総会での議決権数の集計について
横浜に本社を置き、関東地方で約50店舗ほど展開しているディスカウントスーパーの株式会社オーケーが、今年の6月に、関西スーパーに買収提案したのですが、関西スーパーはエイチ・ツー・オーリテイリングとの経営統合を8月に発表しました。関西スーパーは、オーケーの買収提案を受け入れるか、それともエイチ・ツー・オーリテイリングと経営統合を行うかを、臨時株主総会で株主に問うことになり、10月に開催された臨時株主総会にて、エイチ・ツー・オーリテイリングとの間で経営統合がされることが承認されました。しかし、オーケーは臨時株主総会での議決権の取り扱いに疑義があるとして、11月9日にエイチ・ツー・オー リテイリングとの統合案の差し止め仮処分を神戸地方裁判所に申し立てを行いました。それを受けて、昨日22日に、神戸地裁は関西スーパーの臨時株主総会での決議の方法に「法令違反または著しい不公正」があると判断し、オーケーによる仮処分申請をみとめる判断を下しました。これにより、エイチ・ツー・オーリテイリングとの経営統合にブレーキがかかりました。
この臨時株主総会の決議方法で、何が法令違反で著しい不公正だったかですが、それは、ある株主の議決権の取り扱いに問題があったようです。その株主は、事前に賛成の議決権行使(たぶん議決権行使書での議決)を行っていたのですが、総会に出席して議決権投票用紙のマークシートを投票箱に投じたのです。ここまでは、よくあるパターンで、この場合は、総会に出席した時点で事前の議決権行使は無効扱いになり、マークシートの記載内容(賛成・反対等)で判断されます。今回の問題は、そのマークシートにマークをせずに投票箱に投じてしまったことで起きてしまいました。関西スーパーは、その株主が事前に賛成の議決権行使を行っていたことから賛成の意思があるとして、白紙のマークシートを本来無効票として取り扱うべきものを賛成票として取り扱ったのです。議案の可決には3分の2以上が必要であり、賛成票として取り扱った結果で、66.68%の賛成となり、この議案が承認されました。もし、この株主が投じたマークシートを無効票として取り扱っていた場合には、65.71%で議案は否決されたことになっていました。そのことから、オーケーが統合案の差し止め仮処分を申請したのです。
議決権の取り扱いはとても重要で、一人の株主の白紙議決権の取り扱い方で、今回のように議案が承認されるか不承認になるかが決定してしまうのです。
このことは、管理組合の総会でも同じことが起こりえます。今回の臨時株主総会のように、当日に議決権投票用紙を投票してもらう議決方法を取っている管理組合は少ないと思いますが、もし同じような方法で行っていると思われる戸数の多い管理組合様は特に気をつけていただきたいと思います。
築年数を経るにつれて、特別決議事項(4分の3以上)が多くなってきますので、委任先が記載されていない委任状や賛否が記載されていない議決権行使書の扱い方を管理組合様で十分に検討していただき、出来れば細則で規定していただければと思います。
白紙の委任状や白紙の議決権行使書の取り扱い方は、管理会社が作成した総会出欠票・委任状・議決権行使書に委ねられていることが多く、管理会社が変われば取り扱い方も変わります。取り扱い方は管理会社が決めることではなく、管理組合様が自ら決めることですので、是非検討してみて下さい。検討の内容は以下の事が考えられます。
<検討事項例>
・出席届を出していたが、当日出席できなかった組合員がいた場合
(出席率確保のために、議長に委任したことにしている場合が多い)
・委任状で委任の名前が記載されていない場合かつ議長に委任するに〇をする箇所が無い場合
(議長に委任したものとして見なす場合が多い)
・出欠票、委任状、議決権行使書に本人の名前と部屋番号が記載されていない場合
・議決権行使書において承認・不承認のいずれにも〇印が無い場合
(棄権したものと見なす場合と賛成と見なす場合があり)
・議決権行使書において承認・不承認の両方に〇印が記入されている場合
・委任状と議決権行使書の両方に記入された場合
(議決権行使書を優先する場合が多い)
(棄権したものと見なす場合と賛成と見なす場合があり)
・出欠票、委任状、議決権行使書に本人の名前と部屋番号が記載されていない場合