Vol.35 プログラミングの民主化の、さらにその先へ ーーAIの急激な進化に見る私たちの感情と動き

~Scratchで広がるワクワクの設計図~
ScratchやUnityなどを使ってプログラミングを教えるとき、私はいつも「最初の楽しさ」を大切にしています。
それは今では、スターティングPCスクールが運営するプログラミング教室のノウハウとして、私たちの指導の中で確立された考え方です。
ここでは、子どもたちが「楽しい!」と感じて、自分から学び始めるための3つのステップ=「3つの階段」を改めてシェアできればと思います。
1. 動くという衝撃的な出会い
プログラミングで最初にモノが動いた瞬間。
それだけで、子どもたちは本来強い刺激を受け、純粋に「楽しい!」と感じることができるものです。
しかし大事なのは、その最初の楽しさを、先生や大人が「奪わないこと」にあります。
たとえば…
- 事務的な説明や堅い表情で接すること
- 単調な声のトーンで話しかけること
- 当たり前を押し付けるような玄人然とした話し方
こうした態度や雰囲気は、子どもたちが受けるはずの、せっかくの「ワクワク体験」を、まるで最初からなかったかのようにしてしまいます。
「本来の学びの面白さ」を知らせないことと同じようなものです。
「動く」は、常識がひっくり返る瞬間である
「動く」とは、これまで「動かなかったもの」が動くことです。
それはつまり、自分の中の常識が覆される瞬間と言えます。
その感動を、どう演出できるのか。
それこそが、以降の「パソコン」や「プログラミング」といったキーワードへの興味・関心などの意識を大きく左右します。
「10歩動かす」の魅力
「10歩動かす」ブロックは、とても基本的で重要なブロックです。
けれども、しばしばこのブロックは適当に紹介されたり、軽く扱われたりすることが少なくありません。
スプライトにこのブロックをつけて、クリックしてみると、
キャラクターがほんの少し動きます。
その「一瞬」、生徒の目が見開くのを確認できればそれでOK!
この瞬間こそが、「もしかして、自分の思い通りに世界を動かせるかもしれない?」という子どもたちのワクワクの始まりとなります。
この際、「こんなのすぐわかるよね」とか「もっと面白いブロックあるよ」なんて扱いをしてはいけませんし、そういった思考は先生の雰囲気や言動に如実に現れて伝わってきます・・・・「こんなブロックは(=プログラムは)面白くない」と。
ですから、そうした接し方を先生がしてしまうと、せっかくの楽しさを大人の視点で「奪ってしまっている」ことになるのです。
2. 回る、もしくは、ずっと動く
一瞬の動きに目を輝かせたあとは、「動き続ける」という体験へと進みます。
これは、「お!?」から「ぉおお!?」へのステップです(*^^*)
スタパでは、こうした「驚きの広がり方」をいくつかのパターンに分けて考えています。
「階段式」
「エレベーター式」
「ミサイル発射台式」
など・・・
今回はその中でも、「階段式」に注目します。
つまり、徐々に驚きが増していく構成です。
カギは「リズム感」と「スピード」
ここで重要なのは、刺激のタイミングです。
前の驚きが冷めないうちに、次の驚きを差し込む。
さらにその次も・・・という具合に、リズムよくステップアップさせていくべきです。
この連続性が「(いい意味で)頭で考える間もなく」目の前の世界広がっていくことを感じられる状態を作りあげていきます。
そのリズムやスピードは、もちろん生徒によって違います。
だからこそ、先生は生徒の表情・言葉・様子をよく観察しながら、その場で企画を調整していく必要があるのです。
スキルじゃない、まっすぐな「対話」
こうした教え方は、小手先のスキルのことを言っているのではありません。
大切なのは、生徒をまっすぐに見る先生の在り方。
「ちゃんと対話したい」と、しかも生徒と対話できることを「先生自体が喜べているのか」ということです。
その誠実な姿勢が、先生の行動や言葉に自然とあらわれて、生徒にもちゃんと伝わっていくのです。
3. 自分で操作できるという能力に出会う
さて、いよいよ子どもたちは、一方的に動くものを見るだけではなく、「自分が動かした」と感じられる瞬間がやってきます。
ボタンを押したらどうなる?
思い通りに動かせたらどうなる?
この第3段階目で、やっと「自分の意思で世界を動かせる」という、新しい感覚が芽生えます。
「ずっと繰りかえす」というワクワクの拡張
2段階目の「ずっと動く」においても、Scratchでは「ずっとくりかえす」ブロックで簡単に実現できるのが魅力的です。
その使い方は既存のブロックを挟むだけという・・・とてつもなく簡単な操作です。
「〇〇キーが押されたとき」世界が自分の思う通りになり始める
2段階目のあと、子どもたちのワクワク感が広がったことを確認しながら、最後の3段階目のブロックを投入します。
それが、今回の「〇〇キーが押されたとき」です。
ここではついに、ただブロックをくっつけるだけでなく、「キー入力」などの「人間の操作と関与」をこれまでになくわかりやすい形で可能にしてきます。
必要なポイントはここでも「シンプルさにこだわる」こと
私のプログラミングスクールでは、初期段階において軽々しく、「もし〇〇なら」といった条件ブロックは使いません。
ここでもイベントブロックに属する「〇〇キーが押されたら」といった、できるだけシンプルなイベントブロックにこだわっています。
なぜなら、
条件分岐のブロックはさらなる後の「驚き」のために、あえて内緒にしておきたいからです。
世界が「自分のもの」になる瞬間
自分の操作でキャラクターが動くと、子どもたちは一気に夢を広げます。
「あんなゲームや、こんなゲームも、自分で作れるかもしれない!」
うまくいけば期待感が、ここで最大になるのを見ることができるでしょう。
いっしょに楽しい計画を話し始めることが出来ますし、その時の表情は、最初に話し始めた頃とは比べ物にならないぐらいの信頼に満ちたものになっています。
だからこそ、そのワクワクを邪魔するようなこと・・・
「知識」や「効率」や「プライド」、あるいは「悪い態度や雰囲気」など。
そういった < 子供じみた > ものは、大人が持ち込むべきではないのです。
最後に
この3つの階段、ぜひ周りのプログラミングをやりたい子どもたちに試してみませんか(^^)
きっと、子どもや大人という年齢の差なんて関係のない、たのしい雰囲気とワクワク感で、次なる学びにつながっていくことでしょう。



