本音と気遣いの間で葛藤——親世代の本音に寄り添う片づけの仕事

弘瀨美加

弘瀨美加

テーマ:シニア世代の心身の特性に配慮した整理収納



「一人で暮らすより、施設に入った方が安心なのではないか」
「何かあった時、すぐに対応できる方が親のためだと思う」
年老いた親を想うからこそ、
そう考える子世代の気持ちは、とても自然なものだと思います。

一方で親世代は、
「まだ住み慣れた我が家で暮らしたい」
「施設に入れるのは、子が楽をしたいから」
そんな思いを抱えながら、
言葉にできずにいることも少なくありません。

互いを思いやる気持ちがあるからこそ、
その想いがすれ違い、親子喧嘩になってしまう。
子世代の私自身、どちらの気持ちも分かるからこそ
、簡単に答えが出せない難しい問題だと感じています。

その人を取り巻く背景や環境は一人ひとり違います。
だからこそ、「どの選択が正しいか」を他人が決めることはできません。

実際には、
「家族に迷惑をかけたくない」という思いから、
本当は住み慣れた家で最期まで暮らしたいと願っているのに、
本音を言えないまま施設に入られる方も多くいらっしゃいます。
その本音と気遣いの間で葛藤しているのだと思います。

これまでの経験から、私は、片づけの時間が、
モノだけでなく、その方の気持ちも
一緒に整理する時間だと思っています。
家の中を整え直すことで、
「本当はどうしたいのか」
「何が不安なのか」
そんな思いが言葉になることがあります。

そのために何より大切なのは、
ご本人にしっかりと寄り添い話を聴くこと。
評価も、誘導も、結論も求めない、
本音が言える雰囲気を守ることです。
不安な言葉を口に出し、誰かに受け止めてもらうことで、
不安やストレスは少し軽くなります。
だからこそ、
本音を安心して話せる雰囲気づくりも必要だと感じています。

住み慣れた家で暮らし続けることも、
次の場所へ移ることも、
どちらも「その方の選択」です。
これからも、ご本人が、自分の気持ちに納得しながら
次の一歩を考えるためのお手伝いをしていけたらと思います。

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弘瀨美加
専門家

弘瀨美加(講師)

comfy living

在宅介護経験者だから伝えられる実践的な整理収納スキルに強み。高齢者の心身の特性に配慮した収納のテクニックで安全で安心な住環境の整え方を提案。介護する人される人、双方の気持ちの負担も軽くなるよう努める。

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