補聴器よりまず耳鼻科受診!というケース
様々な噂だったり、身近な使用者の意見を気にされる方は多いです。
「親類がどこそこのメーカーの〇〇万円くらいの補聴器を使っていて調子良いようだから試したい。」・・・お気持ちはわかります。
うちの母と同じくらい、もしくはもっと耳が遠いにもかかわらず、補聴器をつけたら通常の生活が出来ている。
しかしウチの母は補聴器をつけてもあまり聞き取れていないようだ・・・
このような相談を頂くこともあります。
身近な者から見て、同じような聴力に思えるけれど補聴器の効果が格段に違ったら・・・
これは補聴器が悪いのではないか?
あの人と同じ機種にしてみたら改善するのではないか?
そう思う事はごく自然なことでしょう。
しかし、補聴器に関してはクチコミは全くアテにならないと考えた方が良い。
その理由は大きく分けて3つあります。
その1
同じような聴力に見えても実は全然違うことがある。
様々な聴力図を例示してみました。
赤い線が右の聴力
青い線が左の聴力
横軸は周波数
縦軸は下へ行くほど聞こえが低下していることを表します。
どれも高度~重度難聴で障がい手帳の基準に該当する聴力ですが、
それぞれの聞こえ方は全く異なることが見て取れます。
その2
聞こえの低下は「音」の聞こえ方だけでなく、「言葉」の聞き取りも重要
今度は音の聞こえ方ではなく、言葉の聞き取り能力を測定した図になります。
同じように、
赤い線が右の聴力
青い線が左の聴力
今度は横軸は声の大きさ、右へ行くほど大きな声で測定しています。
縦軸は正解率、20個づつ言葉を聞いて頂き、全て正確に聞き取れたら一番上「100%」に到達します。
※その1の「音」の聴力図との相関はありません。
通常の会話レベルの声の大きさはおよそ60dB前後となります。
通常会話レベルでは全く聞き取れないけれども、80dBまで増幅したら80%聞き取れる方もいれば、最高でも30%しか聞き取れない方も見られます。
ここが補聴器の効果の違いとなって表れる部分。
音を適切に増幅すればよく聞き取れる人、増幅しても限界がある人。
単純に音の聞こえ具合だけでなく、言葉を聞き分ける能力の違いによって補聴器の効果の限界も変わります。
そのため、Aさんにとって最高の補聴器がBさんにも同様の効果を発揮してくれるとは限らないわけです。
その3
生活環境の違い
3つ目は環境の違いによるもの。
普段ほとんど屋内で過ごす方と、仕事を持っていて人と接することが多い方では
当然補聴器に求める効果も変わってきます。
外交的、社交的な環境であれば、より多くの事を求める必要がありますので、
屋内で過ごすことが多い方々とは補聴器に求める性能も変わってきて当然。
また、比較的早い段階から補聴器を使用していた方と、
難聴がかなり進行してしまってから使い始めた方でも補聴器の効果は変わってきます。
ある程度早い段階から使い始めていた方のほうが、
やはり会話の聞き取り能力は高く維持できているケースが多く見られます。
どこのメーカーの補聴器が良いのか?
どのレベルの補聴器が良いのか?
種類や機種に関するクチコミを気にするよりは、
販売店の対応についての評価に気を配った方が良いかと思います。
補聴器の良し悪しは、結局のところ調整の良し悪しであったり、
装用者の求めるところを察するヒアリングの能力などによるところが大きい。
要はそれなりに経験があり、設備も整った技能者がいる店を選択することが最も重要と思われます。