災害の現場から学んだこと。片付けは「命と尊厳を守り、助け合いを支える」ためのもの

弘瀨美加

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テーマ:シニア世代の心身の特性に配慮した整理収納



約10年前に「高齢者の心身の特性」を一緒に学んだ大切な友人がいます。
先日、その友人から「母が雑誌でみかさんの片づけ記事を読んでいたよ」と嬉しい知らせをもらいました。それがきっかけで、ご縁に感謝しながら私の著書をお母様へプレゼントさせていただいたのです。
その出来事から久しぶりに友人とじっくり話す機会があり、友人が最近、災害ボランティアとして被災地の現場へ赴き、片付けや泥掻きの支援活動をしてきたという話を聞かせてもらいました。
友人が現地で見て、感じてきたリアルな体験談は、私が日頃お伝えしている「整理収納」の本当の価値を改めて深く考えさせられるものでした。

■被災地で直面する「要不要の判断」の難しさ
友人が訪れた被災地は、どちらも広々とした大きなお家が多い地域でした。
スペースが広い分、「捨てる」という選択を迫られることなく、何十年分ものモノが蓄積されていたそうです。
そこへ突然襲いかかった地震や豪雨。
泥まみれになり、ホコリやカビが充満する過酷な環境の中で、生活を続けざるを得ない高齢者の方々が多くいらっしゃいました。
特に、ご夫婦のどちらかが認知症を患っていたり、介護度が高かったりする場合、「これは要るモノか、要らないモノか」を突然その場で判断するのは、心身ともに非常に大きな負担になります。
水害の現場では、ただ泥を掻き出すだけでなく、床置きされた大量のモノを「分別して移動させる」という事前の作業に、膨大な時間と体力が削られてしまうのが実情です。

■「突然の手放し」がもたらす心の傷
友人がある高齢のご夫婦(ご主人は認知症で杖歩行)の家で、水に浸かった畳の部屋を乾かすために、モノを別室へ移動させていたときのことです。
倉庫のようになった部屋には、何代も前の古いテレビや多量の家電、5セット以上の来客用布団などが眠っていました。作業の終盤、駆けつけたお子様がその布団の山を見て、「うちらはここには泊まらないから、全部処分して」と言ったそうです。
結果として、移動させたモノはすべて廃棄することになりました。
もしお子様が来なければそのまま残ってしまい、次の災害時のリスクになっていたかもしれません。しかし、お母様は「突然やってきた子どもに家の中をひっかき回された」と感じ、涙を流されていたそうです。
このお話を聞いて、私は胸が締め付けられる思いがしました。
体力が落ち、認知機能にも変化が現れやすい高齢期において、自分のペースを無視して突然すべてのモノを手放せと言われることは、心の整理が追いつかないほどのショックを与えてしまうのです。





■災害ボランティアの現場から学んだ、2つの大切なこと
友人はこの経験から、
1. 自分の手で管理できる数におさめること
2. 廃棄は、自分の意思と判断ができるうちにやりたいということ
を強く学んび、私の本を被災地の方々にもっと知っていただきたい。きっと大活躍すると言ってくれました。
拙書のことはさておき、友人が学んだことは、本当にその通りだと痛感します。
被災するというだけでも心身ともに窮地に立たされ、混乱している中、さらにモノの処分という重い決断を迫られるのは酷なことです。だからこそ、「もしも」が訪れる前の、穏やかな日常の中で少しずつ備えておくことが何より大切になります。

■今日からできる、命と心を守る整理収納
実は、私も以前、田舎に嫁いで義理の祖父母と暮らしていた頃に、台風で川が決壊し、景色が一瞬で泥の灰色に変わる恐怖を経験しています。
だからこそ、日頃からブログや講座でみなさんに強くお伝えしていることがあります。
・床にモノを置かない(特に避難経路となる通路は徹底する)
・大切なモノ、処分に迷うモノ、必要なモノを、元気なうちに少しずつ分けておく
「床にモノを置かない」
これだけでも、いざという時の避難のしやすさは劇的に変わります。
さらに、日頃から少しずつモノを整理しておくことは、万が一の時に駆けつけてくれるボランティアの方々の労力を大きく軽減することにも繋がります。作業がスムーズに進めば、その分、もっと困っている他の被災者の方を助ける力へと循環していくのです。

■片付けが持つ本当の力
今回の友人との話を通じて、確信したことがあります。
片付けは、単に「家をきれいにするため」や「見た目を整えるため」だけのものではありません。
大切な人の命を守り、自分の意思と尊厳を守り、そして周りの助け合いの力を支えるためのものです。
自分の意思で動けるうちに、少しずつでもモノを整理しておくこと。それは、未来の自分を助け、家族の負担を減らし、ボランティアの方々の力にもなるという、最高の「優しさの循環」を生み出します。
一気にやる必要はありません。
「これからの大切な暮らし」のために、まずは今日、廊下や足元のモノをひとつ片付けることから始めてみませんか?
あなたの暮らしが、いつでも安心して過ごせる場所でありますように。

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Mybestpro Members

弘瀨美加
専門家

弘瀨美加(講師)

comfy living

在宅介護経験者だから伝えられる実践的な整理収納スキルに強み。高齢者の心身の特性に配慮した収納のテクニックで安全で安心な住環境の整え方を提案。介護する人される人、双方の気持ちの負担も軽くなるよう努める。

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