青春の1ページ(スタッフ)
以前働いていたところでは、
ランチのお弁当を配達してもらっていました。
そのお弁当屋さんは、
配達の人がたくさんいるので、毎日誰が来るかわからず、
こちらも受け取る人は手の空いている人が受け取るので、
とくに決まっていませんでした。
私がお弁当を受け取ることが多かった頃、
よく配達に来るおじいさんがいました。
とても丁寧な方で、おだやかであたたかみのある方でした。
お弁当を受け取り、代金を渡すというだけのやりとりですが、
「雨の中大変ですね、お気をつけて」と声をかけたり
「お元気ですか」と声をかけられたり、
ほんのささいな一言二言の言葉を交わしていました。
私は、どなたにも
「暑い中、ありがとうございます」
「お気をつけて」など
何か一言声をかけるのですが、
ほとんどの方は忙しく次の配達先へ向かい、
なかなか顔を覚えたり
声をかけあったりするような関係にはなりません。
そんな中、そのおじいさんだけは、
いつも丁寧に答えてくださって
なんとなくお互いに顔見知りとして
声をかけあうようになりました。
あるとき、しばらくの間、
たまたま他の人がお弁当を受け取ることが続いた時期があり、
ひさしぶりに私がお弁当の受け取りに出ると、
ちょうどそのおじいさんが届けに来ました。
私の顔を見るなり
「ひさしぶりですね、しばらくお会いしなかったので
もういらっしゃらないのかと思いました」と
声をかけていただき、
おじいさんが私のことを気にかけてくれていたこと、
声をかけてくれたことに、
嬉しく思いました。
それから時間が経ちましたが、
たまにそのおじいさんのことを思い出します。
名前も知りません。
おじいさんも私の名前を知りません。
お弁当と代金のやりとりをたまにするだけの
ささいなつながりでした。
けれど、お互いに気にかけながら
日々を過ごし、その一言に
なんとなく心あたたまる体験をしました。
そして時間が経っても
思い出しては心がほっこりするのです。
私も、あのおじいさんのように、
何をするわけではなくても
存在感を残すわけではなくても
なんとなく思い出すと心あたたまるような
そんな人になりたいな、と思いました。
みなさんにとって、思い出すと心あたたまるような人は
いますか?
文:スタッフsachi
代表:椎名 あつ子