何とかして! 子供っぽい字を卒業したい! 大人っぽい「かな」の書き方4つのポイント
ペン字の練習を始めてしばらく経つと、「書けば書くほど、どう書けばいいのかわからなくなった」とペンが止まってしまう瞬間がありませんか?昨日まできれいに書けていたはずの字が、なぜか急にバランス悪く見えたり、一画目の位置に自信が持てなくなったり……。
実は、それはあなたが「字を丁寧に観察できるようになった証拠」であり、上達への一歩手前にいるサインです。決して才能がないわけではありません。
本コラムでは、練習中に迷子になってしまった初級者の方へ、「間違いではない正しい字」と「習い事として目指すべき美しい字」の違いを整理し、迷いなく練習を続けるためのヒントを解説します。
1. 「正しい字」と「美しい字」を分けて考えよう
初級者の方が迷走してしまう最大の理由は、「正解(間違いではない字)」と「美しさ(洗練された形)」を混同して、お手本と少しでも違うと「間違いだ」と自分を追い込んでしまうからです。
正しい字とは: 漢字の骨組みが正確で、誰が見てもその文字だと判別できる「間違いではない字」のこと。
美しい字とは: 線の太細、余白のバランス、リズムなどが整い、見る人に品格を感じさせる「洗練された字」のこと。
ペン字を学ぶ上では、まず「自分の字は、間違いではない正しい字だ」と安心した上で、「より美しく書くにはどうすればいいか」というステップアップを楽しむ余裕を持つことが大切です。
2. 「学校の字」とはバイバイ 「大人のきれいな字」へ
まず知っておいていただきたいのは、小学校で習った「教科書の字」だけが唯一の正解ではないということです。教科書の字は、子供たちが文字の構造を理解しやすくするためにデザインされた文字です。
一方で、私たちが目指すペン字は、「手書きとしての自然な美しさ」を大切にします。
例えば「しんにょう」を例に挙げましょう。教科書では階段のように一画ずつカクカクとはっきり角を作って書きますが、ペン字ではペン先を紙に滑らせ、ゆったりと波打つような曲線で書きます。
このように、「点と画がぶつ切りにならず、見えない線でつながっているような動き」を意識するだけで、字は一気に大人っぽく、洗練された「美しい字」へと近づきます。
3. 迷った時の「正しい形」の見極め方
「形がいろいろあってどれが良いかわからない」という時は、以下の指針を参考にしてください。国(文化庁)も、手書き文字の多様性を認めており、以下の常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)において、細かな形の違いは間違いではないとはっきり示しています。(注1)
その上で、初級者の方が「迷った時に選ぶべき、より美しく見える書き方」を具体的に提案します。
「道」や「進」などの「しんにょう」に迷ったら:
教科書のように「点」と「ろ」のような形をハッキリ分けて書くのは「正しい」書き方ですが、少し子供っぽい印象になりがちです。ペン字として美しく見せたいなら、「点から次の画へ、見えない糸でつながるように書き始め、最後はゆったりと右へ払う形」を選んでみてください。流れるような一体感が出ることで、字に大人の品格が宿ります。
「口」や「日」など、角の「線のくっつき」で迷ったら:
角をピタッと閉じるのは間違いではありませんが、ペン字では、「左下の角(縦棒と底辺のつなぎ目)を、あえてわずかに離す」ように書いてみてください。ほんの少し隙間を作るだけで、字の中に明るい「光」が入ったように見え、プロが書いたような余裕のある美しい字になります。
「木」や「小」の「はねる・止める」で迷ったら:
縦棒の下などは、はねても止めても「間違い」ではありません。迷った時は、「次に書く画がどこにあるか」を確認しましょう。次に書く画が左上にあるなら、自然とその方向へ向かってはねる動きになります。この「次に続く画への最短距離」を意識して書くことが、手書きとして理にかなった「美しい流れ」を生みます。
4. 自信を持って書くための「3つの黄金ルール」
細かな形を知った上で、それでも「字が整わない」と感じる時は、以下の3点を徹底してください。これさえ守れば、どのような形の字でも「正しく、かつ美しい」と認識されます。
「3つの黄金ルール」とは
① 文字の中心を「串刺し」にするイメージ
一画目の位置に迷ったら、「その字のど真ん中に、一本の垂直な串が通っている」と想像してください。例えば「中」や「羊」なら、最後の一画がその串にぴったり重なるように書きます。一画目をどこに置くかは、この「最後に串がど真ん中を通るため」のスタート地点だと考えれば、自然と正しい配置が決まります。
② 「白い空間」の面積を揃える
字の中にできる「すきま」の大きさを揃えましょう。「目」や「田」などの四角いスペースや、横線が並ぶ時の間隔です。この「線に囲まれた白い部分の広さを均等にする」ことこそが、整った字に見える最大の秘訣です。線の形に迷う暇があったら、この「空間の広さ」を揃えることに集中してください。
③ 「右上がり」を一定にする
すべての横線を「時計の針で1分くらい進んだ角度(約6度)」で、平行に右に上げてください。水平に書くと字は右下がりに見えてしまいます。「すべての横線を同じ角度で右に上げる」。この統一感があるだけで、字に躍動感と正しさが宿ります。
5. 迷いも上達のプロセス
ペン字を学び始めたばかりの頃は、どうしても「お手本と違う=間違い」と自分を責めてしまいがちです。しかし、上達していく過程で大切なのは、お手本をそっくりそのまま写すことではなく、「間違いではない正しい形」をベースにしながら、自分なりに「このバランスなら綺麗に見える」という感覚を養うことです。
もし、書いていて「何かが違う」と迷ったら、一度ペンを置いて、自分の書いた字を「誰かからの手紙」だと思って眺めてみてください。「丁寧に書かれているな」「読みやすいな」と感じるなら、それはもう立派な正解です。
ペン字の「正しさ」は、あなたという個性を消して機械のような字を書くことではありません。ルールという安心感のある土台の上で、あなたらしい伸びやかな線を表現すること。そのために、まずは「正解の幅は広いんだ」と自分に許可を出してあげてください。
結びに:字は「伝えるためのもの」
字を練習していると、どうしても「形」のことばかり気になってしまいます。しかし、文字の本来の役割は、あなたの気持ちを誰かに伝えることです。
「丁寧に書こう」という気持ちがこもった字は、少しくらい線の長さが違っていても、見る人に心地よく伝わります。
完璧な正解を求めて苦しくなるよりも、昨日の自分より少しだけ「空間が揃ったかな?」と変化を楽しむ。その積み重ねが、あなただけの「美しく正しい字」を作っていきます。
迷いも上達のプロセスです。楽しみながら、ゆっくりとペンを進めていきましょう。
(注1)「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」 抜粋



