こんなに練習しているのにうまく書けないのはなぜ⁈ペン字のNG練習法

髙橋空晃

髙橋空晃

テーマ:練習

「心機一転、字をきれいに書きたい」と思い立ち、市販の練習帳を買ってひたすら書き進めてはいませんか?あるいは、SNSで見かける美しい手書き文字に憧れて、毎日欠かさずペンを握っているかもしれません。

しかし、もしあなたが「こんなに練習しているのに、いっこうに字が変わらない」「自分の名前すら納得いくように書けない」と感じているなら、それは努力の不足ではなく、練習の「やり方」に原因があるかもしれません。

実は、ペン字には「やればやるほど遠回りになってしまう練習法」が存在します。せっかくの意欲を無駄にしないために、まずは初心者が陥りがちな非効率な習慣を見直し、着実に上達するための正しい道筋を確認していきましょう。

【1. 「書く量」だけを目標にしていませんか?】

初心者が最も陥りやすい罠は、「1日5ページ書く」「100回練習する」といった「量」のノルマ設定です。もちろん反復練習は大切ですが、何も考えずにただ手を動かすだけでは、現在のご自身の「癖」を強化する作業になってしまいます。

非効率な練習の代表格は、お手本を横に置きながらも、1文字書くたびにお手本を確認せず、自分の直感や記憶だけで書き進めてしまうことです。これでは、2回目、3回目と書くうちに、どんどんお手本から離れた自己流の字に戻ってしまいます。

100回適当に書くよりも、お手本をじっくり観察し、1回を丁寧に「再現」することに集中しましょう。1文字に対する「解像度」を上げ、どこがズレているのかを常に問い直すこと。このストイックな1回こそが、何ページ分もの無意識な練習を凌駕します。「なんとなく」を捨てることが、美文字への最短ルートです。

【2. 練習の「頻度」と集中力の関係】

「毎日欠かさず練習しなければならない」という強い思い込みも、時に上達の妨げになります。確かに継続は力なりですが、仕事で疲れ果てている時や、心が落ち着かない時に無理やりペンを握っても、乱れた線や焦った気持ちがそのまま字に表れてしまいます。

悪い状態で練習を続けると、脳はその「乱れた感覚」を正しいものとして記憶してしまい、かえって逆効果になることさえあります。着実に上達するためには、週に数回でもいいので「15分間だけ誰にも邪魔されず、極限まで集中する時間」を作ることの方がはるかに効果的です。

週末にまとめて長時間取り組むよりも、短時間でも「今日はこの『あ』の結びだけを完璧にする」といった、小さな質の追求を積み重ねる方が技術は定着しやすくなります。「練習しなければ」という義務感に縛られるのではなく、「今日はここをきれいに書いてみよう」という前向きな好奇心を大切にしてください。

【3. 練習帳の「なぞり書き」だけで終わらせない】

多くの練習帳にある「なぞり書き」は、いわば補助輪付きの自転車に乗っている状態です。なぞっている間はきれいに書けても、いざ白い紙に向かうと書けなくなるのは、字の「構造(骨組み)」を自分の頭で構築できていないからです。

なぞる際には、ただ線をなぞるのではなく、プロの視点で以下のようなポイントを分析しながら進めましょう。
線の方向: 右上がりなのか、それとも水平に近いのか。
線の形状: 迷いなく直線的に引くのか、しなやかに曲線を描くのか。
空間の広さ: 偏(へん)と旁(つくり)の距離、あるいは囲まれた空間の大きさは均等か。
これらを意識してなぞった直後に、必ず「自力で書く(模写)」ステップを挟んでください。補助輪を外して、お手本を見ながら白い紙に再現できて初めて、その字はあなたの技術として蓄積されます。

【4. 最短ルートは「ひらがな」の攻略にあり】

初心者のうちから、画数の多い難しい漢字や、格好いい四字熟語をきれいに書こうとするのは、あまり効率的ではありません。なぜなら、日本語の文章の約7割を占めているのは「ひらがな」だからです。

ひらがなは曲線が多く、ペンの運び(運筆)の基本がすべて凝縮されています。ひらがな46文字を正しく整えるだけで、文章全体の印象は劇的に、そして着実に改善されます。漢字の練習に時間を割く前に、まずはひらがなという「最も頻出するパーツ」を攻略する。この「急がば回れ」の精神こそが、結果的に最も早く「字が変わった」と周囲に気づかせる秘訣です。

【5. 姿勢とペンの持ち方という「物理的な土台」】

「字の形」にばかり気を取られ、座り方やペンの持ち方が疎かになっていないでしょうか。非効率な練習の背景には、実は「物理的な無理」が隠れていることが多いのです。
例えば、指先に力が入りすぎていると可動域が狭くなり、のびやかな線が書けません。また、机に対して体が斜めに向いていると、視覚的な重心が狂い、どうしても字が右上がりに歪んだり、バランスを崩したりしてしまいます。

道具の特性を正しく理解し、リラックスした姿勢で書く。この「書く前の準備」を整えるだけで、同じ練習時間でも得られる成果は数倍変わってきます。正しい姿勢は、正しい視点を生み、それが正しい筆跡へと繋がるのです。

【まとめ:着実な上達は「よーく見ること」と「修正」の繰り返し

ペン字の上達とは、一言で言えば「お手本と自分の字のズレを修正する作業」の連続です。
観察: お手本の線の方向や曲線を細かく見る。
理解: なぜこの字はきれいに見えるのか、構造を考える。そのための知識を得る。
再現: 集中して実際に書いてみる。
添削: お手本と見比べ、どこがズレたのかを客観的に確認する。

このサイクルを地道に回し、自分の癖を一つひとつ手放していくことが、最も着実に上達する方法です。もし一人での練習で「どこが悪いのか分からない」「何がズレているのか見えない」と壁にぶつかったときは、ぜひ専門家の指導や添削を活用してください。第三者の客観的な視点を取り入れることで、上達のブレーキが外れ、驚くほどスムーズに筆が運ぶようになるはずです。

美しく整った筆跡は、あなた自身の内面を映し出す鏡であり、一生の財産となります。正しい練習方法を知り、書く喜びを感じながら、理想の字を目指していきましょう。

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髙橋空晃
専門家

髙橋空晃(ペン字講師)

神戸うはらペン字教室

初心者から検定合格を目指す方まで、少人数制のレッスンでわかりやすく指導。単に字を整えるだけでなく、字を書く楽しみを知っていただき、日常生活に作品を取り入れた彩りある生活を提案しています。

髙橋空晃プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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