総会での議決権数の集計について

小堀將三

小堀將三

テーマ:総会・理事会

 日本の株主総会の運営において、議決権の集計が信託銀行に業務委託されている企業がほとんどのようで、この議決権集計が不適切に行われていたことが分かりました。その数は、上場企業の約3割にまで及んでいるようです。
 不適切に集計が行われてしまった理由は、到着期限の日に届いた議決権行使書をカウントしなかったことです。株主総会が集中する繁忙時期の間の事務処理を軽減するために、郵便局と協議して、到着期限日の一日前に議決権行使書を受け取って集計し、到着期限日に到着した議決権行使書を、到着期限後に到着したものとしてカウントしていなかったのです。
 東芝の株主であるシンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、適切に議決権行使書が集計されていなかった可能性を指摘したことで、明るみになったようです。不適切な処理で、実際の決議に影響があったかどうかですが、賛否まで影響した事例は、今のところ確認されていないということです。

 ところで、マンションの総会での議決権の集計についても注意していただきたいのですが、ほとんどのマンションの管理規約が国土交通省作成の「マンション標準管理規約」をモデルとしていますので、このマンション標準管理規約(以下「標準管理規約」と呼びます。)を前提としてお話させていただきますと、普通決議では出席者(委任状及び議決権行使書を提出された方を含む。)による賛否の議決権の数が集計され、特別決議(建替え決議、敷地売却決議も)では総組合員による賛否の議決権だけでなく組合員の賛否の頭数も集計します。どちらも、議決権数の数を集計するのですが、この議決権数は、各組合員の割合で決められています。
 標準管理規約の第46条(議決権)では、「各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。」と規定されており、別表第5には△△号室〇〇〇分の□□と記載されています。〇〇〇は全お部屋の専有部分の面積を足した数字です。そして□□は△△号室の専有部分の面積です。
 従いまして、議決権数を集計する際には、賛成された方の議決数と反対された方の議決権数を集計することになり、最終的には、〇〇〇分の◆◆と数字になります。しかし、これでは計算が煩雑になるということで、各お部屋の専有部分の面積がさほど変わらない場合には、標準管理規約と違って、「組合員は、その所有する住戸部分1戸につき各1個の議決権を有する。」と規定しているマンションも多く、この場合には頭数と同じように集計すればよいことになります。
 しかし、「組合員は、その所有する住戸部分1戸につき各1個の議決権を有する。」と規定されておらず、標準管理規約どおりのマンションにおいて、頭数と同じように集計していることがあります。集計するのは管理会社だと思いますが、管理会社の担当者は、10前後の管理組合を担当していますから、それぞれの管理組合の管理規約上の議決権数どおりに集計しているかどうかは疑問です。頭数と同じように集計している担当者がほとんどだと思われます。

 たとえば、某マンションの一例を見てみますと、まず、このマンションの管理規約は次のようになっています。
第48条(議決権)
各組合員の議決権の割合は、共用部分の共有持分割合とし、別表第5に掲げるとおりとする。
 そして、議事の決し方については、
第49条(総会の会議および議事)
1 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。(普通決議)
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上および議決権総数の4分の3以上で決する。(特別決議)
 そして、議決権数が記載されている別表第5は次のとおりとなっています。

 ところが、総会議事録を見てみますと、
<成立要件>
 <審議結果>
 成立要件では、議決権数を記載していますが、審議の結果については記載せれておらず、「賛成多数」で終わらせています。
 普通決議の場合ですと、賛否に影響することは少ないと思いますが、特別決議の場合には気をつけていただきたいと思います、特別決議において、いつもギリギリのところで戦っておられる管理組合様は特に注意が必要です。住戸部分1戸につき各1個の議決権で集計すれば可決かもしれませんが、標準管理規約どおりに集計した場合には否決であるかもしれません。このような事態が発生するかもしれないのは、お部屋の専有面積がバラバラで、しかも面積の差が著しく違うようなマンションです。ほぼ一緒の面積のマンションでしたら、頭数で集計した場合と、ほとんど変わりませんので、こちらの方はそれほど心配する必要はありませんが、一度、ご自分のマンションの管理規約をご覧いただき、各戸の議決数の割合を確認してください。第48条前後にある「議決権」に関する条文です。
 もし、管理会社が集計方法、議事録の記載方法が間違っていましたら、是非指摘して下さい。

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小堀將三
専門家

小堀將三(マンション管理士)

マンション管理士事務所JU 高知オフィス

第三者の立場に立って絶えず公平な判断を下し、管理組合様と管理会社の良好な関係ができるよう、両者をつなぐ役目となることを目指します。大規模修繕工事、管理規約の見直しなど、様々なお悩みに寄り添います。

小堀將三プロは高知放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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