沈下修正の新工法で特許出願中
沈下修正受付時の業務フロー
私たちでは沈下修正の案件を受付た場合には、以下の手順で進めて行きます。
①事前調査(旧地図、地形分類図、航空写真等)
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②現地での地盤調査と建物の傾斜測定
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③沈下原因の推定と今後の沈下予測
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④修正工法の決定と修正範囲の検討
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⑤お見積書の提出と工法などの内容説明
不同沈下の主な原因は、地盤に起因しています。
単なる地盤の強度不足、粘土層の圧密沈下、盛土材の圧縮沈下、混入ガラのスレーキング、
土砂の流出による軟弱化や空隙化、近隣の建築や土木工事の影響まで考えられます。
どんなに丈夫な建物でも、地盤が下がれば沈下します。地盤は堅固に越したことはないのです。
つまり、地盤の状態を確認せずに沈下修正を行う事は、
単なる一時しのぎでしか過ぎないと私たちは考えています。
しかしながら、確実な沈下修正にかかる金額は建築時の地盤補強工事の何倍にもなる事が多く、
実際には土台上げなど比較的安価な妥協案になってしまう事も多いものです。
今回の不同沈下の実例
さて、写真の現場は石垣上の築30年以上経過した建物です。
石垣側に向けて不同沈下を起こしていました。
室内計測では最大沈下量は53mmもあり、部分的な最大傾斜としては7.7/1000!
当然の事ながら、現在の基準では重大な瑕疵と判定されます。
この傾斜では日常生活にも支障をきたすレベルですから、
寝る際には高い方に頭を向けていないと寝る事もできなかったと安易に想像できます。
また、上層階になるとさらに傾斜がきつく感じるものです。
建物の周囲で地盤調査を行なってみると建物の山手側では岩盤に近く安定してるのに対し、
石垣側の盛土部分は(地山表土の可能性もある)非常に軟弱なデータとなっており、
明らかにこれが主原因と考えられました。では、なぜこんなに軟弱なのか?
あまりに軟弱だったため、雨どいから雨水管の点検をさせてもらうと、
水を流しても雨水管の出口では全く出てきてない事が判明しました。
地盤と建物が沈下する過程で雨水管が損傷又は継ぎ目が抜けてしまったと想定され、
雨水が地中に漏出していると考えられます。
以前のコラムでも少し触れましたが、土に大量の水を入れてしまうと、
地盤の軟弱化や土砂の流出、斜面の崩壊などを起こすので注意が必要です。
この状態を放置すると、大雨が降る度に少しづつ沈下が進行していくと想定されます。
沈下修正工法の検討
この現場では
①地盤が軟弱である。
②沈下の進行が懸念される。
③石垣に近接している。
④建物の傾斜は約半分。
⑤盛土中にガラが入ってない。
などの理由から、この現場では部分的なアンダーピニング工法を採用する事にしました。
当然ですが、沈下修正後に雨水管の入替も建築側で施工してもらう事としました。
この案件ではトンネル掘削がなく施工ができたり、和室の畳をあげて屋内から作業できたので、
比較的安価にアンダーピニング工法が採用する事ができました。
ジャッキアップ完了
長い間傾いていた建物では、建物の土台自体が曲がってしまい、部分的に上がり過ぎる事もあります。
この現場では、タイル等の内装の損傷も極力抑えつつバランスの取れたレベル調整を心掛けました。
基礎が布基礎の為、床下の束は調整可能な鋼製束に交換して完了です。
これで生活への支障や違和感がなく快適な空間に戻すことができた考えられます。
お施主様には大変喜んでもらえました。これで安眠していただけると思います。
この現場では、これ以上の沈下の進行の可能性が低い事から
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ここまでやれば一安心です。
近年の異常気象の影響も
近年の温暖化の影響と考えられる局所的なゲリラ豪雨や多くの台風襲来により、
今までにない雨量を記録する事例が多く見られる様になってきました。
盛土の場合、浸水被害の後にまれに「水浸沈下」という現象を起こす場合があります。
これは盛土内に大量の水が流入し、そして抜けていく事で沈下していきます。
これからは雨水の仕舞もきちんと考えておく必要があります。
気候や環境の変化により、今まで沈下した事が無い古い建物でも、
これからは新たな沈下を誘発する可能性がありますので注意が必要です。