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望ましい目標管理制度(MBO)

谷内篤博

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 成果主義が強まる中、目標管理制度は個人や部門の業績を管理するツールとした活用されている。人事評価の客観性を担保する点からもマネジメントの中核をなす仕組みになりつつある。しかし、運用面では様々な問題が出始めている。
 筆者が関わったコンサルティングでも、単なる流行の管理手法として形だけ取り入れたり、個人の目標が自己啓発中心で組織目標との関りがなかったりすることが多々見られた。また、目標ごとに難易度やウエイトなどを使って軽量化するといった事例も多く見受けられた。
 本来、目標管理制度は組織の目標を達成するためのマネジメントシステムであり、個人目標も組織目標との関連性が必要となる。同時に、難易度やウエイトなどによる軽量化を過度に進めると、自己の評価を高めるために個人が目標の優先度や難易度、ウエイトを操作する危険性もある。
 こうした問題点を克服した望ましい目標管理制度のあり方を提言したい。目標管理制度を効果的に導入・展開するには3つのポイントがある。まず1つ目のポイントは、「目標の連鎖体系の明確化」である。組織目標が部門目標に、部門目標が個人目標にブレークダウンされ、個人目標が部門目標や組織目標と何らかの形で関連性をもつことが重要である。目標管理制度はあくまでも組織目標を達成することに主眼が置かれており、目標の連鎖体系は必要不可欠である。
 2つ目のポイントは、「PDCAからRPDCへの転換」である。これまでの目標管理制度は、P(Plan:計画)D(Do:実行)C(Check:評価)A(Action:恒久処置)というマネジメントサイクルで展開されてきた。しかしこれでは目標管理制度は計画倒れに終わってしまい、うまくいかない。今後はPすなわち計画の前に、現状の把握(facts finding)や診断を意味するR(Research)が必要となる。事業のライフサイクルや自社の強み・弱み、競争ポジションなどを的確に分析したうえで目標策定に入ることが極めて重要となる。前年対比や期初対比を中心とする目標は真の目標とはいえない。また、目標が部下のノルマとならないように、目標策定の段階で部下を参画させ、部下と意見交換を行い、お互いが納得するコンセンサス目標にすることが大切である。
 3つ目のポイントは、「三面等価の原則の徹底」である。目標管理制度の考案者のドラッカーは、目標と自己統制(self control)による管理が目標管理制度の本質であるとし、自己統制による目標管理を強調している。自己統制による目標管理を展開するには、三面等価の原則に基づいて、責任-義務-権限の均衡化(バランス)を図らなければならない。
 しかし、実際には多くの企業では、部下に責任と義務のみを課し、権限は上司が握り、自己統制による目標遂行が困難となっている。大切なのは、責任と義務に応じた権限を部下に委譲することがカギとなる。まさに、エンパワーメント(empowerment)の実践である。

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専門家

谷内篤博(大学名誉教授)

 

上場企業の人事部や大手シンクタンクで人材育成や人事制度設計に従事。人的資源管理・組織行動論を専門に大学教員として30年間研究を重ねました。理論と実践を融合させて、人と組織の活性化をサポートします。

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