「段階増額積立方式」での値上げ幅を制限
第6回の「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」にて、修繕積立金の段階増額積立方式における適切な引上げの考え方が提示されたことは、以前このコラム欄でお知らせしました。その提示された内容とは以下の内容でした。
段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とした場合、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。
具体的な計算方法は、次の式です。
0.6×D ≦ E かつ 1.1×D ≧ F
A:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
B:マンションの総専有床面積(㎡)
C:長期修繕計画の計画期間(月)
D:計画期間全体における月あたりの修繕積立金の平均額 =A÷B÷C(円/㎡・月)
E:計画期間全体における月あたりの修繕積立金の最低額(円/㎡・月)
F:計画期間全体における月あたりの修繕積立金の最高額(円/㎡・月)
Ⅾが均等積立方式の場合の毎月の修繕積立金ですので、例えば新築分譲マンションのその金額が15,000円としますと、100戸のマンションの場合、30年間の修繕費用の総額は5億4千万円となります。マンションによって当然違いますが、これぐらいの修繕費用は30年間で必要と思われます。このマンションで段階増額積立方式を採用した場合には、今回の目安では分譲時の修繕積立金は9,000円(15,000円×0.6)となり。これ以上の金額を分譲時の修繕積立金に設定する必要があります。
そこで、私の事務所の横で現在建設されている100戸クラスのマンション(総戸数97戸:2024年11月引き渡し予定)の分譲チラシ(上記チラシ)を見てみますと、修繕積立基金293,220円~486,000円を予定していますので、修繕積立金は段階増額方式で間違いないと思います。その修繕積立金の額は5,430円~9,000円です。平均額は7,000円前後だと思われますので、もし、このマンションの均等積立方式での修繕積立金が15,000円だった場合には、今回提案された内容よりも安い金額設定となっています。30年間の長期修繕計画においては2回の大規模修繕工事の実施が計画されていることが管理計画認定制度の基準になっていますので、遅くて築15年で大規模修繕工事を実施すると仮定すると、それまでに値上げもなく積立てられた場合の金額は、7,000円×97(戸)×12(月)×15(年)=122,220,000円と修繕積立基金の300,000(平均額)×97=29,100,000円で合計151,320,000円です。均等積立方式で積み立てていた場合には、15年間で2億7千万円が積み立てられている予定ですので、118,680,000円少ない計算になります。大規模修繕工事の費用は修繕費用や人件費や資材の高騰により年々上がっていますので、1戸あたり130万円としますと、1,300,000円×97=126,100,000円となり、大規模修繕工事実施前までに積み立てられる修繕積立金額の151,320,000から差し引きますと、残りは25,220,000しか残りません。大規模修繕工事で実施する工事項目以外で、12年~18年の修繕周期の工事項目は、給水ポンプ及び排水ポンプの改修、受水槽がある場合には改修又は取替、エレベーターの部分補修、空調設備及び換気設備の部分補修、その他、機械式駐車場の部分補修、雨掛り部分の鉄部塗装などがあり、これらの費用を25,220,000では賄うことは難しいと思われ、築5~7年前後で増額する予定としているはずです。
このマンションの一番高いお部屋と思われる、修繕積立基金は486,000円で、修繕積立金が9,000円ですので、486,000円÷9,000円=54。つまり、54ヶ月分(4年半分)を先に徴収しているわけです。最初から15,000円ではなく7,000円しか徴収していませんので、この差額を5年間ほど埋め合わせする金額でしかありません。ですから、築5年ほどで修繕積立金を見直す必要があります。そのタイミングで見直し値上げできればよいのですが、その値上げを棚に上げたままにしたり、または値上げに対して住民の合意形成が取れなかったりして、分譲時の修繕積立金のまま大規模修繕工事を迎えることになってしまったマンションが非常に多いです。
最近分譲されたマンションをお買いになられた区分所有者の方は、できる限り早めに修繕積立金の見直しを行い、均等積立方式に是非変更していただきたいと思います。
ライフルホームズのサイトで、修繕積立金についての以下の記事が掲載されていましたので、是非お読みいただければと思います。
◆マンションの修繕積立金徴収に関わる「数字の独り歩き」問題とは