長引く肩の痛み、五十肩との付き合い方教えますー50肩と鍼灸治療ー

中田和宏

中田和宏

テーマ:健康とはり




はじめに






 五十肩という病名は肩関節周囲炎のことで、英語ではfrozen shoulder(凍結肩)と言われます。江戸時代、福山藩の漢学者太田全斉が著した国語辞書、『俚諺集覧(りげんしゅうらん)』に「人、五十歳ばかりの時、手腕、骨節の痛むことあり、程すれば薬せずして癒ゆるものなり、
俗にこれを五十肩という。または長寿病という。」とあります。当時の平均寿命が50歳台だということを考えると「いよいよオレも終わりか!?」的な症状です。

五十肩の症状と原因について






 五十肩とは、肩の痛みや運動制限が起こる病気です。主に50歳以上の人に発症し、女性に多く見られます。五十肩の原因は明確には分かっていませんが、炎症や肩関節の運動制限を起こす筋肉や関節の異常が原因とされています。
 症状は大きく3つの時期に分かれます。
 最初は炎症期です。発症から約3カ月の間、肩関節に炎症が起こります。最初は肩を動かしたときの痛みから始まり、どんどんひどくなっていくと動かしていないのに痛みや疼きがあり、最悪になると夜中も痛みが続き眠ることが困難になります。
 続いて拘縮期が訪れます。炎症期の最後の方と重なって肩が上がらなくなります。痛みでも上がらないし事実半分から上に固まったかのように上がらなくなります。関節周囲の組織が炎症によって拘縮を起こすためです。無理に肩を上げようとすると激痛に見舞われます。それがおよそ3カ月から半年続きます。
 最後は回復期です。動かさなければ痛みはなく、動かしても耐えられる程度の痛みとなります。積極的に運動やリハビリを行うと早く回復する時期で、おおよそ生活に支障が出ない程度の可動域に戻るのに2~3か月かかります。
 それぞれの時期によって対応が変わってきます。炎症期に温めると痛みは強くなり、拘縮期にシップを貼って冷やすと痛みが強くなる、というようにです。
 五十肩は複雑な病気です。

五十肩ではない、肩の痛み




 肩が動く腕が上がる肩の痛みは筋肉の問題と肩甲骨の動きの問題が原因です。これなら早いうちに鍼灸治療で改善が見込めます。
 また、腱板損傷(断裂、不全断裂を含む)という病気があります。肩を上げるためのすじが傷ついている、または切れてしまった場合をいいます。MRIで肩の中を調べてもらい傷がないかを確かめなければなりません。最悪手術の適応となる場合があります。肩の痛みや腕が上がらないという症状があったら専門病院で検査を受けてください。
 肩が痛い、上がらない、上げにくいという症状は軽いのもあれば重症もあるということを知っておいてください。

鍼灸治療とは?




 鍼灸治療は、東洋医学の一種であり、細い針を皮膚に刺したり灸をすえたりして、経絡(けいらく)と呼ばれる気の流れる通路を刺激することで、身体の自然治癒力を高める治療法です。このような古来から行われている伝統的な施術方法のほかに、解剖学や生理学を利用した現代医学的発想から施術する方法があります。
 筋肉や筋膜は動かすことで全身をつなげており、五十肩と言っても腰や足が関係していることがあります。アナトミートレインという概念を利用することで治療に役立てることが出来ますし、結局のところ経絡や経筋と言った東洋医学の概念に通じます。
 それぞれの方法をうまく使い分けて治療します。

鍼灸治療が五十肩に効果的な理由とは?




 鍼灸治療は、身体の自然治癒力を高め、血流を改善することができます。五十肩の症状には、肩の痛みや運動制限がありますが、鍼灸治療によって、これらの症状を緩和することができます。
 病気の時期を判断してそれに応じた対応をしていきます。生活状況やお仕事の状態、ストレスや嗜好品でも影響を受けて回復までの期間が変わってきます。
 つまり肩の症状がいきなり出たわけではなく、長年積み重ねた疲労やストレスがちょっとしたきっかけであらわれたということです。

鍼灸治療の安全性について


 鍼灸治療は、代替医療の一つであり、副作用が少ないため、安全性が高いとされています。ただし、施術中に使用する器具が消毒されていることを確認する必要があります。
 当院では清潔な環境を提供するため、術者の手指と患部の十分な消毒と器具の消毒を行い、使い捨ての鍼灸鍼を使用しています。
 セイリン(株)製ディスポーザブル鍼と、お灸は(株)山正の長生灸レギュラーを使用しています。刺すときの痛みがなくしっかりとツボや筋膜にあてることのできる鍼と、熱さを調整できるお灸を使うことで、患者様の負担を減らし快適に治療を受けることが出来ます。

鍼灸治療を受ける際の注意点とは?




 鍼灸治療を受ける際には、一般的に以下のような注意点があります。
 施術者だけでなく、患者様の協力が必要でもあります。当院では十分配慮をして施術を行っていますので、ご心配な点がありましたら申し出てください。

〇鍼灸師が国家資格を持っていることを確認する


 「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師免許」というのが免許の種類です。厚生労働大臣免許で、3年以上の専門学校で勉強したあと国家試験に合格する必要があります。その後、業団体や学会などで卒後研修を受けながら施術を行います。
 当院の院長は4年生の明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)の3年時に免許取得し大学付属の鍼灸治療室で施術を行いつつ京都府立医科大学で見学実習をしました。そして金沢市の財団法人東洋医学臨床研究所に入所、附属鍼灸治療室で施術と研究を行って20年前に当院を開業しました。
 免許を確認するための「厚生労働大臣免許保有証」は受付うしろの壁面に掲示してありますし、ご希望なら免許証を提示いたします。
厚生労働大臣免許保有証について

〇鍼灸治療に使用する器具が消毒されていることを確認する




 鍼は使い捨てです。他の患者さんと使いまわしは致しません。鍼皿もプラスチック製の使い捨てです。皮膚消毒に広く使われているイソプロピルアルコールを使って患部を消毒します。施術者の手指消毒は石鹸で洗います。施術直前は刷り込み式消毒薬ハンドサニターSを使用します。

〇鍼灸治療を受ける前に、自分の健康状態を正直に伝える


 施術前に症状の確認とともに健康状態もお聞きしています。もし、体調が悪い場合やいつもと違いがある場合には必ずお話しください。

〇鍼灸治療中に違和感や痛みを感じた場合は、鍼灸師に伝える


 「はりが痛かったり気分が悪かったらすぐに言ってください」、「お灸をしますので熱くなって我慢できないようならおっしゃってください、お灸を取り除きますよ」というふうに施術前にお伝えしています。

〇鍼灸治療を受ける前に知っておきたいことは?


 五十肩は放っておいたら長く続く病気です。どのぐらいの期間施術を受ければ改善するのかなど、知りたいことがいっぱいあるでしょう。ケースバイケースなのであなたの五十肩について施術前と後で説明させていただいています。
 病気のこと以外でも知りたいことがあればお話しください。

〇鍼灸治療の流れや施術内容を理解しましょう


 施術の流れについても施術前にご説明してから始めます。その施術の目的や効果についても同様です。

〇鍼灸治療の効果や副作用について調べる


 鍼灸治療の効果で一番多いのは痛みの軽減です。五十肩のつらい夜中の痛みやちょっとした動作で起こるうずくまるような激痛を軽減させる一つの方法として鍼灸治療があります。
 副作用でよく言われるのが術後のだるさです。刺激をしているわけですからある程度のだるさは覚悟しておいてほしいので施術前にご説明しています。必ずだるくなるわけではありませんのであまり心配しない方がよいでしょう。だるくならない程度で最大限の効果を出すよう施術を行います。
 次に多いのが皮下出血です。鍼を刺すことで皮下の毛細血管から出血し皮膚が膨隆(もりあがる)することがあります。そうなった場合には圧迫して絆創膏を貼付します。絆創膏は夜お風呂に入るときにはがして捨ててください。皮下出血はたまにしか起こりませんが、血液サラサラのお薬(ワーファリンなど)を飲まれている方や高齢者に多く起こるようです。使用しているお薬のこともお伺いしています。

〇鍼灸治療を行う施設の信頼性や評判を調べる




当院の信頼性や評判についてはマイベストプロ石川以外に

グーグルマップ

エキテン!

健康にはり

などで確認できます。

鍼灸治療を受けるメリットは?


 新型コロナの蔓延以降、免疫力を高めた生活が大事と言われています。薬を使わずに、身体の自然治癒力を高めることができるのが鍼灸治療です。特にお灸には免疫力を高める効果が高いことがさまざまな研究・実験で証明されています。
 痛みや運動制限が緩和され、生活の質が向上するので五十肩の症状の改善に役立ちます。また、副作用が少なく、安全性が高いことも特徴です。



鍼灸治療が合わない場合は?


 鍼灸治療が合わない場合は、以下のような症状が現れることがあります
 めったに起こらないことではありますが、過去20年間で数名に以下の症状がありました。

〇アレルギー反応がある


 鍼を刺入した部位が直径1cm以上に赤く腫れあがることがあります。時間がたつと消えていきます。それによって体調の異変が起こるということはありませんので多くはそのまま施術を続けますが、中には気にする人がいますのでその時は施術を中止いたします。おそらく金属アレルギーと思われます。

〇施術中に違和感や痛みが強く、治療を続けることができない場合


 病状が悪化しているときで鍼灸の効果が及ばないことがあります。歩けない、横になって施術が出来ない、施術に強く抵抗する。施術が出来ない場合は中止いたします。

〇五十肩以外の病気や症状がある場合は、鍼灸治療が適切でないことがある


 五十肩を訴える方の中に重度の糖尿病や高血圧をお持ちの方がいます。内科での治療が優先されます。また、肩の痛みの中には前述した腱板断裂や石灰沈着腱板炎など外科的治療やお薬の治療が必要な場合があります。その際は適切な病院に紹介いたします。

自宅でしてもらうこと


 鍼灸治療に毎日来てもらうことはありません。毎日施術しても週1回しても効果に差はありません。自宅でできるセルフケアをご紹介して、施術と併用してもらっています。五十肩の時期に応じたセルフケアをすることで改善までの道のりが短くなりますし、痛みで悩まされることが少なくなります。
 五十肩の経過としては痛くなってすぐの軽症のものは週2回で1カ月程度の施術で痛みが取れますし、夜中の痛みや安静時の痛みがある中等症は3か月(施術回数は個人差があります)、肩が痛くて上がらない重症のものは半年程度とお考え下さい。
重症のものの中には鍼灸治療が適応しないものもありますので、その時はご説明いたします。

まとめ




 五十肩は、肩の痛みや運動制限が起こる病気であり、鍼灸治療は、身体の自然治癒力を高め、血流を改善することができます。鍼灸治療を受ける際には、注意点や知っておくべきことがありますが、副作用が少なく、安全性が高いため、五十肩でお悩みの方には、ぜひ一度受けていただきたい治療法です。

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中田和宏
専門家

中田和宏(鍼灸師)

トキの森鍼灸院

鍼灸師として30年以上、体と心のさまざまな悩みに対応。一人一人に丁寧に向き合い、全身の状態を見極め、問題の原因を探ります。腰の痛みや肩こりなどを多く扱い、ストレスによる不安や不妊の悩みにも対応。

中田和宏プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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