緊張のお役目
年を重ねたけれど、まだ、アクティブに動けて、
問題なく生活できている間は気付かないけれど、
年齢とともに徐々に進んでいる身体機能の低下や、
連れ合いさんが亡くなって一人になったなどから、
小さな不便や不自由からアクシデントが起こりだします。
そうすると、心身が弱り、活動意欲が減退していきます。
そんな、不便や不自由を抱えていても、
行政のサービスは受けたくない、
やはり子には迷惑をかけたくないという思いから、
お一人で暮らしている方も少なくありません。
連れ合いさんを亡くされて2年目のAさんは、
ご主人を失った喪失感から、活動意欲が低下し、
それまでは、食事の支度や、掃除、洗濯と、
毎日にきちんとされていましたが、
「どうせ一人だし・・・」という思いから、
徐々に家事をすることが億劫になってきて、
家の中も荒れてきました。
また、これまでの習慣なのか、
ひとり暮らしには必要ではない食材や日用品を買う、
着ていない値札のついたままの洋服も、
そこらに置きっぱなしになっているような状態で、
ご夫婦で暮らしていた頃より家の中に随分とモノが増えて、
歩くのも、それらを避けながらといった状態で、
まるで、ご主人を失った喪失感をモノで埋めるかのように思えました。
ご主人の思い出話をじっくりと聞きながら、
ゆっくりではありますがAさんのペースで、
家の中は片付けることができて、
少し前向きになられたAさんに私から、
お住まいの近くに頼れるお友達を作ることを提案しました。
お家の中を安心・安全・快適にするには、
片づけでモノの処分、移動だけでなく、お気持ちの整理も必要です。
前向きな気持ちにならないとできるものではありません。
これまで、日常の生活でも、ご主人を頼りにされていたので、
突然に良く使う電化製品が動かなくなった、
家具を動かそうと思ったけれど自分では重くて動かせない、
高い所の照明の交換ができないなどなど・・・
ちょっとしたことで困ることも多くなってきたけれど、
それを聞いてくれる人、どうしたら良いか教えてくれる人、
助けてくれる人がおらず、どうしよう、どうしようとパニックになって、
そのあげく諦めてしまって活動意欲を失っているように
片づけの時のお話中から感じたからです。
一歩踏み出してみるというのは、物凄く勇気のいることだと思います。
けれど、その一歩がないと、Aさんの望む、遠くに住む子に迷惑をかけないで、
住み慣れた我家で自立した生活を続けるということが、
この先、もっと難しくなってきます。
提案後、以前に知り合いに誘われたサークルに行ってみると仰ったAさん。
「ちょっと手伝って」と助け合えるお仲間が増えますように。