つらい頭痛のはり治療、東洋医学のはりと頭痛は意外と相性がいいんです
はじめに
「睡眠時間は確保しているのに、朝から体が重い」
「以前より疲れやすくなった気がする」
こうした相談を受けることが、ここ数年で明らかに増えています。
多くの方は「年齢のせい」「忙しいから仕方がない」と考えがちですが、実際の臨床ではそれだけでは説明できないケースが少なくありません。
睡眠は“量”より“構造”が大切
睡眠は、単に長く眠れば疲れが取れるわけではありません。
人の睡眠は、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)が約90分周期で繰り返されることで、脳と体を回復させています。
この中でも特に重要なのが、深いノンレム睡眠です。
この時間帯には成長ホルモンの分泌が促され、筋肉や内臓、脳の修復が進みます。
ところが、ストレスや生活習慣の乱れがあると、この深い睡眠が十分に確保できず、「寝ているのに回復しない」状態になってしまいます。
自律神経と睡眠の深い関係

睡眠の質に大きく関わっているのが自律神経です。
自律神経は、
日中は交感神経(活動モード)
夜は副交感神経(休息モード)
という切り替えによって、体をコントロールしています。
近年の研究では、慢性的なストレス状態にあると、夜間になっても交感神経の緊張が続き、脳は眠っていても体が十分に休めていない状態になることが示されています。
実際、
寝る直前までスマートフォンを見る
夜遅い食事や飲酒
不規則な生活リズム
といった習慣は、自律神経の切り替えを妨げる要因として知られています。
年齢だけでは説明できない「疲れやすさ」
「年齢とともに眠りが浅くなる」というのは事実の一面ですが、同じ年代でも疲れの残り方には大きな個人差があります。
これは、
血流の状態
ホルモン分泌
神経の調整力
といった体の回復システム全体の働きに差が出ているためです。
特に中高年以降では、睡眠時間よりも「深く休めているかどうか」が体調に大きく影響します。
「検査では異常なし」が続く理由
疲れが取れない人の多くは、血液検査や画像検査では大きな異常が見つかりません。
これは、睡眠や疲労の問題が構造の異常ではなく、機能の低下として現れることが多いためです。
血流の低下
神経調整の乱れ
回復反応の鈍化
こうした変化は数値に表れにくく、見過ごされやすい特徴があります。
鍼灸治療が関わる領域
鍼灸治療は、痛みだけでなく、自律神経機能や睡眠の質に対する研究も進められています。
国内外の研究では、鍼刺激によって
副交感神経活動が高まる
心拍変動が安定する
入眠しやすくなる
といった反応が報告されています。
すべての人に必要というわけではありませんが、生活改善だけでは変化が乏しい場合、体の回復システムに直接働きかける方法の一つとして検討されることがあります。
就寝前にできる簡単セルフケア
睡眠の質を高めるためには、「寝る直前に体を休息モードへ切り替える」ことが大切です。
以下は、臨床でも勧めることの多い、負担の少ない方法です。
就寝前にできる簡単セルフケア
① 寝る90分前の入浴(シャワーだけでも可)
人は、体温が下がる過程で眠気が強くなることが知られています。ぬるめ(38〜40℃)のお湯に10〜15分ほど浸かることで、その後の体温低下がスムーズになり、入眠しやすくなります。
② 呼吸を「長く吐く」意識を持つ
自律神経を整えるには、吸うことよりも「吐く呼吸」が重要です。
布団に入ってから鼻から4秒吸う、
口または鼻から6〜8秒かけて吐く
これを5回ほど繰り返すだけでも、体が休息モードに切り替わりやすくなります。
③ 首・足首を冷やさない
首元や足首は、血流と自律神経の調整に関わる部位です。冷えると体が緊張しやすく、眠りが浅くなる原因になります。
首元を冷房の風に当てない
足首が冷える人は薄手のレッグウォーマーを使う
といった小さな工夫が、睡眠の質を左右することもあります。
セルフケアの位置づけ
これらはあくまで体を休めやすくするための土台作りです。セルフケアを続けても改善が乏しい場合は、
体の回復システム自体がうまく働いていない可能性もあります。
睡眠管理にスマートバンド・スマートウォッチを活用するという選

最近では、スマートバンドやスマートウォッチを使って
睡眠の状態を“見える化”する方が増えています。
これらの機器は、主に
心拍数
体動
心拍変動(HRV)
といった生体データをもとに、
睡眠時間や睡眠の深さ、途中覚醒の有無などを推定しています。
医療機器ではありませんが、「自分の睡眠の傾向を把握する」という点では、非常に有用なツールです。
たとえば、
実際には思っているほど眠れていない
夜中に何度も覚醒している
休日と平日の睡眠リズムが大きく崩れている
といったことは、感覚だけでは気づきにくいものです。数値やグラフで確認することで、生活習慣や体調との関連を客観的に振り返ることができます。
また、臨床の現場でも「睡眠時間は十分なのに疲れが取れない」と訴える方ほど、実際には深い睡眠が少ない傾向が見られることがあります。
スマートデバイスは、診断の代わりになるものではありませんが、
生活改善やセルフケアの効果を確認する“目安”として活用するには十分役立ちます。
使うときの注意点
一方で、注意しておきたい点もあります。
数値はあくまで「推定値」である
日による誤差が大きいこともある
データに一喜一憂しすぎると、かえって睡眠の質を下げることがある
大切なのは、1日の結果ではなく、1〜2週間の傾向を見ることです。
「良い・悪い」を判断するためではなく、「自分の体のクセを知るため」に使う、この距離感が重要です。
鍼灸治療との相性について
睡眠や疲労の問題では、スマートデバイスで
生活リズム
睡眠の傾向
を把握しながら、
体の回復力や自律神経の働きにアプローチする方法を組み合わせることで、
変化を実感しやすくなるケースもあります。
「感覚」だけでなく「客観的な指標」があることで、体の変化を冷静に確認できる点もメリットと言えるでしょう。
一般の方におすすめしやすい機器
スマートデバイスを初めて使う方を対象としています。「睡眠管理が目的」「操作が難しくない」「価格が現実的」という視点で選んでいます。
① Fitbit シリーズ(Charge / Inspire など)
特徴
睡眠記録が見やすい
心拍変動(HRV)を指標として表示
操作が比較的シンプル
向いている人
初めて睡眠管理をする方
数字やグラフをざっくり確認したい方
② Garmin(Vivosmart / Venu など)
特徴
心拍・ストレス・睡眠の連動が分かりやすい
「Body Battery」など回復度の指標がある
睡眠と日中の活動の関係を見やすい
向いている人
睡眠と疲労の関係を知りたい方
軽い運動習慣がある方
③ Apple Watch(睡眠管理アプリ併用)
特徴
心拍・呼吸数・睡眠時間の記録が可能
医療系アプリとの連携が豊富
すでにiPhoneを使っている人には導入しやすい
向いている人
すでにApple製品を使っている方
健康管理全般を一括して見たい方
機器選びのポイント
高価なものである必要はない
睡眠時間と途中覚醒が分かれば十分
「続けられること」が一番大切
バッテリー持ちの良いもの
それぞれのデバイスに連携したアプリをスマホにインストールして使います。アプリには測定した健康情報が表示されるだけでなく、改善のための提案が表示されるものもあるので参考にするとよいでしょう。
まとめ
「しっかり寝ているのに疲れが取れない」という状態は、睡眠時間の問題ではなく、体が十分に回復できていないサインであることが少なくありません。
年齢や気のせいで片付けてしまう前に、睡眠の質や体の調整力に目を向けることが、不調改善への第一歩になる場合もあります。
体の状態を丁寧に整えていくことで、朝の目覚めや日中の過ごしやすさが変わってくる可能性は十分にあります。
睡眠や疲労の問題は、検査では異常が見つからなくても、体の働きがうまく調整できていないことで起こる場合があります。
生活を見直しても改善しない、理由がはっきりしない不調が続く場合には、体の状態を丁寧に確認することが大切です。
当院では、睡眠や慢性的な疲れに対して、体の反応を見ながら無理のない方法で整えていくお手伝いをしています。
しかし、睡眠障害の中には、体の調整では対応できない病気が隠れていることがあります。特に、いびきや無呼吸、気分の変化、神経症状を伴う場合は、医療機関での評価が不可欠です。鍼灸はすべての睡眠障害に適応するわけではなく、医療と適切に役割分担することが重要です。
気になることがあれば、一度ご相談ください。




