修繕積立金の「均等積立方式」と「段階増額積立方式」 その1

小堀將三

小堀將三

テーマ:管理費・修繕積立金

 修繕積立金の値上げで苦労されている管理組合様が増えてきているように思います。修繕積立金の額を設定する際のガイドラインとして、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が、平成23年4月に国土交通省から発表され、令和6年6月に改訂されました。平成23年の時のガイドラインでは、修繕積立金の積立方法について次のように記述されています。

≪修繕積立金の積立方法について≫
○修繕積立金の積立方法には、計画期間中均等に積み立てる「均等積立方式」と、当初の積立額を抑え段階的に値上げする「段階増額積立方式」があります。また、修繕時における一時金の徴収等を併用する場合もあります。
○「段階増額積立方式」は、計画どおりに増額しようとしても、区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例が生じており、将来にわたり安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、「均等積立方式」が望ましい方式といえます。
○新築マンションの場合は、購入者の当初の月額負担を軽減するため、「段階増額積立方式」を採用している場合がほとんどです(当初に修繕積立基金を徴収している場合も多くなっています)。
○分譲事業者は、購入予定者に対し、採用した積立方法の内容について説明を行うことが重要となるとともに、購入予定者は、修繕積立金の積立方法を確認し、「段階増額積立方式」の場合には、自らの資金計画との関係でも無理のないものなのかについてよく検討しておくことが必要となります。

 そして、改訂された令和6年のガイドラインでは、修繕積立金の積立方法について次のように記述されています。

≪修繕積立金の積立方法について≫
(1)修繕積立金の積立方法
修繕積立金の積立方法には、長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間中均等に積み立てる方式(均等積立方式)の他、当初の積立額を抑え段階的に積立額を値上げする方式(段階増額積立方式)があります。また、購入時にまとまった額の基金(「修繕積立基金」と呼ばれます。)を徴収することや、修繕時に一時金を徴収する又は金融機関から借り入れたりすることを前提とした積立方式を採用している場合もあります。段階増額積立方式や修繕時に一時金を徴収する方式など、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要です。将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。段階増額積立方式については築年数の経過に応じて、必要な修繕積立金が増加することや区分所有者の高齢化等により費用負担が困難化していくことを踏まえ、早期に引上げを完了させることが望ましいです。
(2)修繕積立金の積立方法を確認することの重要性
修繕積立金の積立方法によって、新築分譲時の修繕積立金の月額の水準は大きく異なります。分譲会社が、購入予定者に対し修繕積立金について説明を行う際には、採用した積立方法の内容について説明を行うとともに、購入予定者は、分譲会社から提示された修繕積立金が、「均等積立方式」によるものなのか、「段階増額積立方式」など将来の負担増を前提とするものなのかについて確認し、将来の負担増を前提とする場合には、その計画が自らの将来の資金計画(住宅ローンの返済計画など)との関係でも無理のないものなのかについて、よく検討しておくことが必要です。これにより、マンションの購入時点で、修繕積立金の積立方法についての購入予定者の理解が深まり、将来、修繕積立金の増額が必要になった場合に、区分所有者間の合意形成がより円滑に進むことになることが期待されます。 なお、「均等積立方式」を採用した場合であっても、その後、修繕積立金の額の見直しが必要なくなる訳ではなく、長期修繕計画の見直しによって増額が必要となる場合もあります。経年によって必要な修繕の内容が異なるほか、マンションの劣化の状況や技術開発、工事費の高騰等によって、実際の修繕の周期や費用等は変化しますから、どのような修繕積立金の積立方法を採用していても、定期的(5年程度ごと)に長期修繕計画を見直し、それに基づき修繕積立金を設定し直すことが必要です。

 どちらも「均等積立方式」が望ましい方式であるとしているにもかかわらず、その後に分譲されたマンションでは、今なお100%近く「段階増額積立方式」が採用されています。一昨年から始まった「管理計画認定制度」や「マンション管理適正評価制度」では、修繕積立金不足により適時適切な工事ができないマンションが増加しないように、認定または評価に一定の基準を設定しています。築20年以上を超えるマンションがその基準をクリアーするためには、現状の修繕積立金の2倍、3倍、場合によっては4倍程度値上げしなければならないケースが発生し、反対に組合員の同意が得られず値上げができないマンションが多々見受けられるようになり、改訂されたガイドラインで以下のような段階増額積立方式における適切な引上げの考え方が示されました。

実現性をもった引上げにより、修繕積立金の早期の引上げを完了し、均等積立方式へ誘導することを目的として、段階増額積立方式における適切な引上げの考え方を以下に示します。
[段階増額積立方式における適切な引上げの考え方]
• 段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合 の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。
•「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」については、実現性をもった引上げにより、修繕積立金の早期の引上げを完了し、均等積立方式へ誘導することを目的とするものであり、例えば、工事費高騰等の状況を踏まえた長期修繕計画の見直しにあたって、管理適正化のために現在の修繕積立金額の額を大幅に引上げる等を制限するものではない。

 この国土交通省が示した「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」の内容を、次回分かりやすいよう図で説明したいと思います。

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小堀將三
専門家

小堀將三(マンション管理士)

マンション管理士事務所JU 高知オフィス

第三者の立場に立って絶えず公平な判断を下し、管理組合様と管理会社の良好な関係ができるよう、両者をつなぐ役目となることを目指します。大規模修繕工事、管理規約の見直しなど、様々なお悩みに寄り添います。

小堀將三プロは高知放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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