修繕積立金の「均等積立方式」と「段階増額積立方式」 その1
「Brillia City 石神井公園」が建て替えられる前は、日本住宅公団によって1967年に建てられた鉄筋コンクリート造5階建て9棟の団地でした。老朽化が進んだ築40年の2007年に建替えが検討され、2015年に事業協力者としてJVを選定、2020年に建替組合を設立して「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に基づいて一括建て替えが実施されました。旧団地の戸数490戸から844戸に増え、543戸が保留床住戸となり、権利者(301戸)が追加費用の負担なしで建て替え後も住むことができるようになりました。
住戸数を増やすためには、当初都市計画で決定されていた容積率60%以下、高さ5階建てまでとする「一団地の住宅施設」ということが壁となっていましたので、建替えにあたって、まずはこれを廃止して容積率を第一種中高層住居専用地域の200%、高さ制限を第2種高度地区の20メートルに戻す変更を求め、さらに、200%の容積率を有効活用できるように、高さ制限を24メートルに緩和する「地区計画等の住民原案」を練馬区に提出しました。結果、練馬区は住民原案に基づいて、2018年に一団地の住宅施設の廃止と地区計画を都市計画として決定しました。また、建替え事業資金を確保するために、従来区立の公園用地として練馬区に無償で貸していた敷地内の東側一部を練馬区に売却しています。
そして生まれ変わった「Brillia City 石神井公園」は、7~8建の8棟で、全棟が南向きとなっています。地区計画に基づいて地域に開放された緑地が多数設けられたことが特徴で、中でも敷地北側の石神井川沿いに設置された散策路はマンションの住民と近隣の住民の方とのふれあいの場所となっています。
従来の団地の面影は一切消え去り、全く違う別の建物として生まれ変わりましたが、修繕積立金の安さと徴収方法は変わっていませんでした。現在第4期1次販売が行われていますが、その内容は次のとおりです。
販売価格:4,648万円~7,698万円
間取り:1LDK~3LDK
専有面積:50.42㎡~82.06㎡
管理費:月額12,670円~20,610円
修繕積立金:月額5,060円~8,210円
修繕積立基金:379,500円~615,750円
駐車場:254台(全て平面)月額12,500円~14,500円
駐輪場:1,526台 月額100円~300円
バイク置場:62台 月額1,000円
管理会社:東京建物アメニティサポート
見ていただいてわかるように、専有面積が50.42㎡~82.06㎡で修繕積立金が月額5,060円~8,210円ですので、1㎡当たり月額100円ぐらいです。修繕積立基金を徴収していますので、数年間はこの安い修繕積立金で走り段階的に増額していく予定となっていると思われます。管理費もそうですが、修繕積立金は全体修繕積立金と住宅修繕積立金とに区分経理されており、全体修繕積立金が月額2,430円~3,940円、住宅修繕積立金が2,630円~4,270円の内訳となっています。住宅修繕積立金はいわゆる棟別修繕積立金だと思いますので、1棟の建物を維持管理するためだけの修繕積立金徴収額は1㎡当たり月額50円~55円だということです。
この1㎡当たりの月額修繕積立金で数年後を迎え、長期修繕計画、修繕積立金額の見直しを図る際に、合意形成が難しくなっている状況であれば、今多くの管理組合様が頭を抱えている問題(なかなか増額できない問題、増額を先延ばしたために多額の値上げが必要となる問題)を同じように抱えてしまうことになります。確かに建物や設備はとても素晴らしいものになっていますが、お金(修繕積立金)の問題は何の進歩も見受けられません。
分譲時の修繕積立金の低額設定、段階増額方式を止めることを、もうそろそろ真剣に考える時期が来ているのではないでしょうか。