老朽マンション全面改修の際に税優遇措置、解体費用補助額の予算要求
公益財団法人マンション管理センターに寄せられた相談内容が、毎年、当センターが発行している「マンション管理センター通信」に掲載されています。令和5年度の相談概要については、6月号の「マンション管理センター通信」に掲載されていましたので、内容を見てみたいと思います。
令和5年度の相談件数は14,523件で、過去最高の件数となっています。77.8%が管理組合様からの相談で、管理会社からは7.9%、マンション管理士からが0.9%、行政からが0.4%、その他・不明等が13%です。相談内容では、前年度と比較して目立って増加しているのが、「管理規約の作成・改正」、「管理員・フロントマンへの苦情・交代要求」、「理事長・理事会への不満」です。件数で見ますと、令和5年度も「区分所有法・(標準)管理規約の解釈」がダントツで一番です。その次が、件数は減ったものの昨年度同様に「役員の資格、選任・解任、任期」です。この「役員の資格、選任・解任、任期」の相談内容を見てみますと、役員の資格に関する相談事例については、次のような相談です。
①外部所有者を管理組合役員に選任できるか
②役員のなり手がいない。賃借人でも役員になれなるのか
③区分所有者でない居住者が理事になっていることは有効なのか、
④理事長の奥さんが代理で理事会に出席している
⑤理事会で書面による議決権行使や代理人の出席を認めることはできるのか
⑥理事会の定足数に監事の員数は入るのか
⑦役員であった区分所有者が亡くなり、配偶者が相続した。相続した配偶者を後任役員として選任して良いか
⑧区分所有者(妻)の夫が理事長になることは問題ないのか
⑨理事が監事を兼務している
⑩外部専門家を役員に選任することはできるか
良し悪しを別にして、これらのほとんどは管理規約を改正すれば可能です。しかし、⑥と⑨は、可能にする内容に管理規約を変更しても、それは無効となります。どちらも監事に関することです。理事会の構成メンバーは理事で、監事は理事会を監査する立場ですのでメンバーではありません。よって理事会の定足数に含まれません。また、監査する立場の者が監査される理事会の構成員であれば、自らが自らを監査することになってしまいますので、監事が理事を兼務することは考えられません。
⑧については、
「理事および監事は組合員、またはその組合員の配偶者から総会で選任する。」
というように管理規約を変更すれば、区分所有者の配偶者は理事になり理事長になることは可能ですが、ひとつ気を付けていただきたいことがあります。
それは、たとえ理事(理事長)に就任しても、議決権の行使はできないということです。あくまで議決権を行使できる者は区分所有者です。一般組合員の配偶者の方が議決権を行使する場合には、委任状が必要(委任状の範囲に配偶者が含まれている管理規約があることが前提)で、たとえ理事(理事長)であっても配偶者の立場であれば同じです。区分所有法では、区分所有者以外の者が議決権を行使できる旨を規約で別途定めることができるとは規定されていないからです。
区分所有法第39条第2項には、次のように規定されています。
「議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。」
ここでの“書面”とは「議決権行使書」で、“代理人によって”とは「委任状」のことです。代理人の範囲については、区分所有法は全く規定されていませんので、誰でも構わないのです。友人でも、会社の同僚でも、極端なことを言えば道すがらの見知らぬ人でも構わないのです。自分のマンションの将来に関わることを誰でも代理人に指名することができてしまったら問題ですので、管理規約で代理人の範囲を規定しているのです。
現実的には、配偶者の方が理事(理事長)に就任された場合には、委任状なしで議決権を行使されていることが多いと思いますが、法律上は委任状が必要であることを知っておいていただきたいと思います。