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大型建物の不同沈下事故

穂盛正明

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テーマ:不同沈下

今回は、めったにない大型事故事例として
大型不同沈下事故2件について考えてみます。


少し前になりますが、お隣、韓国の不同沈下が話題となりましたね。
一部報道によると大雨(長雨?)の後、一晩内に傾いたとの事で、
建物の傾斜角は最大で15~20度近くある様です。
当然、崩壊の可能性が高いので、この後解体撤去したらしいですが
まだ建築途中であった事から、人命に係わる事はなかったとの事!
それだけは幸いだったと言えるでしょう。
いろいろな情報が錯綜していますので、私見にはなりますが、
原因について検討してみます。
・杭の不足?=〇
 杭の本数や支持力が足りてない場合には当然沈下します。
 杭自体の座屈や沈下により、短期間で沈下する可能性はあります。
・圧密沈下?=☓
 通常の場合、圧密沈下は長い時間が必要になるので
 一晩でここまで沈下する事は考えにくいといえます。
・地盤のすべり破壊?=☓
 地盤の強度が限界に達した場合には、すべり破壊が起こりますが
 建物が沈下した方向の地盤に盛り上がった様な形跡が見られません。
・地盤の空洞化?=〇
 地盤に大量の水が浸み込むと、地盤の軟弱化や土砂の流出が起こります。
 徐々に流出した後、空洞ができるのでそこに向けて一気に沈下します。
 数年前に徳島県の鳴門駅前でも同様の事故がありました。
以上の結果から、雨や地下水による土砂の流出と杭基礎の支持力不足が
大きな要因であると考えられます。


また先日の横浜市内のマンションも大きな話題となりました。
連日の報道によりワイドショーでは毎日のようにやっていますので
詳しい内容については割愛させて頂きますが、支持杭の長さ不足により
5棟のうち1棟が西側へ不同沈下しているようです。
近隣の地形や地盤データから原因を考えてみましょう。
弊社で使用している全国の地盤データが見えるシステムを使用します。
↓これにより航空写真、旧地図、地形図、土地条件図や
 近隣の地盤データが一度に見れます。

各図面を精査すると、この一帯が丘陵地(丘)を切り盛り造成する事で
宅地化している事が見て取れます。更にこの沈下を起こした物件が、
西から南西方向への斜面に位置している事が分かります。

また上図の近隣のボーリングデータから、この周辺の地表面は
ローム層(火山灰)となっており、西側の方が支持層が深くなっています。
こうした事から西側方向へ傾きやすい立地だった事がわかります。
そこで当然ですが、支持杭を21本打設する事となった訳ですが、
その肝心の杭の施工管理に問題があった様です。
支持層の深度管理については、ボーリングデータ等によって深度を想定し
尚且つ、打設機械の回転トルクや電流値などにより支持層到達を確認します。
今回の報道では、そこに問題があり支持層に到達してなかったとの事です。
こういった場合には、
・杭の先端を支持層へ十分に貫入させる事。
・一方が直接基礎、もう一方が杭基礎など異種基礎にしない事。
・地盤が一定でない場合には、地盤調査の測点を増やす事。
などの注意が必要です。
しかし、民間工事でボーリング調査を増やす事はコスト的に厳しいものです。
その場合には、ラムサウンディング試験などを

併用すれば多くの測点での支持層を比較的安価に支持層を探す事ができます。

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穂盛正明
専門家

穂盛正明(地盤品質判定士)

有限会社グランドワークス

高知県内各地の地盤・地質に詳しく、調査データのストックも豊富である。改ざん不可能な地盤調査システムによるデータの信頼性の高さが強み。四国内で唯一のアンダーピニングによる沈下修正の直営施工班を保有する。

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