というのは、最初に読んでいるときは、何が大事なのかよくわからないからです。
文章の内容とはあまり関係がないかもしれないが、自分なりによく「わかったところ」、または、自分なりに「おもしろいと感じたところ」を中心に線を引いていきます。
次に、線を引いたところだけを数回読み直します。
線を引いたところというのは、文章全体の数パーセントですから、ざっと眺める感じですぐに数回読み直しできます。
すると、不思議なことに、文章の全体像が頭に入ってくるのです。
線を引いたのは、「わかったところ」「おもしろいところ」が中心です。
しかし、その線を引いた箇所だけをとびとびに読んでいると、線を引いていない箇所も含めて全体のイメージがつかめてくるのです。
そして、今度は本当に「大事なところ」に改めて線を引き直します。
ここで、要約の字数が問題になってきます。
1文を約50字と計算すると、150字の要約では3文、200字の要約では4文です。
だから、150字に要約する問題でしたら、線を引きなおす「大事なところ」は3ヶ所ぐらいです。
最後に、その「大事なところ」をつなげて文章にします。
要約の問題は、実力がついてくると、すばやく書いてもじっくり書いても、点数にあまり差が出ません。
要約を書くのに時間をかけるのはもったいないので、すばやく要約して、肝心の記述・読解問題にじっくり時間をかけることが肝要です。
…という訓練を続けていると、どんな文章にあたっても素早くその趣旨を把握することができるようになっていきます。
論旨が把握できれば、あとはその質問に正対するのみです。
要約の力をつけることで設問への入り口を軽くクリアし、問題解決そのものに費やす時間をなるべく沢山手に入れましょう。