アンチエイジングを考察する(Ⅰ)
なぜ、今アンチエイジング医学(抗加齢)なのか?
日本人の平均寿命は、1945年のおよそ50歳から、30年後の1985年におよそ80歳へと延伸しました。これは先進諸国の中で最も顕著でありますが、背景には日本の医学の進歩、衛生環境の改善、医療の発達、栄養の改善などの要因が大きく影響しています。平均寿命は延び続け、女性は平均寿命90歳という時代ももうすぐです。
更に100歳以上の人口が、右肩上がりで近年では毎年5000人以上増加しています。まさに超高齢化時代に突入しています。
2008年4月に始まった、後期高齢者医療制度(通称・・長寿医療制度)に見られるように、現在高齢者の健康保持が国家的な課題となっており、アンチエイジング医学は社会の経済効率を考える面でも大変重要になってきます。
厚生労働省推計は、2020年に医療機関に支払われる医療費の総額(国民医療費)が、予算ベースで40兆6000億円と過去最高になったと発表しています。社会保障費は一般歳出の半分に迫り、高齢化は今後加速度的に進むことから、医療費の増大は計り知れません。
従来の日本の医療政策は、病気になったら国民皆保険がこれを守ります。という疾病治療型の政策です。しかし、国民医療費の増加は留まることを知らず、年1兆円以上の規模で拡大しています。すなわち、病気になってから治していたのでは、費用もかかり過ぎ、このままでは健康保険制度は破綻することが確実です。少子高齢化により、公的医療保険負担が限界に近づいている現代において、高齢者の多くが健康であればその負担は現状の3分の2程度に抑えられるかもしれません。
そして、65歳が高齢者と呼ばれるような定義そのものが改定され、健康な65歳以上の層が厚くなれば、社会の第一線で活躍し、納税者層となる社会がくるかもしれない。この「かもしれない」ことを支えるのが「アンチエイジング医学」です。そして今、医師、医療従事者のコンサルテーションを通じて、自分自身の老化と寿命に対して予防・ケアをすることに、社会からニーズが高まっています。
アンチエイジング医学は〝加齢〟に集点をあてた予防医学である。
予防医学を考えるときに最も中心的な医学になる可能性を秘めています。