障害者グループホーム(共同生活援助)とは?
(概要)
近年、障害者支援のひとつの形として数が増えているグループホームですが、実際に開設してみると、そこには大小のさまざまな問題点も浮かび上がってきます。
(本文)
障害者グループホームは、簡単に運営できるのか?
グループホームの運営を考える人たちの中には「楽に儲かる」という感覚を持っている人も少なからず存在するようです。フランチャイズを運営している会社も「簡単に楽に儲かる」として多額の加盟金を搾取している悪質な会社も存在します。
しかし、医療・福祉関連の事業は「賃金が安い」「重労働」ゆえに人員確保が難しいのが現実であり、さらに実際に現場に立ってみなければわからない問題点やトラブルも存在します。
グループホームの運営は、医療・福祉関連事業と同様に「簡単に儲かる、簡単にできる事業ではない」という認識を持つことが必要です。
グループホーム全体における、基本的な問題点
都道府県(または政令都市ならびに中核都市)の障害者総合支援法上の事業者指定を受ける必要があるグループホームは、基本的な人員や設備基準を満たしている事業所が運営するので、この点での安心度は高いといえます。
ただしこれは最低限度の基準なので、いくら基準は満たしていると言ってもグループホームの状況によっては、満足できるサービスが行えないことも多々あります。
また、グループホームでは医療・看護スタッフの配置が義務ではないために、医療ケアに特化はしていません。支援を受けながらも、ある程度の自立した生活を送れることが入居の条件であるため、グループホームでの生活の中で要支援度合いが上がってしまうと、退去しなければならないこともあります。
グループホームは、基本的に障害を持つ利用者の援助をしつつも、「自立支援サポートのために、共同生活を通じて地域参加や就労支援、レクリエーションを行うための場所」と考えた方がいい一方で、「障害が重度化した人たちに対してのケアをどうするのか」ということも考えていかなければなりません。
グループホーム運営者の日々の悩み
グループホームを運営していく中での現場レベルの悩みは、大きく2つに分けられます。ひとつは運営に関わる悩み、もうひとつは入居者に関わる悩みです。
【運営に関わる悩み】
<スタッフの募集・継続雇用の難しさ>
入所者の生活の場であるグループホームは、当然ながら1年365日の運営が必要で休みなどありません。
したがってスタッフの勤務形態の基本は泊まり勤務となります。さらに業務には精神的肉体的負担がかかることもあり、その割には低賃金でスタッフを募集してもなかなか人が集まらない、という現状があります。
またスタッフの高齢化も顕著で、続けることが難しく辞めてしまう人も多いです。だからといってグループホームをスタッフがいない状態にするわけにはいかず、責任者などが泊まり勤務などを行って、その穴を埋めている所も少なくありません。これは管理者の過重労働につながって早期退職、精神的な休業に陥るリスクを含んでいます。オーナー自身が世話人や夜勤者を連日連夜勤務することも必要な場面も多くでてきます。
スキルアップを望むスタッフがいたとしても、勤務時間や業務が忙しくて研修ができないことも悩みでしょう。
<充実した設備を整えられるか否か>
最低限の条件をクリアしたとしても、それだけで満足できるグループホームの運営ができるわけではありません。
住居のさまざまな設備に関しても、最新式で便利なものをすべてそろえるのは難しいでしょう。予算や運営費を考えながら、まず改善が必要な設備から整えていくしかありません。
これをするには、責任者が常日頃から入居者やスタッフたちとしっかり接点を持って、何が必要なのかを把握することが重要となります。
【入居者に関する悩み】
入居者が障害を持つ人たちであるだけに、予想外の行動もあります。その内容によっては、管理体制が問われることにもなりかねません。
<行方不明>
たとえ人員的に充実したグループホームだとしても、スタッフが24時間入居者の側にいられるわけではありません。時には入居者が外に出てしまい、行方不明になることもあります。
この場合、スタッフたちが探しに行ったり、見つからない場合は安全を考えて警察に捜査願いを出すことも必要となってきます。
<暴力行為>
暴力行為は、本人の機嫌が極端に悪い場合に起こりえます。
その矛先は同じホームにいる他の入居者やスタッフ、時には通行人などの第三者に向けられることもあります。
暴力行為に走りがちな入居者に対しては、常に注意が必要です。
<迷惑行為>
大きな声を出す、器物を壊すなどの入居者の迷惑行為が続くと、グループホーム内の人たちとの関係も悪くなってしまいます。
迷惑行為はなるべく止めるようにすることと、他の利用者たちにある程度の理解をお願いすることも大切でしょう。
<スタッフによる虐待行為>
世話人などのスタッフによる障害者への虐待行為が多発していることに鑑み、2012年(平成24年)に障害者虐待防止法(正式名称「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」)が施行されました。
(1)身体的虐待行為
・殴る、蹴る、つねる、食べ物や飲み物を無理矢理口に入れる。
・身体拘束(やむを得ず行う場合は除く)。
(2)心理的虐待行為
・侮辱する言葉を浴びせる、怒鳴る、悪口を言う。
・人格を貶めるような扱い、無視、侮辱的発言をする。
(3)性的虐待行為
・性交、性器への接触、性的行為の強要、裸にする。
・本人の前でわいせつな言葉を言う、会話をする。
・わいせつな映像を見せる、更衣室やトイレを覗く、映像や画像を撮影する。
(4)放棄・放置行為
・食事や水分を十分に与えない、汚れた服を着させたままにする。
・排泄の介助をしない、髪、爪が伸び放題のまま、室内の掃除をしない、病気やケガをしても受診させない。
・虐待を受けているのを知っても放置する。
(5)経済的虐待行為
・年金や賃金を本人に渡さない、同意なしに預貯金や財産を運用、処分する。
・日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない。
これらの行為があった場合には法的に加害者が罰せられます。
グループホームとして虐待の早期発見に努めることと、事業所、スタッフによる虐待発見時の通報が求められます。