過敏性腸症候群のつらい下痢にお灸をためしてみては?治療院ですることとお家でできること

中田和宏

中田和宏

テーマ:つぼなかぢのホントにあった話



アルコール消毒が効かない?!






 先日ワイドショーで「アルコール消毒だけではダメ、アルコールで死なないウイルスがいる!」という内容のお話をしていました。新型コロナウイルスに対しては濃度70%以上95%以下のエタノールが有効です。(注1)皆さんさかんに「シュッシュ」してます。当院でも来院時と退出時にはお客様にシュッシュをお願いしています。もちろん私とスタッフも随時シュッシュしています。
 擦り込み式手指消毒剤は霧状に噴霧される様子からシュッシュと言われるようになりました。とにかく店舗に入るときと出るときにはこの作業と体温測定が必須となりました。
 まだしばらくこの儀式は続くと思われます。
 アルコールが効かないウイルス。もしかして変異株?とあわてないでください。昔からいるウイルスでアルコールでは死滅しないヤツがいます。冬になると増える感染性胃腸炎のウイルスです。代表的なものはノロウイルスやロタウイルスです。
 冬になるとこいつたちが猛威をふるいます。食品から感染したり、ものを介して感染します。手についたヤツらが口から入ることが多いようです。
 ではどうやって消毒をしたらよいかというと石鹸と水で洗い流すのが一番です。手洗いは新型コロナウイルス感染症対策としても有効です。
 シュッシュすれば手を洗わなくてもよい、なんてことはありません。しっかり手洗いそしてうがいをしましょう。

胃腸と鍼灸の関係




 11月28日に開催された(公社)石川県鍼灸マッサージ師会主催の県民公開講座には多くの方がオンラインで参加してくださいました。改めてお礼申し上げます。「食と健康から考える未来の石川健康人~石川の伝統食×鍼灸マッサージ×栄養~」というテーマで発酵食品の製造と栄養、体に及ぼす影響と鍼灸の効果について3人のパネリストにお話ししていただきました。
 その中で古くから鍼灸が胃腸の不調の改善に用いられてきたこと、研究で効果が実証されていることなどが紹介されました。(注2)

松尾芭蕉とお灸




 松尾芭蕉の『奥の細道』の序文には「道祖神のまねきにあひて取もの手につかず、もゝ引の破をつヾり、笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより~」とあります。旅の初めに「足の三里」というツボにお灸をすえたのは足を元気にすることに加えて胃腸を元気にしておけば道中問題なく過ごせるという意味があります。「足の三里」というツボにお灸をすえると足が軽くなりと同時に胃が活発に動き出すことが分かっています。



慢性の下痢で毎朝が大変

 
 70歳代の男性、主訴は下痢です。若いころからおなかが弱く年をとってきて最近ひどくなってきました。病院では過敏性腸症候群と診断されました。朝食後に下痢が続きます。出きってしまえば何ともないのですが、出きるまでに何度もトイレに行かないといけないのと、おなかが痛くてつらいとのことでした。
 そして若い方に多い過敏性腸症候群。通勤電車で大変な思いをされている方がいると聞きます。



過敏性腸症候群


 通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群です。 腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられています。腸が精神的ストレスや自律神経失調などの原因で刺激に対して過敏な状態になり、便通以上を起こす病気です。(注3)

鍼灸で経絡のバランスを整えること




 この方は下痢といっても頻繁ではないし便秘と下痢を繰り返していないので、どちらかと言えば軽症です。
 東洋医学的診察を行いました。脈診と経絡診をしました。経絡は足厥陰肝経の虚と見立てて交感神経が頑張りすぎている状態と考え、お灸を中心に治療することにしました。
 東洋医学では内臓の名称を使って体の状態を考えて治療します。「肝」と言っても現代の医学でわかっている肝臓とは少し意味が違います。そして臓器に関係した経絡が体の表面を走っていて、その臓器の弱りや頑張りすぎが経絡に現れると考えています。



 この方の場合、肝のはたらきが弱っているため腸のコントロールがうまくいかない状態なので、肝につながる足厥陰肝経にお灸の治療をするということです。
 弱っているところを元気にし、頑張りすぎているところを落ち着かせる、それが東洋医学でいうバランスです。
 まず、体全体の緊張をとるため接触鍼(触れるだけで刺さない鍼)でおなかをさっと治療し、すねのツボに鍼とお灸をしました。



 そしてうつぶせになってもらい足太陽膀胱経の肝兪、脾兪、腎兪、大腸兪などのツボに半米粒大5壮でお灸をすえました。
 半米粒大とは米粒を縦に半分に割った大きさのことです。壮とはお灸を一回すえること。5壮なら5回すえたということです。
 こんな感じで3回治療を続けた結果、朝のおなかの痛みや違和感、そして下痢が起こらなくなりました。

お家でできること


 日常生活ではからだ(特に足)を冷やさない、脂っこいものを控えるなど気を付けて生活してもらいました。
 自宅でお灸をするとより効果的です。お灸をするツボは人によって違いますが、過去のコラムで紹介した「三陰交」は最も効果的です。



 お灸はドラッグストアやAmazon、楽天にも取り扱いがあります。一人でできる簡単なもので、せんねん灸や長生灸などの商品名で販売されています。
 お灸のすえ方ですが、とにかく我慢しすぎないこと。熱さを感じたら取っても大丈夫です。最近の製品はやけどの心配がほとんどなくなりましたが、我慢しすぎるとそれがストレスとなり続けてする気持ちがなくなります。
 一日一回、ふろ上がりや寝る前にするのがよいでしょう。
 お灸ですからもぐさに火をつけると煙が出ます。煙のにおいが気になる方がいるかもしれません。

すっかり良くなりました




 3か月後には、1カ月に一度軽い下痢があるだけになりました。治りきったわけではありませんが下痢の回数が激減したことは患者さんの生活の質を向上させる効果があったといえます。
 鍼灸単独の効果だけではなく鍼灸によってお薬が効きやすくなったとも考えられます。とにかく患者さんが楽に生活できるようになってもらうことが鍼灸治療の目的です。

過敏性腸症候群でお困りの方へ


 鍼灸治療をしてみませんか。過敏性腸症候群がストレスや自律神経失調症に関係しているのであれば、鍼灸治療の効果が期待できます。
 当院では院長つぼなかぢの40年来の経験と知識をもとに患者さん一人一人に合った治療計画を立て、つらくない施術で改善を目指します。
 お電話でご予約の際は、マイベストプロを見たとお伝えください。

注1:新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
注2:全 日本鍼灸学会雑誌51巻4号「内臓痛 ・消化器機能 ・消化器症状 に対する鍼灸の効果」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/51/4/51_4_466/_pdf
注3:e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-079.html

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中田和宏
専門家

中田和宏(鍼灸師)

トキの森鍼灸院

初診時のカウンセリングでどんな状態か明確にし、できることを説明します。施術計画を立てて最適な施術を提供します鍼灸治療にたずさわって約40年のベテラン鍼灸師が優しく対応しますお困りならまずご相談を!

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