歯科インプラントは誰でも受けられるものですか?
ALL-on-4とは、リスボンの歯科医師Dr. paulo maloにより広く紹介された術式です。歯周病などで歯槽骨の大部分を失った方などに対しインプラント4本を残存骨深く埋入した後、カンチレバーを含む固定性の上部構造(ブリッジ)を装着します。十分な修練を積んだ技工士が的確にプランニングをした仮歯をインプラント埋入前に作りこんでいるため1日でボロボロだったお口の中が変わり、噛めるようになります。
2007年、ポルトガルへ渡りDr. paulo maloのオフィスでのセミナーを皮切りに2009年UCLAで開催されたDr.Peter K. Moyの実習、2011年ラスベガスで催されたDr.Arun.K.Garg(マイアミ大学教授)の学会に参加しました。当時からALL-on-4という名前も特殊技法という位置づけです。「前方部(臼歯にインプラントを埋入しない)4本埋入による遠心部カンチレバーを含むフルアーチ」と表記するとより正確です。
この術式は、一般的に上顎で用いられることが多いようです。上顎は下顎にくらべ骨の喪失が広くなりがちで骨組織再生療法(骨造成)を行う必要が多いことや治療中に使う仮歯が入れ歯のタイプになってしまうことがあります。骨組織再生療法も時間がかかる方法であり、例え一時的であっても入れ歯は嫌だというのが、選択される理由のようです。
ただし、こういった術式はザイゴマインプラント(頬骨インプラント)やその他の「インプラント4本だけ」のものをひっくるめてALL-on-4と呼んでいる場合もあります。前方部に4本埋入するインプラントの場合、まして固定性ともなると慎重に症例選択をする必要があります。ITIによる上顎固定性リハビリテーションの荷重プロトコールをもとに整理します。インプラントが4本の場合、通常の荷重(術後3~6か月後に上部構造セット)であっても「臨床的に検証された(Clinically Documented)」に過ぎず、他のインプラント治療のように科学的にも臨床的にも完全に実証されたものではありません。即日に荷重させる(仮歯が入る)ケースは、プロトコールによれば「臨床的な検証は不十分(Clinically Insufficiently Documented)」となっています。
インプラント治療は変化が激しい領域のひとつと言われてます。2023年ザイゴマインプラントに関する学会レベルでのワークショップ(議論)がスタートしました。文献収集の段階だったものが、その集大成を成すところまできました。一介の歯科診療所としてはそういった文献の議論が成熟してから日々の治療に落とし込んでも遅くはありません。当院としては、治療サービスの提供よりも文献の収集と読み込みを重視していますので、これからもガイドラインに見直しがあれば都度対応していきたいと思います。