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Vol.13 制限が生み出す自由 〜「54字の文学賞」と創造性の不思議な関係〜

土居郁男

土居郁男

テーマ:学びの本質

文章に囲まれた幸せ
今自分が運営している学習塾では、少し特別な時間が流れています。

「先生、これでいいですか?」
「あと3文字足りない!」

そんな声が飛び交うなか、生徒たちと自分は一緒に頭を悩ませています。
私たちが取り組んでいるのは、PHP研究所が主催する「未来屋54字の文学賞」への挑戦です。

やる気(モチベーション)の不思議

作文指導をしていると、多くの生徒が「何を書いていいかわからない」「どれくらい書けばいいの?」と途方に暮れることがあります。何もない空間に「なんでも書いていいよ?」な、そんな白紙の自由は、時に大きな重荷になって、かえって自由を妨げます。

しかし不思議なことに「54字ぴったり」という厳格な文字数制限を設けると、生徒たちの目が輝き始めまたりします。
「たった54字?それなら書けるかも」という安心感。
そして「ぴったり54字に収めるパズル」という遊び心。
逆に「54文字しか書けない」というゲーム性。
制限があることで、逆に心が解放されるのです。

元々は、よくある中学受験を目標に350~400文字の作文が書けるようになろう!ということでした。
ただ、いきなり400文字の文章を書くのは大変で、目が回ります。
もちろん、やる気もなくなります。

そこで、段階を踏んで「200文字だけで表現してみよう!」から始めて、次に「100文字でいけるんじゃない?」に課題が進行。
このあたりで、作った作文はオリジナルの表紙を一緒にCanvaを利用して作成し、自分だけのオリジナル小説を仕上げています。

そして次なる課題が、このたった「54文字の作文」なのです。
54字の物語

自由が制限されると現れる自由

今回の文学賞には「未来」や「記念日」というテーマはありますが、その枠内であれば「何を、どんな風に、どんな書き方で書いても良い」という点も、生徒たちの創造性を刺激したようでした(^^)
SF的な未来でも、個人的な思い出でも、ユーモアたっぷりの物語でも構わないのですから、自分もこういったものを作成してみました。
54字の物語
それぞれの生徒が自分の思い思いの物語を、何とかして表現しようとする中で、「言葉」への感覚が研ぎ澄まされていくのを感じています。

生徒と共に学ぶ喜び

自分のやっている学習塾では、「先生も生徒と一緒に学ぶ」こともまた、とても大事なことと位置付けていて、それを生徒に隠すようなことはいたしません。

自身も生徒たちと一緒に54字の物語を考えます。
「先生のはどんな話?」と聞かれると、少し照れくさくなることもありますが、そこはそれ。自分の照れよりも生徒のためになれば嬉しいのです(*^^*)
自分の作品を見せることで「先生も挑戦している」というメッセージを伝えたいということです。

時に生徒の作品に感動し、時に自分の表現力の足りなさに「ちゃんと」悔しさを覚える。そんな共同作業の中で、私たち大人も「ちゃんと」成長していくことを見せる必要があります。

「書く」が「楽しい」に変わる瞬間

作文を嫌がっていた生徒が、いつの間にか何作品も書いている。
制限時間が終わっても「もう少し考えたい!」と言ってくれる。
そんな光景を見るたびに、教育の本質とは「やらされる」から「やりたい」への橋渡しなのだと実感します。

54字という限られた空間だからこそ、言葉選びの大切さ、一文字一文字の重みを感じて、短い文章だからこそ、誰もが挑戦できる。
そして何より、たのしくて完成した時の達成感が大きい!!

小さな物語が紡ぐ大きな可能性

最後に、こういった取り組みは決して「ゴール」ではありません。
この取り組みを通じて生徒たちが得るのは、言葉への感性、表現する喜び、そして「制限の中から生まれる本当に自由と創造力」です。

気が付けば、生徒たちは遊びながら学びの楽しさをおぼえていく。
学ぶこと、勉強すること自体に実はちゃんと楽しさがある。
そんな素朴な「当たり前」を取り戻すために、54字の物語のような色んなツールをこれからも使っていきたいと思います。
それは小さくても、確かな自信となって彼らの未来を支えてくれるでしょうから。

あなたも挑戦してみませんか?(^^)
たった54字で描く物語の世界。
意外なほど広く、深く、そして楽しいものですよ。

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土居郁男
専門家

土居郁男(プログラミング講師)

スターティングPCスクール(Stapa Programmer’s Guild)

生徒一人ひとりと対話して向き合い、本人自身も気づいていなかった強み、興味、関心、特徴などを見つけます。各自のプロジェクトを通じて、楽しみながらプログラミングを学べる、自由な雰囲気の教室です。

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