「令和2(2020)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説
みなさん、こんにちは。
国語専門オンライン学習塾 啓理学舎の篠田です。
今回は、「平成26(2014)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説をさせていただきます。
題名は「雑草」(八木幹夫)です。
【問1】
(解説)
この設問は、線部1の比喩的表現を抽象的に言いかえなさい、という問題です。
線部1をしているのは、1連4行目の「ぼく」と考えられます。
また、「ぼく」は1連の5、6行目より、小学生だとわかります。
1連の2、3行目で
「〜午後はながかった / 学校から家まで永遠のように遠かった」
より、放課後、家にまっすぐ帰らずに寄り道をし、時間をつぶしていたと考えられます。
そして、4連1行目に注目すると、「草食って」という表現があります。
これも比喩的表現です。
意味は、「本来の目的や行き先にすぐ向かわず、途中で余計なことをして時間をつぶすこと」です。
それから、4連2行目「そのままぼくは帰らない」に続きます。
つまり、1連の1〜3行目と4連の1〜2行目の表現は、この詩では同じようなことを表していると考えられます。
解答例は以下になります。
(解答例)1行20字程度
道草を食っているということ。(14字)
【問2】
(解説)
線部2の「ぼく」(作者)と同じ人物を指すと考えられる言葉を2〜9連の中から抜き出すと以下になります。
3連の3行目「ぼく」
4連の2行目「ぼく」
6連の1行目「おじさん」
9連の2行目「ぼく」、「少年」
まず、線部2の「ぼく」は小学生です。
3連の3行目と4連の2行目の「ぼく」も同じで小学生です。
6連では、小学生の「ぼく」が、「ぼく」が大人になった「おじさん」に質問をしています。
そして、7連では、「ぼく」が大人になった「おじさん」の言葉です。
8連では、小学生の「ぼく」の言葉です。
9連では、また、「ぼく」が大人になった「おじさん」の言葉です。
ですから、9連2行目の「ぼく」は、小学生ではなく、「ぼく」が大人になった「おじさん」のことです。
よって、9連2行目の「少年」は小学生の「ぼく」になります。
(模解)
「少年」
【問3】
(解説)
設問には、線部3「ヤギくん」には、二つの意味がこめられていると書かれています。
一つ目は、この詩の作者の苗字は「八木」であることです。
二つ目は、学校帰りで、よく「道草食って」いたことから、草食動物である「山羊(ヤギ)」という意味が込められている、ということです。
この二つの意味が「ヤギくん」には込められていると考えられます。
(解答例)3行60字程度
作者の苗字である「八木」と、道草を食っていたことから考えられた草食動物である「山羊」という意味。(48字)
【問4】
(解説)
この設問を解説する前に、この詩の場面について解説をいたします。
1連:作者が小学生の時の様子。
2〜3連:同窓会の時の様子。
4〜9連:
作者が小学生で下校途中に、
大人の作者「おじさん」(6連1行目)または「ぼく」(9連2行目)が
小学生の作者「ぼく」(4連2行目)または「ぼく」(9連2行目)に
話しかけている様子。
となります。
つまり、線部4「ぼくの大好きだった女の子」の言葉は、2連と考えられます。
(解答)「始め」「終わり」それぞれ5字
(始め) ヤギくんは(5字)
(終わり) でいたわね(5字)
【問5】
(解説)
6連の言葉は、小学生ときの作者が言ったものです。
6連1行目の「おじさん」は現在(大人)の作者のことです。
ですから、小学生ときの作者が、現在(大人)の作者に話しかけていることになります。
7連では、現在(大人)の作者が、小学生ときの作者に、注意をうながしています。
8連では、逆に、小学生のときの作者が、現在(大人)の作者に、答えています。
ということは、9連では、現在(大人)の作者が、小学生ときの作者に話していることになります。
前にも書いた通り、9連2行目の「ぼく」は現在(大人)の作者で、同じ行の「少年」は小学生ときの作者です。
そこで、9連の3〜4行目に
「あれは / ママコノシリヌグイ」
と言っているため、答えは以下となります。
(模解)
ママコノシリヌグイ
問題の解説からははずれるのですが、「ママコノシリヌグイ」について記したいと思います。
この植物は、茎や葉に細かいトゲがあります。
漢字で書くと「継子の尻拭い」となります。
そのため、「これで尻を拭いたら痛い。→継子(ママコ)にそんなことをさせるのか」という皮肉や風刺を込めた名前です。
つまり、母(継母)が冷たく、継子に痛い思いをさせる…という昔の世相を反映した風刺的な植物名です。
8連より、作者が小学生の時の5年前に、実母は亡くなり、継母がいることがわかります。
ですから、この植物の名前(ママコノシリヌグイ)にしたと考えられます。
【問6】
(解説)
この設問は「ぼく」の気持ちを問いています。
ですから、答え方は「〜という気持ち」となります。
また、線部6の「ぼく」とは誰のことでしょうか?
前にも書きましたが、「ぼく」は、作者自身のことであり、小学生の「ぼく」ではなく、大人の作者のことです。
つまり、この設問は、小学生の頃の自分自身(作者自身)を思い出し、現在(大人)の作者はどんな気持ちなっているかを問いています。
小学生の頃の作者の状況は以下のとおりです。
○友達と仲良く遊ぶことが苦手。(1連8行目)
○いつもひとりで遊んでいた。(2連2〜4行目)
○実母は亡くなり、継母がいる。(8連1〜2行目)
上記の状況で小学生の頃の作者の気持ちを一言で表すと「さびしい気持ち」となると考えられます。
ただし、この設問は、現在の作者の気持ちを問いていので、気をつけましょう!
解答例は以下となります。
(解答例)3行60字程度
友達と遊ぶのが苦手でいつもひとりで遊び、実の母は亡くなっており今の母には甘えられず、さびしい思いをしていたかつての自分をいとおしむ気持ち。(69字)
どうでしたから、作者の小学生の頃の作者と現在の作者が入り組んでいるため、難しかったのではないでしょうか。
難しかった場合は、再度解き直しをして、しっかり理解しておきましょう!



