マンション専用庭に関する判例

小堀將三

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テーマ:その他

2017.07.23掲載のコラムです。

 専用庭に関する面白い判例が、マンション管理新聞に掲載されていましたのでご紹介します。
それは、専用庭がある1階の区分所有者が、元々敷きつめられていた芝生を取り除いて、そこに野菜を栽培していたことを管理組合から管理規約違反であると指摘されたことで、裁判をおこした事例です。その判決が昨年の11月28日に東京地裁で下されました。
 このマンションの管理規約や使用細則では、芝生の維持管理は専用使用者の管理責任と負担で原則行わなければならず、現状の変更や美観を損なう行為が禁止されています。また、専用庭の一部が非常時の避難通路になるため、避難の妨げとなるような使用をしてはならないことになっています。ただし、芝の撤去に関する明確な規定はありません。そこで判決内容ですが、まず、専用使用権の「価値」について言及しています。このマンションの1階は専用庭が付いているということで、同じ広さ・間取りの2階住戸よりも販売価格が高かったため、専用使用権の「経済的価値」と「優位性」を認めています。つまり、他の住戸よりも高く買った専用使用権者の利益にも十分配慮したうえで、管理規約等において専用使用権の範囲を決め、また権利を制限しなければならないとしています。その意味から、野菜の露地栽培をする権利を認めており、露地栽培の行為自体が管理規約等に違反するものではないとしています。しかし、露地栽培を行うにあたって支柱やビニールハウスなどを設けることは、細則で禁止されている「避難の妨げとなる使用」に該当すると判断しています。露地栽培をする権利はあるが、避難の妨げとなるような方法での栽培は許せないということです。この判決では、支柱やビニールハウスなどを使用しなければ良いということですが、もし栽培を行うのに肥料や殺虫剤を撒いたため、それらの臭いや虫が飛んで来るなどして窓が開けられない等の苦情が住民から出てくれば別だと思われます。他の住民にかなり迷惑を及ぼすような程度であれば、区分所有者の共同の利益に反する行為となり、区分所有法第6条第1項に抵触する可能性がでてきます。そうなれば、たとえ支柱やビニールハウスを設けていなくても違反となるでしょう。
 また管理組合は、芝生を撤去したことが共用部分の変更に当たると主張していますが、これについては、盛り土や掘削などは共用部分の変更に当たるが、単に植栽を撤去する行為は共用部分の変更に当たらず、専用使用権者の保存・管理行為の範疇であるとの判断です。なお、この判決は確定しています。

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小堀將三
専門家

小堀將三(マンション管理士)

マンション管理士事務所JU 高知オフィス

第三者の立場に立って絶えず公平な判断を下し、管理組合様と管理会社の良好な関係ができるよう、両者をつなぐ役目となることを目指します。大規模修繕工事、管理規約の見直しなど、様々なお悩みに寄り添います。

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