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あえのこと

山下祐介

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先日、12月5日は「あえのこと」と呼ばれる風習・神事を行う日でした。
この、「あえのこと」ですが、田んぼにいらっしゃる「田の神様」を自宅へお招きして、今年一年の豊作を感謝し、そのご苦労を労う行事です。

「田の神様」に関する風習は、どうやら全国各地でも行われているようなのですが、奥能登の「あえのこと」は、目には決して見えていない「田の神様」を、あたかも見えているかのようにおもてなしをすることから、厳かな雰囲気も感じられる行事です。

まずは、田んぼに行って神様をお迎えするところから始まります。



田の神様は夫婦の神様で、暗い土の中にいることから、目が見えない神様(諸説あり)とされています。
したがって、自宅までお連れするときも、そして、自宅の中でも、神様をご案内するときには、しっかりと手を差しのべてご案内いたします。

自宅にお招きしたら、いよいよおもてなしの始まりです!
お風呂に入っていただき、他の神様のお背中を流します。
もちろん、目には見えていませんが、本当に実在しているかのように接するわけですから、声もかけたりしながら行います。

そしてお食事!もちろん料理でもおもてなしをします。
御膳を用意し、食材等も説明しながら、お酒も飲んでいただき、満足してもらえるようにします。

お迎えする我々は羽織袴の正装でお出迎えをし、御膳の他にも米俵や二又になった大根を用意するなど、とにかく厳かに、そして、目の前に実在しているかのように行う「あえのこと」。昔はお米を作っている家庭なら、どこでも行われていた行事なのですが、今では行う家も少なくなりました。
また、私自身も見様見真似でやっていますし、羽織袴や御膳までは用意できていません。
ですが、一番大事なのは田の神様に感謝をすること!そう思って、自分ができる範囲で行っています(^-^)

「世界農業遺産」は、このような行事も含めて認定されています。
私もまだまだ勉強が不十分なところはありますが、このような行事もしっかりと学び、伝えていきたいと思います!
なお、他の神様は寒い冬を自宅でゆっくりと過ごしていただき、春の足音が聞こえだす2月9日に、また豊作をお願いして田んぼへ送り出します。


あ!余談ですが・・・
私の父は12月5日、まさに「あえのこと」の日が誕生日なので、毎年誕生日は豪華な御馳走を食べることができたそうです(笑)

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山下祐介
専門家

山下祐介(農業)

のと栄能ファーム

当初農業の知識はなかったが、だからこそ従来の方法に縛られず、独自の発想で新しい稲作に取り組むことができた。コストや労力がかかる棚田での米作りを逆に特徴と捉え、他と差別化したブランド米を生産している。

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