補聴器よりまず耳鼻科受診!というケース
当店のコラムではおなじみの「オージオグラム」・・聴力図です。
〇や×で結ばれている線は"気導聴力"・・・ヘッドフォンから聞こえた音
コの字のような印が"骨導聴力"・・・耳の後ろに振動板を当てて聞こえた音を表します。
横軸は周波数、左が低周波数~右に行くにしたがって高周波数帯域になります。
この聴力図では低音障害型になっていることがわかります。
また、骨導値はわりと上の方にあり、さほど低下していないことがわかります。
このような聴力は「伝音難聴」と言います。
外耳~中耳に何らかの障がいがある場合に典型的な聴力型ですね。
このような聴力ですと、原則耳鼻科受診がまず優先されるわけですが、
今回の相談者のケースでは、既に中耳の手術から10年以上が経過し、
この聴力で安定しているため、補聴器の相談となりました。
音の聞こえ方だけじゃ不足!言葉の聞こえ方も調べよう
今回のケースでは、普通会話レベルの音量でほぼ正確に語音を聞き分けることができました。
ただし周囲が騒がしくなったり、小さい声だったりすると途端に聞こえが低下してしまう状態。
ここで問題となるのは、SN比(音声と周囲の騒音の音量差)と会話音量。
伝音難聴の場合、この2つが改善できれば聞き取りは大幅に良くなると思います。
まずは通常の補聴器を右耳で試して頂き、その後「骨導型補聴器」も試してみる価値があるかと思います。
さて今度は左右差の大きい聴力。
左はかなり聴力が低下しています。
さらには、言葉の聞こえ方の測定でも結果が芳しくなく、「感音難聴」であることがわかります。
ご本人は特に聞こえづらい左側を何とかしたいという思い。
これは理解できます。
しかし、やはり右片耳での補正が王道となるでしょう。
もしくは、左耳には「クロス補聴器」を装用して右側に送信するやり方も考えられます。
右の難聴も補正しつつ、左側からの声も右で聞き取る「バイクロス方式」と呼ばれる補聴方法です。
今回は左からも音を入れたいというご本人の強い思いを受け入れ、まずは両耳補聴器をご体験頂くこととしました。
ご自身で実際の聞こえ方を体感したうえで判断頂ければ、その後の対応にもご納得頂けることでしょう。